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大学院生 鈴木海奈さんが、第53回結晶成長国内会議で講演奨励賞を受賞!

2025.02.12
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  • 学生の活躍
生命ナノシステム科学研究科 博士前期課程1年(物質システム科学専攻)の鈴木 海奈さんが、2024年11月18~20日に工学院大学新宿キャンパスで開催された「第53回結晶成長国内会議(JCCG-53)」において、「水和ゲル中で育成したタンパク質結晶のモルフォロジー変化」について発表し、講演奨励賞を受賞しました。
鈴木海奈さん
受賞者
生命ナノシステム科学研究科
博士前期課程1年(物質システム科学専攻)(橘研究室)
鈴木 海奈すずき みいな

指導教員
生命ナノシステム科学研究科
橘 勝 教授(物質システム科学)

受賞内容
日本結晶成長学会
第53回結晶成長国内会議
講演奨励賞

発表題目
水和ゲル中で育成したタンパク質結晶のモルフォロジー変化
今回の発表内容について鈴木さんに解説していただきました。
タンパク質は生体内でさまざまな役割を担っています。その役割を解明し、創薬研究や生命現象の解明につなげるため、タンパク質の立体構造を解明することが重要です。タンパク質の立体構造の解明には高品質なタンパク質結晶*1を作製し、X線構造解析*2をする必要があります。高品質なタンパク質結晶の作製のため、さまざまな環境で結晶を育成する研究が世界中で行われています。そのうちの一つが寒天やゼラチンといった水和ゲル*3です。私たちの研究室では、水和ゲル中で作製したタンパク質結晶は、ゲルを取り込みながら成長することで強度が劇的に向上する、という物性をもつことを明らかにしました[1] 。しかしながら、水和ゲル中におけるタンパク質結晶の詳細な成長メカニズムは分かっていません。タンパク質結晶の水和ゲル中での成長メカニズムを理解することは、上述のような新奇な物性の創出 だけでなく、物性制御の観点からも大変興味深いものです。本研究では、成長メカニズムの解明に向けて、さまざまなゲル濃度中でタンパク質結晶の作製を行いました。発表では水和ゲルの濃度変化に伴い、タンパク質結晶の形態が変化したことを報告しました。タンパク質結晶は一般的に角や面をもつ多面体の形状をしています。それに対し、水和ゲル中で結晶を作製すると、ゲル濃度が高くなるにつれて面の凹みや角の丸みが生じ、さらには結晶が球状化しました。また、X線を用いた測定により、球状結晶は単結晶であり、角や面をもつ一般的な形状の結晶と同じ分子配列をもつことが分かりました。今後は、球状結晶の成長メカニズムの解明や、得られた結晶を用いた品質の評価を目指します 。


鈴木 海奈さんのコメント
結晶成長の専門家が集まる学会で、このような賞を受賞することができ、大変嬉しく思います。今回の発表は、学部1年生で参加した理数マスター育成プログラムから、これまで継続してきた研究の成果でした。ここまで研究を続け、学会で賞を受賞することができたのは橘勝先生、鈴木凌先生の日々のご指導や研究室メンバーの支えのおかげです。今後もさらなる研究の発展を目指して、これまでより一層タンパク質結晶に向き合っていきたいと思います。

指導教員 橘 勝教授のコメント
講演奨励賞、おめでとうございます。本賞は、学生に限らず若手研究者も含む多くの講演者の中から選出された賞であり、修士課程1年生での受賞は大変素晴らしいことです。鈴木さんは理数マスター育成プログラムで学部1年生から私の研究室で研究活動を実施しており、実験の質も非常に高く、他大学や研究所の多くの先生方からも高い評価を受けていました。これを機に学術論文の執筆などさらなる飛躍を期待しています。

用語説明
*1 タンパク質結晶:タンパク質分子が周期的に規則正しく配列した結晶のこと。
*2 X線構造解析:タンパク質の構造を解明するために一般的に用いられている手法の一つ。タンパク質結晶によるX線回折の強度の解析により、タンパク質分子の3次元構造を知ることができる。
*3 水和ゲル:ゲルとは溶媒の中に高分子の網目が形成され、固体状態となったもの。多様なゲルの中でも水和ゲルは溶媒として水を含むもののことをいう。寒天の主成分であるアガロースやお菓子作りに使われるゼラチンがよく知られる。

参考論文
[1] Ryo Suzuki et al., Unique Mechanical Properties of Gel-Incorporating Protein Crystals. ACS Applied Bio Materials, 2023, 6, 965-972.
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsabm.2c01033.
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