大学院生 久光和希さんが、第8回日本ワンヘルスサイエンス学会年次学術集会にて最優秀賞を受賞!
2024.10.15
- TOPICS
- 学生の活躍
光学観察に適したスフェロイドの開発に成功
生命ナノシステム科学研究科 博士課程前期2年(生命環境システム科学専攻) 久光和希さんが、2024年9月14日に佐賀大学鍋島キャンパス臨床大講堂で開催された第8回日本ワンヘルスサイエンス学会年次学術集会において、「画像情報を用いた毒性評価を可能とする光透過性スフェロイドの開発」について発表し、最優秀賞を受賞しました。
受賞者
生命ナノシステム科学研究科 博士前期課程2年
(生命環境システム科学専攻)
生命ナノシステム科学研究科
小島 伸彦 教授(再生生物学)
受賞内容
第8回 日本ワンヘルスサイエンス学会年次学術集会
最優秀賞
発表題目
画像情報を用いた毒性評価を可能とする光透過性スフェロイドの開発
生命ナノシステム科学研究科 博士前期課程2年
(生命環境システム科学専攻)
久光 和希 さん
指導教員生命ナノシステム科学研究科
小島 伸彦 教授(再生生物学)
受賞内容
第8回 日本ワンヘルスサイエンス学会年次学術集会
最優秀賞
発表題目
画像情報を用いた毒性評価を可能とする光透過性スフェロイドの開発
今回の発表内容について久光さんに解説していただきました。
現在、創薬プロセス*1における動物実験は変革期にあります。種差に起因する薬剤評価の信憑性の低さや倫理的観点から、動物実験からヒト細胞を用いた試験に代替する動きが世界中で高まっています。実際に、新薬の開発において動物実験を義務とせず、ヒト細胞アッセイなどの適切な評価系の利用を認めるFDA近代化法2.0*2が、米国で2022年に成立しました。私たちはこの世界の動向に伴い、三次元培養であるスフェロイド*3を用いた毒性試験系の開発を進めてきました。スフェロイドは二次元培養よりも生体内の環境に近く、動物実験の代替法として注目されています。光学観察の像は脂質やタンパク質など、光が散乱することで得られます。二次元培養細胞は単層であるため、光が十分に透過し、画像解析を用いた毒性評価が可能です。一方、スフェロイドは細胞が多層構造をとるため、光の多くが散乱します。その結果、スフェロイドの画像は暗くなり、得られる画像情報が乏しいという課題があります。そこで本研究では、スフェロイドにビーズを混ぜることで、光の散乱を抑えた光透過性の高いスフェロイドを作製することを目的としました。
現在、創薬プロセス*1における動物実験は変革期にあります。種差に起因する薬剤評価の信憑性の低さや倫理的観点から、動物実験からヒト細胞を用いた試験に代替する動きが世界中で高まっています。実際に、新薬の開発において動物実験を義務とせず、ヒト細胞アッセイなどの適切な評価系の利用を認めるFDA近代化法2.0*2が、米国で2022年に成立しました。私たちはこの世界の動向に伴い、三次元培養であるスフェロイド*3を用いた毒性試験系の開発を進めてきました。スフェロイドは二次元培養よりも生体内の環境に近く、動物実験の代替法として注目されています。光学観察の像は脂質やタンパク質など、光が散乱することで得られます。二次元培養細胞は単層であるため、光が十分に透過し、画像解析を用いた毒性評価が可能です。一方、スフェロイドは細胞が多層構造をとるため、光の多くが散乱します。その結果、スフェロイドの画像は暗くなり、得られる画像情報が乏しいという課題があります。そこで本研究では、スフェロイドにビーズを混ぜることで、光の散乱を抑えた光透過性の高いスフェロイドを作製することを目的としました。
久光 和希さんのコメント
日本ワンヘルスサイエンス学会は、ヒト・動物・環境の健康を統合的に考え、課題に対する解決策を幅広い分野の研究者が議論する学術集会です。6月にシアトルで開催された組織工学・再生医療国際学会(TERMIS)でポスター発表を経験した際に、さまざまなバックグラウンドをもつ参加者に自身の研究を理解してもらう難しさと楽しさを知りました。そこで、今回の発表はいかにして自分の研究内容を伝えるかを考え、ショートプレゼンやポスターの準備に取り組みました。その結果、参加者の先生方や他の学生さんたちから多くの質問を得ることができ、研究内容をしっかりと伝えることができたと実感しました。また、今回初めて佐賀大学を訪れたのですが、会場スタッフの方々から学会のロゴの入ったお菓子を勧めていただくなど、非常に温かくもてなしていただいたことが印象的でした。懇親会の食事や地元のお酒の「鍋島」も美味しく、佐賀の食文化の素晴らしさを感じることもできました。
最後に、このような栄誉ある賞を賜ることができたのは、小島先生や研究室のメンバーの手厚いサポートのおかげであると強く感じております。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
日本ワンヘルスサイエンス学会は、ヒト・動物・環境の健康を統合的に考え、課題に対する解決策を幅広い分野の研究者が議論する学術集会です。6月にシアトルで開催された組織工学・再生医療国際学会(TERMIS)でポスター発表を経験した際に、さまざまなバックグラウンドをもつ参加者に自身の研究を理解してもらう難しさと楽しさを知りました。そこで、今回の発表はいかにして自分の研究内容を伝えるかを考え、ショートプレゼンやポスターの準備に取り組みました。その結果、参加者の先生方や他の学生さんたちから多くの質問を得ることができ、研究内容をしっかりと伝えることができたと実感しました。また、今回初めて佐賀大学を訪れたのですが、会場スタッフの方々から学会のロゴの入ったお菓子を勧めていただくなど、非常に温かくもてなしていただいたことが印象的でした。懇親会の食事や地元のお酒の「鍋島」も美味しく、佐賀の食文化の素晴らしさを感じることもできました。
最後に、このような栄誉ある賞を賜ることができたのは、小島先生や研究室のメンバーの手厚いサポートのおかげであると強く感じております。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
指導教員 小島 伸彦教授のコメント
現在、組織を透明化して、光学顕微鏡による観察を改善する方法が注目されていますが、既存の技術はすべて組織や細胞が死んだ状態での透明化です。久光さんが開発に取り組んでいる技術は、スフェロイドと呼ばれるボール状の組織の透明度を、細胞を生かしたまま高めるものです。培養中に生じるイベントを経時的に観察することを可能とするため、ヒト細胞を用いた創薬プロセスにおいて、重要な役割を果たすことが期待されています。久光さんは大学院から横浜市立大学に移ってきてくれました。目的意識が強く、自主的にどんどん研究を進めてくれています。今回の第8回ワンヘルスサイエンス学会年次学術集会にも、自ら参加したいと申し出てくれ、旅費は久光さんが学内RA制度で得た報酬を充てました。学会会場では、休憩時間もポスターの前に立ち、説明を行っていました。また、シンポジウムや特別講演などで挙手をして鋭い質問を連発し、その積極的な姿勢に会場の先生方も舌を巻いていました。本研究テーマについて、久光さんを中心にして台湾国立虎尾科技大学の先生方との共同研究も進んでおり、ますますの活躍に期待しています。
現在、組織を透明化して、光学顕微鏡による観察を改善する方法が注目されていますが、既存の技術はすべて組織や細胞が死んだ状態での透明化です。久光さんが開発に取り組んでいる技術は、スフェロイドと呼ばれるボール状の組織の透明度を、細胞を生かしたまま高めるものです。培養中に生じるイベントを経時的に観察することを可能とするため、ヒト細胞を用いた創薬プロセスにおいて、重要な役割を果たすことが期待されています。久光さんは大学院から横浜市立大学に移ってきてくれました。目的意識が強く、自主的にどんどん研究を進めてくれています。今回の第8回ワンヘルスサイエンス学会年次学術集会にも、自ら参加したいと申し出てくれ、旅費は久光さんが学内RA制度で得た報酬を充てました。学会会場では、休憩時間もポスターの前に立ち、説明を行っていました。また、シンポジウムや特別講演などで挙手をして鋭い質問を連発し、その積極的な姿勢に会場の先生方も舌を巻いていました。本研究テーマについて、久光さんを中心にして台湾国立虎尾科技大学の先生方との共同研究も進んでおり、ますますの活躍に期待しています。
用語説明
*1 創薬プロセス :基礎研究、被臨床試験、臨床試験などの創薬における承認プロセスをまとめて呼称したもの。
*2 FDA近代化法2.0:米国の食品医薬局によって定められた法律、新薬の承認において動物実験を必須とせず、代替的な試験方法の利用を促進する。
*3 スフェロイド:細胞が三次元的に集まって形成される球状の細胞塊。
*1 創薬プロセス :基礎研究、被臨床試験、臨床試験などの創薬における承認プロセスをまとめて呼称したもの。
*2 FDA近代化法2.0:米国の食品医薬局によって定められた法律、新薬の承認において動物実験を必須とせず、代替的な試験方法の利用を促進する。
*3 スフェロイド:細胞が三次元的に集まって形成される球状の細胞塊。