生命ナノシステム科学研究科生命ナノシステム科学研究科
search

生命ナノシステム科学研究科の髙田 崚輔さんと松本 大輝さん(木原生物学研究所)、日本育種学会 第142回講演会にて優秀発表賞を受賞!

2022.10.24
  • TOPICS
  • 学生の活躍

木原生物学研究所の強みを活かした研究で、大学院生2名が同時受賞!

生命ナノシステム科学研究科(木原生物学研究所所属) 修士課程1年の髙田崚輔さんと、松本大輝さんが、2022年9月23日(祝・金)~25日(日)に開催された、日本育種学会 第142回講演会において、優秀発表賞を受賞しました。
(左)髙田崚輔さん、(右)松本大輝さん

イネの地上部をすべて生み出す組織、シュート頂メリステムの細胞の成長を決定する「表層微小管」可視化技術を開発!

受賞者
生命ナノシステム科学研究科(木原生物学研究所所属) 修士課程1年 髙田崚輔さん

論文題目
イネのシュート頂メリステムにおける微小管のイメージング系の確立
髙田 崚輔1 , 井藤 純1 , 辻 寛之1,2(1横浜市立大・木原生物学研究所, 2名古屋大学・生物機能開発利用研究センター)

論文の内容

—高田さんに研究論文の内容を説明していただきました。
植物の地上部は全てシュート頂メリステム(SAM)という組織に由来しています。植物がSAMから葉や花を形成する際、「表層微小管」という細胞伸長方向を制御する繊維状構造が重要な役割を果たすことが知られています。しかし、人類にとって主要な作物であるイネでは、SAMの表層微小管を観察する方法は開発されていませんでした。本研究では、膨大な条件検討を通して、世界初となるイネSAMにおける表層微小管のイメージング系を確立することに成功しました。今回確立した方法を用いて、イネSAMにおいて表層微小管がどのように配向しているのかを詳細に明らかにし、さらに花芽形成の開始に伴い表層微小管の配向が変化することを発見しました。今回の研究成果は、イネの形態形成の理解に貢献すると考えられます。

髙田崚輔さんのコメント
この度は栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。イメージング系の条件検討には試行錯誤の連続で苦慮しましたが、最後には最適な方法を開発できたとともに、学会でも評価いただけたこと、大変嬉しく思います。本研究を進めるにあたり、多くのご指導ご鞭撻を賜りました辻先生・井藤さんをはじめとする研究室の皆様に心より感謝申し上げます。特に辻先生には、本学の理数マスター育成プログラムを通して学部1年生の頃から実験操作やプレゼンテーション技術を手厚くご指導いただきました。今回の受賞を励みに、今後もユニークで面白い研究活動ができるよう精進してまいります。

オオムギの穂がつける種子数を決定する現象「abortion」が起きる過程を細胞生物学によって解明!

受賞者
生命ナノシステム科学研究科(木原生物学研究所所属) 修士課程1年 松本大輝さん

論文題目
オオムギ花序メリステムの細胞死過程における細胞内構造変化
松本 大輝1, 井藤 純1, 新井 駿一1, 野村 有子1, 杉村 みどり1, 佐藤 奈緒1, 関 緑1, 若崎 眞由美2, 佐藤 繭子2, 武田(神谷) 紀子2, 宇野 何岸4, 5, 佐藤 良勝4, 6, 最相 大輔7, 豊岡 公徳2, 辻 寛之1, 3(1横浜市大・木原生物学研究所, 2理研・環境資源科学研究センター, 3名古屋大学 生物機能開発利用研究センター, 4名古屋大学理学研究科, 5Department of NanoBiophotonics, Max Planck Institute for Multidisciplinary Sciences (MPI-NAT), 6名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM), 7岡山大学資源植物科学研究所)

論文の内容
—松本さんに研究論文の内容を説明していただきました。

オオムギの一つの穂に付く種子の数は、実は明確な限界が存在します。オオムギの一つの穂に付く種子の数を決める要因の一つとして、abortionと呼ばれる現象があります。これは、花を形成する組織である花序メリステムが持つ幹細胞機能が減少、消失していく現象であり、これにより新たな花を形成することができなくなります。しかし、オオムギにおいてabortionの過程でなぜ幹細胞機能が減少していくのかについてはよくわかっていません。 幹細胞機能の減少には様々な要因が考えられますが、その一つとして細胞内構造の変化が考えられました。そこで本究では、幹細胞機能の減少がなぜ起きるのか調べるために、花序メリステムの細胞について、未分化性の喪失の指標である液胞化とタンパク質合成に重要である核小体の構造変化を調べました。その結果、液胞化と核小体の縮小は幹細胞機能が停止するよりも前に、同時期に並行して起きることが分かりました。この結果はオオムギ花序メリステムのabortionへの理解につながると考えられます。

松本大輝さんのコメント
この度は優秀賞をいただけて大変うれしく思います。学会発表にあたり辻先生、井藤さんには実験の進め方、手法、ポスター制作のアドバイス等で常に真摯にご指導、ご鞭撻いただきました。また、共同研究者の方をはじめ多くの方々にも様々な面でお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

指導教員 辻寛之准教授のコメント

髙田くん、松本くん、この度の受賞おめでとうございます!またご協力いただいた共同研究者の皆さまにもお礼申し上げます。二人は本当にたくさんの条件検討や観察をコツコツと積み重ねることによって、世界中で自分たちだけが実現できるユニークな技術開発と研究を行うことができました。自分たちだけの特別な技術と発見を組み合わせることで、ますます他の誰にも到達できない研究へと発展できると思います。今後も大学院における研究をさらに発展させていきましょう!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加