教員からのメッセージ
花咲かホルモン・フロリゲンの研究が切り開く未来 - 辻 寛之 准教授
研究生活の醍醐味は、何かを発見する喜び
● ミトコンドリアゲノムに生物の不思議を発見
私が花芽をつくる植物ホルモンに関して世界的な発見に関わることができたのは、以前に在籍していた奈良先端大の研究室でのことでした。このホルモンは「フロリゲン」といい、存在自体は1937年に予言されてはいたものの、その正体は長い間謎に包まれていました。しかし一連の発見により、フロリゲンが「花芽をつくる」ということを分子のレベルで解明しました。研究を主導した一人として大きな喜びを感じたことを覚えています(本成果は世界最高峰の科学雑誌・ネイチャーで発表され、高等学校の教科書にも採用されています)。
フロリゲンはわかりやすい表現で「花咲かホルモン」と呼ばれていますが、最新の研究から花だけでなく、ジャガイモもつくることがわかってきました。この性質をコントロールする事で、農業生産物の収穫時期を人為的にデザインしたりする事が可能であると考えられ、世界中の農業や食糧の問題に貢献できると期待されています。
そもそも大学受験の時点から生物学を取っていなかった私が、このような研究に関わるようになったきっかけは、ある時ミトコンドリアのゲノムDNAに関する授業があり、その大胆で精緻な構造の多様性と制御に興味を持ったことです。まさに生物が美しく多様な在りようを表現するため、密かに行ってきた分子の妙技であるという感動を覚えました。それから本格的に生物学の道を歩み、やがて植物分子遺伝学や分子発生学の方向へと自分自身の研究の方向性が決まっていきました。その結果があの楽しい発見の過程につながったのだと思います。
そもそも大学受験の時点から生物学を取っていなかった私が、このような研究に関わるようになったきっかけは、ある時ミトコンドリアのゲノムDNAに関する授業があり、その大胆で精緻な構造の多様性と制御に興味を持ったことです。まさに生物が美しく多様な在りようを表現するため、密かに行ってきた分子の妙技であるという感動を覚えました。それから本格的に生物学の道を歩み、やがて植物分子遺伝学や分子発生学の方向へと自分自身の研究の方向性が決まっていきました。その結果があの楽しい発見の過程につながったのだと思います。
●憧れの木原生物学研究所へ
大学の若手教員には任期があり、深く研究や教育に打ち込んでいても、やがて進路の選択を迫られる時期が来ます。フロリゲンの研究にいそしんでいた私にも、その時期がやってきました。次の研究の場をどこにするか? これは自分にとっても大きな問題です。そんなときに常に頭にあったのが、横浜市立大学の木原生物学研究所でした。研究所を設立した木原均先生はコムギゲノムの研究において世界中の生物学に関わる研究者から尊敬される存在です。研究所に在籍されている先生方も一流で、名古屋大学や奈良先端大で一緒に研究をしていた先生もおり、自分にとっては憧れの存在でもありました。
2015年、幸いなことに木原生物学研究所でフロリゲンの研究をさらに発展できることになりました。現在准教授として学生、博士研究員、技術補佐員とともに、フロリゲンの分子機能についてより深い研究を続けています。現在進めている極めて興味深い研究の一つが、ゲノム(Keyword-1)の機能に関わるフロリゲンの効果です。ゲノムの概念はこの研究所を設立した木原先生が世界に先駆けて提唱したものであり、まさにうってつけの研究です。
植物が花芽をつくる部分は茎の先端にあります。葉で合成されたフロリゲンが茎に移動し、茎の先端に到達したときに、先端にある細胞群は中身の性格が変わります。その正体を知るという事が研究のキークエスチョンになるのですが、これを調べていくうちに、フロリゲンがゲノムの機能をかなり大規模に書き換えていることを発見しました。それまでも研究の過程でゲノムのことは調べてはいましたが、やはり木原生物学研究所のゲノム研究の実績や設備、人材がこうした発見を可能にしてくれたのだと思います。
フロリゲンがこれまでの植物の適応、進化、多様性にどう影響し、これからの気候変動に対してどう生かせるか、これも当面の大きなテーマです。これらの解明によって、期待されている生命科学の本質的な理解への貢献なども近づいていくはずです。
大学の若手教員には任期があり、深く研究や教育に打ち込んでいても、やがて進路の選択を迫られる時期が来ます。フロリゲンの研究にいそしんでいた私にも、その時期がやってきました。次の研究の場をどこにするか? これは自分にとっても大きな問題です。そんなときに常に頭にあったのが、横浜市立大学の木原生物学研究所でした。研究所を設立した木原均先生はコムギゲノムの研究において世界中の生物学に関わる研究者から尊敬される存在です。研究所に在籍されている先生方も一流で、名古屋大学や奈良先端大で一緒に研究をしていた先生もおり、自分にとっては憧れの存在でもありました。
2015年、幸いなことに木原生物学研究所でフロリゲンの研究をさらに発展できることになりました。現在准教授として学生、博士研究員、技術補佐員とともに、フロリゲンの分子機能についてより深い研究を続けています。現在進めている極めて興味深い研究の一つが、ゲノム(Keyword-1)の機能に関わるフロリゲンの効果です。ゲノムの概念はこの研究所を設立した木原先生が世界に先駆けて提唱したものであり、まさにうってつけの研究です。
植物が花芽をつくる部分は茎の先端にあります。葉で合成されたフロリゲンが茎に移動し、茎の先端に到達したときに、先端にある細胞群は中身の性格が変わります。その正体を知るという事が研究のキークエスチョンになるのですが、これを調べていくうちに、フロリゲンがゲノムの機能をかなり大規模に書き換えていることを発見しました。それまでも研究の過程でゲノムのことは調べてはいましたが、やはり木原生物学研究所のゲノム研究の実績や設備、人材がこうした発見を可能にしてくれたのだと思います。
フロリゲンがこれまでの植物の適応、進化、多様性にどう影響し、これからの気候変動に対してどう生かせるか、これも当面の大きなテーマです。これらの解明によって、期待されている生命科学の本質的な理解への貢献なども近づいていくはずです。
Keyword-1「ゲノム」
古典遺伝学では、「ある生物をその生物たらしめるのに必須な遺伝情報」として定義される。木原生物学研究所を設立した木原均博士が、コムギの染色体と遺伝学の研究を通してその概念を確立した。遺伝情報=DNAの塩基配列であり、現在ではヒトをはじめ多くの生物のゲノムが解明されている。木原生物学研究所は、世界の最重要作物であり、倍数性進化の重要な研究材料でもあるコムギのゲノム解析などを行っており、世界最先端の研究成果を挙げるための研究所である。