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血液・リウマチ・感染症内科

全身性強皮症の治療法について

疾患情報

全身性強皮症とは全身性自己免疫疾患のひとつで、皮膚や内臓が過剰に線維化を起こして硬くなる原因不明の病気です。末梢循環障害といわれる手足の血行障害も伴います。また、多くの症例で自己抗体(自分の体の成分に対する抗体)が検出され、自己に対する免疫が病態に関わっていると考えられています。国内の患者数は推定で約3万人、発症は30~60歳代に多く、男女比は1:10で女性に多い病気です。皮膚硬化が手指にとどまる限局皮膚硬化型と手指を超えて皮膚硬化が広がるびまん皮膚硬化型があります。全身性強皮症は国で定められた指定難病であり、重症度によって医療費助成の対象となります。

症状

皮膚の症状としては、皮膚硬化、レイノー現象(寒冷などの刺激によって手指が白色、紫色、赤色の順に色調が変わる症状)、皮膚潰瘍などがみられます。肺に線維化が生じると間質性肺炎や肺線維症となり、かわいた咳や動いた時の息切れがみられます。肺高血圧症を合併すると動作での息切れや疲労感が生じ、進行すると下肢などのむくみがみられます。腸管に線維化が起きると、逆流性食道炎による胸やけや腸管運動低下による慢性的な便秘や下痢が起こります。その他、関節痛や腎障害がみられることもあります。

検査

血液検査では多くの場合この病気に特徴的な自己抗体(抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体など)が検出されます。検出される自己抗体の種類によって病変の拡がりや合併症の頻度が異なるため、診断だけでなく治療方針の決定にも役立ちます。キャピラロスコピーとよばれる特殊な顕微鏡を用いて爪の甘皮の毛細血管の異常を観察するほか、皮膚の組織を調べるため皮膚生検を行う場合があります。内臓病変の有無を評価するためにレントゲン検査やCT検査、呼吸機能検査、心臓超音波検査が定期的に行われ、必要に応じて心臓カテーテル検査、消化管内視鏡検査なども行われます。

診断

特徴的な皮膚などの症状や自己抗体などの検査所見、画像検査などを医師が総合的に評価して診断します。診断の際には、欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で2013年に発表した全身性強皮症の分類基準などが参考にされます。

治療法

現時点ではこの病気をコントロールできる治療法は確立されていません。四肢の血流障害、間質性肺炎、肺高血圧症、逆流性食道炎など、病気によって起こる症状や合併症に対して、皮膚科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科などの各専門医と連携しながら、対症療法を行います。四肢の血流障害に対しては血管拡張薬などの血流を改善する薬剤、間質性肺炎に対しては、免疫抑制薬や抗線維化薬、肺高血圧症に対しては選択的肺血管拡張薬、逆流性食道炎に対しては制酸剤などが使用されます。最近、リツキシマブが皮膚硬化や間質性肺炎の病気の進行を抑える効果があることが国内の医師主導治験で示され、保険診療として認められるようになりました。当科では、既存の治療で改善しない皮膚潰瘍に対して、自己の骨髄細胞を用いて血管を再生させる治療を先進医療として行っています。生活上では四肢の血流が悪くならないように手足を保温し、喫煙は避けましょう。

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