Tel.045-787-2800(代表) お問い合わせ

診療科・部門案内

血液・リウマチ・感染症内科

全身性エリテマトーデスについて

疾患情報

全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus;SLE)は、免疫系が自己の正常な細胞や組織を攻撃することによって起こる全身性自己免疫疾患の一つです。
SLEでは、皮膚、筋骨格系、腎臓、中枢神経系などに炎症を起こし、全身に多彩な症状と臓器障害を引き起こしますが、出現する症状やその重症度は個人によって異なります。
発症は20~40歳代に多く、男女比は1:9で女性がかかりやすい病気です。
SLEの特定医療受給者証を持っている患者さんは2018年時点で約61,000人です。発症する原因は今のところ分かっていませんが、自己免疫疾患になりやすい遺伝的素因を持つ人に何らかの環境因子が加わって発症するのではないかと言われています。

症状

SLEの症状は下に記すように多岐にわたりますが個人差があり、どの症状が出現するか、またそれらの症状がどの程度重症になるかは人によって異なります。まずはご相談ください。

全身症状

発熱、全身倦怠感、リンパ節の腫れなど。

皮膚症状

赤い皮疹(特に鼻をまたいで両方の頬に出現する蝶形の皮疹は有名です)、日光に対する過敏症、口腔内潰瘍、爪の変化、脱毛など。

関節炎

関節の痛みや腫れ、手のこわばりなど。

腎障害

蛋白尿や血尿、体のむくみ、進行すると腎不全(透析が必要な状態)につながります。

精神・神経症状

頭痛、けいれん、意識障害、認知機能の低下、幻覚・妄想、末梢神経の障害など。

胸部症状

息苦しさ、胸痛など。

腹部症状

腹痛、腹部膨満感、頻尿など。

検査

血液検査、尿検査、画像検査に加えて、必要に応じて組織を調べる生検などが行われます。

血液検査

抗核抗体がほとんどの患者さんで陽性になるほか、各種の自己抗体(自分の体の成分に対する抗体;抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体、抗SS-A抗体など)が検出されます。
免疫に関連する物質である補体(C3、C4、CH50)の低下もよくみられます。SLEでは血中の白血球(特にリンパ球)、血小板、赤血球の数が減少します。
そのほか、栄養、腎機能、肝障害などに関する一般的な評価を行います。

尿検査

尿所見では腎障害を調べることができます。腎臓に炎症が生じると、尿蛋白や尿潜血がみられ、細胞性円柱も出現します。
精神・神経症状がある場合には髄液検査を行います。細胞数の増加やIgG(抗体)、IL-6(炎症の物質)の増加がみられます。

画像検査

画像検査としては、胸部症状や腹部症状があれば、レントゲンやCT検査によって病変がないかどうか調べます。
精神・神経症状があれば、頭部CT・MRI検査が行われ、さらにSPECT検査や脳波検査が追加されることもあります。
皮膚、腎臓などの臓器障害の原因を調べ、重症度を判断するために、これらの組織の状態を調べるための生検が行われます。

診断

症状や検査結果を踏まえて総合的に医師が判断し診断します。
欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で2019年に発表したSLEの分類基準など様々な分類基準が発表されており、診断の際にはこれらが参考にされます。

治療法

SLEの治療の目標は臓器障害をできるだけ予防し、健康に関する生活の質を保つことです。
そのためには、早期の診断と適切な治療により病気の勢いをきちんとコントロールしていくことが大切です。
薬物治療としては、ステロイドと抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン)が基本になります。ステロイドの量は重症度によって変わります。
重要な臓器に病変がみられる場合やステロイドが減量しにくい状況がある場合には、各種の免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、アザチオプリン、タクロリムスなど)を併用します。
最近では、ベリムマブやリツキシマブといった生物学的製剤とよばれる薬剤も使用されるようになりました。

薬物療法だけでなく生活様式を見直すことも重要です。
紫外線は病気の勢いを増す原因になりますので、外出時には過度な直射日光を浴びないように対策しましょう。
また、うがい、手洗い、マスクなどによる感染対策やストレスや疲れをためないような規則正しい生活を心がけましょう。
治療方針は個々の患者さんの病状や重症度を踏まえて患者さんと相談しながら決めていきます。定期的にきちんと受診して医師と相談しながら治療を継続し、病気と上手に付き合っていくことが重要です。

関連ページ