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新型コロナウイルス変異株に対するワクチンの有効性を評価する研究の開始

2021.04.09
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新型コロナウイルス変異株に対するワクチンの有効性を評価する研究の開始

〜国内ワクチン接種者を対象に、中和抗体を測定する「hiVNTシステム」を用いた新型コロナウイルスのコロナ変異株パネルを活用〜

横浜市立大学 学術院医学群 臨床統計学 山中 竹春 教授、同微生物学 梁 明秀 教授、宮川 敬 准教授、附属病院 感染制御部 加藤 英明 部長らの研究チームは、現在接種が進められている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンが、急増する変異株に対しても有効であるかどうかを、中和抗体の側面から評価する研究を開始しました。1)

本研究では、国内でワクチン接種を受けた方の協力を得て血液を採取し、開発した高感度試薬を用いた抗体測定を行います。同時に「hiVNTシステム2)」を用いた変異株パネルにより、感染防御に関わる「中和抗体」を測定します。hiVNTシステムは国内で感染拡大が危惧されるSARS-CoV-2変異株に対する中和抗体を、①高感度で、②3時間以内に、③複数株について一括して調べることができる、という特徴を有します。


 
 研究のポイント

・ 開発した抗体試薬と「hiVNTシステム」を用いた変異株パネルにより、ワクチン接種後の抗体を測定


・長時間(通常72時間から1週間)を要する中和抗体の測定が、新たに開発した変異株パネルにより、3時間で測定可能となり、多検体の高速な測定が可能に

・ワクチン接種により体内で作られる抗体ならびに中和抗体が複数の変異株に対応しているかどうかの日本人データを提供

研究の背景と意義

SARS-CoV-2によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はパンデミック(世界的流行)となり、我が国でも広範囲に及ぶ外出自粛や休業を余儀なくされています。その打開策として、全国的にワクチン接種が進められています。ワクチン接種者には、接種後に感染を防ぐ抗体(中和抗体)が産生されることにより、有効性を発揮することが期待されています。

しかし、最近になり、変異株の種類が多様化し、その感染者数が急激に拡大傾向にあります。現在接種が進められているワクチンは初期の武漢株に対する有効性は確立されていますが、その他の変異株に対して、特に日本人における有効性についてデータがありません。

また、変異株の種類のさらなる増加も予想されるため、今後、新たなコロナ変異株が登場した際に、変異株に対する中和抗体保有の状況を集団レベルですみやかに調べ、既存のワクチンの有効性を評価できる手法が求められます。個人レベルにおいては様々な変異株に対して中和抗体を有するのか、一部の変異株に対してのみなのか、すなわち、様々な変異株に対する有効性の一括評価(いわゆるパネル検査)への需要が高まることが予想されます。

このように、複数の変異株をとりそろえて(パネル化)、それらに対する中和抗体を一括して短時間で評価し、集団レベルならびに個人レベルにおける免疫能の獲得の詳細を明らかにする新型コロナウイルスのコロナ変異株パネルは、ワクチン普及後の社会活動を回復させる後押しになると期待されます。

横浜市立大学では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業(研究代表者:山中 竹春 教授)の支援のもと、令和2年8月より、COVID-19に感染し回復された方々を対象に抗体測定の意義を明らかにする日本初の大規模な研究「新型コロナウイルス感染症回復者専用抗体検査PROJECT (https://covid19-kaifuku.jp/)」を開始しました。令和2年12月には、同事業で開発した試薬を用いて、回復者のほとんどが6か月にわたって抗体ならびに中和抗体を維持するという結果を公表し、全国的に注目されました。開発試薬は現在、変異株への対応を進めており、「hiVNTシステム」を用いた変異株パネルの測定結果を用いて、開発試薬の測定結果に対して臨床的な意味づけを行い、社会実装へとつなげていきます。

1) 本研究は、下記の国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構(AMED)令和 2 年度ウイルス等感染症対策技術開発事業の⽀援によるものです。
事業名:⽇本医療研究開発機構(AMED)令和 2 年度ウイルス等感染症対策技術開発事業
課題名:「新型コロナウイルス抗体検出を⽬的としたハイスループットな全⾃動免疫測定⽅法の開発及び同測定⽅法の社会実装に向けた研究」

2)  hiVNT(HiBiT-tagged Virus-like particle Neutralizing antibody Test)システム
令和 2 年 7 ⽉に本学研究チームが開発した、SARS-CoV-2 に対する中和抗体を簡便かつ迅速に測定できる⼿法。感染性を有する⽣ウイルスやゲノムを含んだ擬似ウイルスを使⽤しないため、危険な操作が不要で、3時間以内に中和抗体の量を測定することが可能(J Mol Cell Biol. 2021 Mar 10;12(12):987-990 に掲載)。本研究は、国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する⾰新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に資する研究(研究代表者:国⽴感染症研究所 鈴⽊忠樹; 分担研究者:横浜市⽴⼤学医学部 梁明秀)」の⽀援を受けて⾏われました。


お問合わせ先

横浜市立大学  広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp






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