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新型コロナウイルスに対する中和抗体を 簡便かつ迅速に測定できる新たな手法の開発に成功

2020.07.28
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新型コロナウイルスに対する中和抗体を 簡便かつ迅速に測定できる新たな手法の開発に成功

横浜市立大学大学院医学研究科 微生物学の梁 明秀教授、宮川 敬講師を中心とした共同研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する中和抗体*1を、感染性ウイルスを用いることなく、簡便かつ迅速に測定できる新しい手法の開発に成功しました。今回開発した方法は、感染性を有する生ウイルスやゲノムを含んだ擬似ウイルスを使用しないため、危険な操作が不要で、3時間以内に中和抗体の量を測定することが可能です。これまで多検体の解析が困難であった新型コロナウイルスに対する中和抗体の測定が、簡便かつ短時間に可能となることが期待されます。

本研究成果は、プレプリントサーバーのmedRxiv*2に投稿し公開されました。(7月22日)

※お断り:現在、学術雑誌へ投稿されたCOVID-19に関する論文は審査前にプレプリントサーバーへ登録、公開されるよう推奨されています。学術雑誌での審査により論文内容が修正される可能性があります。

※本研究成果は現在、Journal of Molecular Cell Biology doi: 10.1093/jmcb/mjaa047に掲載されています。(2020.9.25)
 
 研究成果のポイント

・ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復期患者血清中に含まれる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染防御抗体(中和抗体)の迅速測定法「hiVNT (HiBiT-tagged Virus-like particle Neutralizing antibody Test)」を確立

・HiBiT標識*3ウイルス様粒子*4を用いて、血清中の中和抗体を3時間以内に検出可能

・生ウイルスを使用しないため、BSL2レベルの実験室で安全かつ簡易に測定が可能

・感染防御免疫をもつ人を見分ける迅速スクリーニング検査や、疫学的研究、ワクチン評価などに役立つと考えられる

研究の背景

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数は世界全体で1000万人を超え、死者数が50万人以上と報告されており、世界的に公衆衛生上の非常に大きな問題として早急な対策が求められています。パンデミックの進行に伴い、集団の中の一部が感染防御免疫を獲得しているため、個人の免疫状態を明らかにする検査が必要です。現在、抗SARS-CoV-2中和抗体 (nAb)の存在の同定には、ウイルス中和試験が多く用いられています。しかしながら、試験期間が4~5日かかる低スループット性や、実施に感染力のある生ウイルスを使用するため、バイオセーフティレベル3(BSL-3)設備を備えた特殊な実験室が必要であるほか、多検体の解析に危険が伴うなどの問題があります。

これらの問題を克服するため、遺伝子組換えレンチウイルスベクターを用いた中和試験が代替法として使用されていますが、この手法でも判定に少なくとも2~3日かかるため、迅速性が低く、遺伝子組換えウイルスを使用するため、特別な実験室と熟練の検査員が必要となります。そのため、上記の中和試験に代わるハイスループットな機能性抗体検査を開発する必要があります。

研究の内容

梁明秀教授を中心とした共同研究グループは、COVID-19回復期患者および不顕性感染者の血清中に含まれる、中和抗体を定量的かつ迅速に測定できる「hiVNT システム」を構築しました(図1)。実際の感染性ウイルスや遺伝子組換えウイルスを使用せず、ウイルスの殻だけからなる、ウイルス様粒子 (VLP) を使用することで、特殊な実験室や設備を必要としません。
図1  新規中和アッセイhiVNTシステム
本研究グループが開発したhiVNT システムは、表面にSARS-CoV-2スパイクタンパク質を、HiBiTタグ付けされたVLPと組み合わせて利用します。このVLP(hiVLP)は、LgBiTを安定的に発現するVeroE6/TMPRSS2細胞に侵入した場合、容易に定量することができます。VLP表面上のスパイクタンパク質が、ヒト細胞のアンギオテンシン変換酵素-2 (ACE2) 受容体に結合すると、VLP膜と宿主細胞の膜が融合し、VLPを構成するカプシドタンパク質が細胞内に取り込まれます。すると、HiBiTとLgBiTが相互作用してNanoLuc発光酵素が形成されます。したがってNanoLuc酵素の発光を指標に、わずか3時間でVLPの細胞侵入量を測定できます。中和抗体を含む血清とVLPを同時に添加すれば、この発光は減少することになります。実際にCOVID-19の回復期患者血清11例を用いた検証では、すべての例でNanoLuc発光の顕著な減少が見られました(図2)。
図2  患者血清を用いた検証データ 
さらにhiVNTシステムは、従来の検査法とほぼ同様の中和活性データを得ることができます(図3)。この検査法を駆使すれば、SARS-CoV-2への免疫応答の動態や地域における感染の拡がり方を調べる多検体解析が可能になると考えられます。また、血清療法に貢献できる回復期患者の選定や、防御免疫保持の確認など、感染を広げるリスクの低下措置が可能になります。
 図3  従来法との比較データ 

今後の展開

本研究では、ハイスループット中和試験法hiVNTシステムを確立しました。本手法は、症候性または無症候性COVID-19感染からの回復期血清中のSARS-CoV-2 中和抗体の迅速定量のための単純、高スループット分析システムです。今後、本手法は防御免疫を持つ個人の同定、集団感受性研究に関する疫学的研究、治療効果やワクチン評価にも役立つと考えています。

用語説明

*1  中和抗体
ウイルス感染阻害能を有する抗体。一般に、ウイルスと細胞の吸着や融合を阻害することが多い。

*2  medRxiv
コールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)と医学系雑誌出版社BMJ、米・イエール大学の3機関共同運営による医学分野のプレプリントサービスで、査読前の医学分野の論文を受付し、新しい知見の迅速な共有やフィードバックを受けるためのプラットフォームを無料で提供する。

*3  HiBiT標識
HiBiT system は11アミノ酸のペプチドタグ(HiBiT)と、それに結合する約18KDa のNanoLuc ルシフェラーゼ断片(LgBiT)と基質を用いた、発光法によって目的タンパク質を検出する技術。

*4  ウイルス様粒子
ウイルスに似ているが、内側にウイルスの核酸を保持しない。カプシドと呼ばれるウイルスの骨格タンパク質を細胞に導入することで作製できる。

掲載論文

Rapid quantitative screening assay for SARS-CoV-2 neutralizing antibodies using HiBiT-tagged virus-like particles
Kei Miyakawa, Sundararaj Stanleyraj Jeremiah, Norihisa Ohtake, Satoko Matsunaga, Yutaro Yamaoka, Mayuko Nishi, Takeshi Morita, Ryo Saji, Mototsugu Nishii, Hirokazu Kimura, Hideki Hasegawa, Ichiro Takeuchi, Akihide Ryo
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.07.20.20158410.

※本研究成果は現在、Journal of Molecular Cell Biology doi: 10.1093/jmcb/mjaa047に掲載されています。(2020.9.25)

※本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法開発に資する研究 (研究代表者:国立感染症研究所 感染病理部 鈴木忠樹部長)」、「横浜ライフイノベーションプラットフォーム(LIP.横浜)」の支援を受けて行われました。


お問合わせ先

研究・産学連携推進課
E-mail:kenkyupr@yokohama-cu.ac.jp


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