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東京2020オリンピック・パラリンピック ボランティア&有償スタッフ交流会

東京2020オリンピック・パラリンピック ボランティア&有償スタッフ交流会

◆日時:10月16日(土)10:00~11:00、19日(火)、22日(金)、18:00~19:00
◆場所:オンライン

 令和2年に開催されるはずだった東京2020オリンピックは、1年の延期を経て令和3年7月23日(金)~8月8日(日)に、東京2020パラリンピックは令和3年8月24日(火)~9月5日(日)に、それぞれ無観客で開催されました。

 大会ボランティア・都市ボランティアの最初の募集は平成30年9月~12月に行われ、本学からも多くの学生が申し込んでいました。延期になったことで自らの状況が変わった、新型コロナウイルスの感染拡大が心配であるなどの理由で、辞退せざるを得なくなった学生もいたようですが、大会は成功裡に終わり、実際にボランティアや有償スタッフとして参加した学生もいました。

 そこでボランティア支援室では、大会ボランティア・都市ボランティア・有償スタッフとして大会に参加した学生に呼びかけ、それぞれの活動を共有し、おしゃべりする、オンラインの交流会を開催しました。その中から、オリンピック放送機構(OBS)の大学生に向けたインターンプログラム「BTP(ブロードキャストトレーニングプログラム)」に参加した谷村さん(都市学系4年)に、活動報告をお願いしました。

オリンピック放送機構(OBS)での経験

 国際総合科学部 国際都市学系 まちづくりコース4年の谷村早紀と申します。
 私は、2021年の「東京オリンピック・パラリンピック」のオリンピック期間中、オリンピック放送機構(OBS)(※)の「BTP(ブロードキャストトレーニング)」というプログラムで、有償の音声担当として就業しました。今回はその経験を共有させていただきます。

 本当は集合写真や仕事中の写真などお見せしたいものがたくさんあったのですが、残念ながら権利の都合上ここに掲載することができませんでした。

 
※オリンピック放送機構(OBS)
 国際オリンピック委員会(IOC)の放送部門であり、オリンピックの放送報道の計画と配信全体を担当。テレビ、ラジオ、デジタルの生放送を制作しているホスト放送局でもある。OBSの報道は中立的で、特定の国やアスリートを支持するものではなく、スポーツ大会や開会式、閉会式が含まれる。
 「BTPプログラム」は、日本の大学生・留学生に、オリンピックの現場で国際経験・放送技術・メディア知識の充実や、キャリア形成の機会を提供することを目的としたインターンプログラム。
・OBS(OLYMPIC BROADCASTING SERVICES)
https://www.obs.tv/home
・BTP(Broadcast Training Programme)https://www.obs.tv/btp/home

 私は7月の中旬から約3週間、茨城・鹿島スタジアムで、サッカーの試合の音声を担当し、就業しました。
 OBSに応募した理由は、一生に一度しかないかもしれない東京オリンピックに、何かしらの形で携わってみたいと昔から思っていたからです。何かしらの形というのは、ボランティアとか有償スタッフとかありますが、私は結果的に有償スタッフという形で携わりました。

◆参加するにあたっての事前準備と経緯について

 事前準備ですが、私は以前より、オンライン英会話とスポーツボランティアへの参加を自主的に行っていました。
 オンライン英会話というのは、昔、APEの海外プログラム(シンガポール)で英語が話せなくて悔しい思いをしたことがあって、その時から英会話スキル向上を目指すために、毎日オンライン英会話を継続しています。
 またスポ—ツボランティアに関しては、私はオリンピックに関わってみたいと思ったものの、スポーツの現場に携わったことがなかったため、ボランティア支援室から紹介された「横浜マラソン」や、「ラグビーワールドカップ2019」のパブリック・ビューイングでのボランティアなどに参加し、スポ—ツの現場で働くというのはどういうことなのかを実体験してきました。
 また、恥ずかしながらサッカーのことはよく知らなかったので、事前に高校の時のサッカーが詳しい友人に ルールや注目選手などについて聞いてから仕事に臨みました。

 当初東京オリンピック・パラリンピックは2020年に開催されるはずだったので、2019年の秋にOBSに申込みをしました。
 最初は大会ボランティアに申し込もうと思ったのですが、メールの行き違いでうまく申し込みできず、何かほかの形で参加できないかなと思ったときに、OBSで働けるということを知りました。その際、私の場合はとくに面接などはありませんでした。

 申込み後は2回ほど説明会や研修があって、音声とかカメラとか、業務に関わる基礎的な研修を受講しました。この時の説明は海外スタッフと一緒ですべて英語だったので、理解するのに戸惑った部分もありました。

 その後2020年の東京オリンピック・パラリンピックが延期されることになりましたが、「2021年に向けて就業してください」というメールが来て、「茨城・鹿島スタジアム」でサッカーの業務に携われることになりました。

 2021年に入って最終確認のあと、アクレディテ—ションのカード(大会関係者用エリア識別カード)やユニフォームを受け取ったり、働く上でのマナーなどのオンライン研修を受講したり、ワクチン接種の優先接種券をいただいて、大会前に2回、都庁でワクチンを接種しました。大会中は、PCR検査も毎日受けました。休みの日もホテルで支給されて検査しました。 

◆主に3つの仕事をしました

最初は、「プロダクションチーム(制作チーム)に関わって下さい」ということしか言われていなかったので、まさか自分が音声の仕事ができるとは思ってもいませんでした。
 そして、初日に配属が決定し最初に行ったことが、ケーブルやマイクスタンドの準備・撤収作業でした。会場はすごく広いので、20個以上のマイクや50m以上のケーブルを設置したりしました。

 2つ目は一番重要なマイクテストです。これは本当にすごく重要で、ケーブルとかマイクスタンドを設置した後、マイクと中継車をつなぐ準備をします。試合中の音声を拾うために、マイクが作動しているかどうか一つひとつ、チェックしていきます。

 3つ目が手振りマイクでの収音です。こちらは試合中、手振りマイクを持って、ボールの動きに合わせてマイクを追いかけるような形で動かして、収音を行っていきます。こうすることで、ボールの音はもちろん選手の声だったり、走る音であったり、そういう細かい音も収音できるのです。こういった、実際に全世界に届けられる音声のお仕事をしました。

 スタッフも多かったので、通常の音声の仕事の手が空いたときは、試合の何時間か前に発表されるスタメンに関する資料をコピーして、中継車に届けるという仕事もしていました。

 私が担当した音声やカメラの部署などは、中級レベルの英語能力が求められていました。
 OBSの社員の方や留学生の方もおり、英語でないと伝わらないときもありました。オンライン英会話のおかげで以前よりはしゃべれるようになっていたので、仕事中や休憩時間に英語でも会話ができたのはよかったです。

 

◆強いて「大変だったこと」を挙げるとすれば…

 ひとつ目は「炎天下での作業」です。試合は夕方から夜に行われますが、マイクテストは日中にやるので、やはり炎天下で長時間立ちながら、しかもマスクを着用しながら活動することは、体力的にもきつかったです。熱中症も防がなければいけないので、水分補給を心がけていました。

 2つ目が就職活動との両立でした。本来であれば東京オリンピック・パラリンピックは2020年の開催だったので、3年生のときに携わる予定でしたが、延期されたので4年生での活動になりました。私は、東京オリンピック・パラリンピックのときはまだ就職活動をしていたので、6月~7月の最終確認で「あなたはこの仕事をできますか?」というメールが来たときには、正直、まだ迷っていました。
 しかし冒頭で申し上げた通り、一生に一度しかないかもしれない東京オリンピック・パラリンピックに携われるチャンスを逃したくないという強い気持ちがあったので、家族や周りの人の支えもあって、就職活動と両立という決断をしました。

 具体的にお伝えすると、茨城と東京を2往復くらいしました。一番大変だったのは、朝6時にホテルを出て東京に戻って、面接が終わった後にまた高速バスで茨城に戻って、午後3時くらいからお仕事再開、という日でした。その日は日本対ニュージーランド戦で、日本戦は絶対携わりたいと思っていたので、スタッフの方にお願いしてやらせていただきました。大変ではありましたがすごく充実していました。

 就活の場面ではOBSの経験も話しました。面接でアイスブレイクを挟む企業もあり、「今日はどこから来たのですか?」という話のときに、通常なら「自宅から」と言うところ、敢えて「茨城から来ました」と言って、OBSの経験を話したりしました。

◆楽しかったことは本当にたくさん! 

 楽しかったことは本当にたくさんあるのですが、その中から3つお話します。
 ひとつ目がPGMを届ける活動に貢献できたということです。PGMとは、「臨場感のある音声と映像」という意味です。自分が実際に手振りマイクで拾った音が、全世界に放送されるのです。自分でも仕事中に、自分の拾った音がイヤホンで聞けるので、「今こんな音が使用されているのか」ということを確認しながら、ワクワクした気持ちでお仕事ができました。大きなお仕事をさせていただいていることを改めて感じました。

 2つ目が、試合前後のすべてを見られた経験です。選手のそばでお仕事をしていたのですが、試合前の練習から、試合中はもちろん、試合後のインタビューも見ることができました。こんなに選手の皆さんの近くでお仕事ができたことは、本当に夢のような時間でした。

 3つ目は、温かく優しい職場だったということです。今回は、OBSの海外のスタッフ、日本のテレビ局の方、あとは海外からの留学生と日本の大学生の皆さんと一緒に仕事をしました。大学で学んでいることがまちづくりなので、放送関係の仕事など一切知らない中で、本当に現場の方々が優しく丁寧にご指導してくださり、最後の方はすごくスムーズに作業ができるようになりました。細かいところも丁寧にご指導していただき、ありがたく感じています。

◆最後に、この仕事を通して感じたことは…

 まず学んだこととして、チャンスを逃さないことで、自分にとって大きな経験ができるということです。私は就職活動と両立してこのお仕事をさせていただきました。最初は両立できるか心配でしたが、周りの社員の方や留学生の方にも「頑張ってね!」と応援していただき、やはりチャンスを逃さなかったことで良い経験ができたと思います。
 就活があり、やろうかどうか迷っていましたが、一生に一度しかできないことを、今逃したら一生後悔すると思いました。やりたい気持ちのほうが強かったのです。
 結果的に、この仕事をやらせていただき、達成感を味わい、自分にとって大きな成長になったと感じています。チャンスを逃さず、この決断をして良かったと思っています。

 2つ目は、さまざまな人の努力があってこそ、私たちは感動を共有できるということです。この写真も最終日のお昼に、晴天の中で撮った写真です。今回は音声の仕事でしたが、カメラの方、タイムキーパー、スタメンの発表をするチームのスタッフさんなど、本当にたくさんの方がいらしたのですが、それぞれの部署のさまざまな方の努力があってこそ、感動を届けられることを実感しました。
 コロナで、世の中も元気がない中で、PGMという臨場感のある音声と映像で感動を届けられたことを改めて感じています。

 3つ目が、最高の仲間と一緒だからこそ、最高の仕事ができるということです。最初は不安でしたが、社員の方も学生の方も、本当に皆さん、温かく優しい職場づくりをしてくださっていて、3週間が本当にあっという間に過ぎました。お互いがお互いを思いやり合いながら声掛けをし合う。こういう方々と一緒に仕事ができたから、最高の感動を届けられると改めて実感しました。
 学生スタッフも大勢いて、特に留学生の方々とは、英語でのコミュニケーションができました。留学生の方とは、仕事だけでなく、休憩時間に学んでいることや趣味の話、文化の話ができたことも、貴重な体験になったと思います。今でもみんなとSNSでつながっていて、連絡を取りあっています。

 最後にエピソードをひとつ。いつもは「マイクテスト マイクテスト ワンツーワンツー」のような感じでマイクテストをしているのですが、最終日の最後のマイクテストの時、「みんなで感謝の気持ちを伝えたいね」という話になりました。そこでサプライズで、学生スタッフが一人ずつ「今までありがとうございました」というメッセージをマイクテストで伝えたのです。中継車の方にも喜んでいただけましたし、感謝の気持ちを伝えられたのは良かったと思っています。

 最終日に知った話ですが、OBSには、学生スタッフがどれくらい仕事ができたかを報告する制度があるようで、私たちの音声チームはそこで最高評価で報告していただいたとのことでした。このように、最高の仲間とだからこそ、最高の仕事ができるのだと感じました。

 今回はコロナ禍中で、いろいろな意見があったと思います。オリンピック開催反対という方もいらしたと思います。しかし、無観客ではありましたが、こういった形で感動を届ける仕事に携われたとことは、本当にいろいろな方のおかげで、貴重な体験でした。心より感謝を申し上げます。

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