Volunteer Support Officeボランティア支援室
search

新型コロナの感染拡大により支援を必要とする人のためにできること~食料提供のボランティア~

思いやりを「食」でつなぐフードバンク

フードバンクかながわから学ぶ、食品ロス、貧困の内情

  • 日 時:2020(令和2)年8月7日(金)、8月10日(月)
  • 場 所:公益社団法人フードバンクかながわ
  • 主 催:Volunch
  • Volunch:揚妻、鹿瀬島、吉門
  • ボランティア学生数:15人

「フードバンクかながわ」と、私たちの深刻な問題

 フードバンクかながわは、十分に安全であるにもかかわらず廃棄される予定の食品ロスを、事業者からの寄付、フードドライブ(※1)、災害備蓄品の寄付によって集め、ニーズに合わせて地域のフードバンクや社会福祉協議会相談窓口、こども食堂、福祉関係の施設などに提供している団体だ。

※1 フードドライブを実施しているスーパーや区役所などに、家庭にある使いきれない食品を持ち寄ってもらい、それらをまとめてフードバンク等の団体に寄付すること。
横浜市のフードドライブ実施情報はリンク参照。

 フードバンクかながわがこのような活動をしている理由には、深刻な食品ロスと貧困の問題がある。フードバンクかながわ職員の藤田さんによると、日本の食品ロスは燃やせるごみの約19%を占めており、これは国民一人が毎日茶碗一杯分のご飯を捨てている量に等しいそうである。また、貧困問題についても、先進国の中で(OECD加盟34ヵ国比)日本は貧困率が極めて高く、2015年の国勢調査によれば神奈川県の貧困率は16.7%で、これは川崎市民153万人に匹敵する数字だそうだ。

 そのため、フードバンクかながわは「『もったいない』を『分かち合い』、『ありがとう』へ」をモットーに、家庭からは手付かずの食料を、事業者からは3分の1ルール(※2)等のために廃棄される予定の食品を回収して、必要としている人々に提供する事で、食品ロスと貧困の2つの問題の解決に当たっている。

※2 小売店などが設定する商習慣の一つ。製造日から賞味期限までの期間を三等分し、最初の3分の1にあたる期間までに納品し、間の3分の1にあたる期間まで店頭で販売、最後の3分の1にあたる期間までに店頭の商品を値引きして販売したり、撤去、廃棄したりするべきであるというもの。
例えば、製造日から賞味期限までが6か月の商品の場合、製造されてから2か月以内に納品することになる。また、それまでに納品できなかった商品は返品され、処分されることになる。

思いやりを食で伝える作業 

 ボランティアの作業内容としては、米の再精米と袋詰め、そして一般の方から提供された食品の仕分けの2つだった。米の再精米は特殊な機械を使って精米し、機械から予め設定した量の米が出てきたあと、その米を袋詰めするというもの。一連の作業に使う専用の機械のおかげで、短時間で多くの米袋を用意することができた。

 また、食品の仕分け作業では、まず寄付された食品を主食、副食、嗜好品などに分類し、重さと個数を調べた後、賞味期限別に棚に陳列していく。この作業では、賞味期限が切れていないかに注意する他、ペット用の食品が混ざっていないか、封が切られていないかにも注意する必要があった。それは職員の方曰く、食品を受け取る人の気持ちを尊重するために必要な作業という事だった。

参加した学生の声

 今回のボランティアには、フードバンクという存在を元々知っていた学生にも、そうでない学生にも多く参加してもらう事ができた。参加してくれた理由としては、「大学での研究で扱っていたから」、「食品ロスの問題に関心があったから」、「フードバンクというあまり知られていない施設を見学してみたかったから」、等が挙げられた。

 また、実際に体験してみた感想としては、「予想以上にシステマチックに運営されており、驚いた」という声もあった。確かに、フードバンクかながわのスタッフは少ない人数ながら、スーパーの流通網を利用するなどして、多くの食品を広範囲から収集、或いは広範囲に提供することができており、そのような効率の良さもこの施設の特徴の一つと言えるだろう。

「行く」から始まる問題解決

 今回のフードバンクでのボランティアを通して、食品ロスの問題解決にはフードバンクのような仕組みや制度と、一人ひとりの意識とが相互に作用する事が必要なのだと思った。食品ロスを生んでいるのは、賞味期限を殊に気にする日本の顧客のために多くの食品ロスを出してしまう企業や、食べ残したり、過剰除去をしたりする私たち市民一人ひとりだからである。また今回のボランティアを通して、フードバンクのような仕組みと私たちの意識とが影響し合うことで、より大きな効果がもたらされると確信したからである。

 今回私たちをフードバンクに招いて下さった藤田さんは、以前フードバンクに来た小学生のある男の子の話を何度かしてくださった。その男の子はそれまでいつも食べ残しをしていたが、フードバンクに来て作業を体験してから、一度も食べ残しをしなくなったのだという。私自身も、フードバンクに実際に訪れた事によって、これまで以上に食べ物を大切に思えるようになった。

 このようにフードバンクに行く事で、家庭にある手付かずの食品の圧倒的な多さを知り、食品を受け取った人の感謝の声や問題に取り組む職員の方の存在を知って、個人の問題意識が変わる。そして個人の問題意識が変わる事でフードバンクに貢献する人が増える。このように仕組みと一人ひとりの意識とが影響し合うことによって、食品ロスや貧困、ひいてはあるゆる大きな問題は、解決し得るのではないかと私は感じた。
 

Volunch2年 揚妻幸歩

レポート一覧