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医学部学生団体YDC「南高校付属中学校訪問授業」

医学生・看護学生が創る「医療」教育

 8年にわたり“医療崩壊”という問題に向き合い、「学生が取り組む地域活動支援事業」の助成金を使って、小中学校への訪問授業を継続している医学部の学生団体、YDC。毎年継続的に子どもたちに向けて行っている授業を通して、救急車不足の現状の理解、救急機関の使い分けなどの適正利用を広め、将来的に医療の適切な利用や、かかりつけ医の普及などの効果を見込む活動を続けています。

 今年度は計7校に訪問の予定ですが、8月30日に行われた横浜市南高等学校付属中学校での授業をレポートします。

医学生によるキャリア選択のプレゼンを、真剣に見つめる中学生

 この日は15名の学生が参加し、1年生の4クラス160名(2クラスずつ×2時間)に向けて授業を行いました。
 
 まず初めに学生2名が順番に教壇に立ち、それぞれ医学部を目指したきっかけや、医学部に入ってどんなことをしたいと思っているかをプレゼンしました。医学科、看護学科それぞれのきっかけや理由があり「自分がアレルギーになった」「テレビ番組を見て」「スクラブ(医師が着ている医療着)に憧れて」など様々でしたが、生徒たちは皆、お兄さんやお姉さんたちの話を自分に置き換えているのか、「うんうん」とうなずきながら話を聞く姿がありました。

 この導入部分は、毎授業担当者を替えて必ず行っている内容で、本題の「医療の使い分け」という少々堅苦しいテーマの前に、生徒たちと自然に共感し合い、距離を縮めるために、とても有効なプログラムです。生徒にとって将来医師や看護師となる大学生は、最初は遠い存在のように見えるようですが、自分たちと同じようにテレビの医療番組も見るし、体が弱かったという話を聞くことで、「ぼくたち、私たちも、将来お医者さんになれるんだ!」という気持ちを抱かせる効果があるようです。

iPadを使って、ケーススタディのグループワーク

 このプレゼンが終わると、司会の学生から本日の授業内容の説明があります。この日は「医療機関のつかいわけを学ぼう」「夏に増えるあぶない症状って??」「あぶない症状への対処法を知ろう」の3つのプログラムです。授業を行う季節によって、多少内容は変わります。例えば、暑い時は熱中症や食中毒、寒い季節だと風邪やインフルエンザ等々…。何を扱うかは、事前に担当の先生と綿密な打合せを行って決めていきます。学校ごとに特色が出る部分でもあります。

 授業は基本的に司会の学生によって進められますが、所々でグループワークを取り入れています。各グループには学生が一人ずつつき、iPadを使いながらケーススタディを行います。「こういう場合はどうする?」と言ったクイズ形式で問いかけをし、それに答えてもらいながら、さまざまな場合の対処法を学びます。今年から導入したiPad を使ったグループワークは、中学生に興味深く受け止めてもらうことができたのか、各グループとも、頭を寄せ合って活発な意見交換が行われていました。

いざという時の相談先「#7119」

 そして最後のまとめでは、各グループで学んだことを、生徒たちに手を挙げて答えてもらいながらもう一度確認していきます。また、毎授業この場面で必ず取り入れられているのは、実際に家族が倒れた時などに救急車を呼ぶ実践練習や、屋外で119番通報が必要な時に自分の居場所(住所)を知る方法、救急車を呼ぶべきか迷った時の相談先電話番号「#7119」についてなど、いざという時に役立つ医療情報です。

 現役の医学生のお兄さんやお姉さんが、楽しく覚えやすいように伝えてくれるこのような大切な情報は、きっと生徒たちの心に印象深く残り、家に帰って家族に共有する生徒もいるでしょうし、また大人になっても消えない記憶として残っていくのかもしれません。



ボランティア支援室コーディネーター 柳本

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