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「あーすフェスタかながわ2017 外国籍県民フォーラム」

あーすフェスタかながわ2017 外国籍県民フォーラム 多文化共生を考える~わたしがはじめるアシタのタブン化~ 参加レポート

  • 日 時:2017(平成29)年5月20日(土)~21日(日)
  • 場 所:あーすぷらざ

 5月20日(土)~21日(日)、本郷台駅近くの”あーすぷらざ”にて「あーすフェスタかながわ2017」が開催されました。あーすフェスタは、ワールドバザールや音楽・踊りのパフォーマンス、映画、体験型のワークショップ、フォーラムなど、世界各国の文化を通して、多文化共生について考える、平成12年から毎年開催されているイベントです。

 今回は、1日目の外国籍県民フォーラムに、テーブルトークのファシリテーターとして、横浜市大国際教養学系社会関係論コース滝田ゼミの学生など、5名がボランティアに参加しました。

多文化共生を考えるキーワードは”タブン化”

 現在神奈川県には、約18万5千人の外国籍の人々が暮らしています(平成29年1月1日現在)。全国的に見て外国人の割合が多い神奈川県でも、多文化共生についての理解は未だ不十分です。「多文化共生を考える~わたしがはじめるアシタのタブン化~」と題した今回の外国籍県民フォーラムは、多文化共生を考える3つのキーワード、「言語」、「制度」、「心」から自分にとっての多文化共生を考え、明日からの自分の変化の芽生えを目指しました。かながわ多文化クイズ、3名のゲストスピーカーのトーク、テーブルトークの3部からなり、多文化共生についての知識が浅い人へも、自分の周りの多文化共生について考えるきっかけを提示していました。

「言葉」「制度」「心」の壁を越えていくために

 今回、自らの体験を語ってくださったゲストスピーカーの方が3名いらっしゃいました。
 

 1人目は、西之原愛子さん。ペルー出身の日系三世で、小学校のときにペルーから来日し、今では医療、行政、学校など幅広い分野で通訳・翻訳をされています。また、これまでの経験から、子どもたちの教育支援や生活サポートの活動もされているそうです。西之原さんは、「言葉を訳すときには気持ちを伝えることが何よりも大切です」とお話されていました。気持ちを伝える、ということは、時には怒りや悲しみといった、負の感情も伝えなければいけません。円滑なコミュニケーションのため、通訳・翻訳家として、どうあるべきか、現在も日々考えていらっしゃるそうです。
 2人目は、在日朝鮮人三世の金玄虎(キム・ヒョノ)さんです。ご自身は神奈川県の出身で、2つの故郷があるとおっしゃっているのが印象的でした。金さんは、在日外国人に厳しい現在の日本の制度に目を向け、とりわけ外国人学校についてお話ししてくださいました。現在、神奈川県には外国人学校(認可校)が11校あります。1つの県に置かれている外国人学校の数としては他県に比べると多い方なのですが、神奈川県に住む外国人の数に対しては、足りていないのが現状です。認可外の学校だと、日本の教育制度の問題で進学が難しくなったり、経済的理由で通えなくなる人もいます。このような、制度上不利益を被りやすい在日外国人の存在に気づいてほしいとお話されました。

 3人目は、ブルキナファソ出身のサワドゴ サイドゥさんです。ブルキナファソは西アフリカに位置する国で、サワドゴさんは来日して7年、日本人の奥様と6歳の息子さんと暮らしています。サワドゴさんは、ブルキナファソと日本の共通点や相違点についてお話されていました。ブルキナファソでは、例えば森の中で生まれた子どもに、”森”と名付けたり、川のそばで生まれた子に、”川”と名付けたりする文化があるそうです。日本に来て、”森”が付く名字の方にお会いして、「この方は森で生まれたのかな?」と思っていたそうです。ブルキナファソでは当たり前と思っていた文化が、日本では違うという事に気づき、興味深かったとお話されていました。また、日本人がよく使う”ストレス”という言葉を理解するのが難しい、とおっしゃっていました。豊かな国なのに何がストレスなのか、説明できる人は説明してほしいと問いかけていらっしゃいました。

初めて気づく、自分にとっての多文化

 ゲストスピーカーの3名のお話をふまえ、参加者でテーブルトークを行いました。1テーブルを3~4人で囲み、ゲストスピーカーのお話を聞いての感想や、多文化共生のために明日から変えられることについて話し合いました。途中、他のテーブルと意見交換をし、再度自席で他のテーブルで聞いた意見を持ち帰り話し合う、ワールドカフェ形式でのテーブルトークでした。

 私の参加した班では、サワドゴさんのお話にあった”ストレス”を切り口に、「みんな同じがいい」という日本の独特な考え方が様々なストレスの要因であり、多文化への理解がなかなか進まない理由なのではないか?という議論になりました。日本は島国なので、歴史的に見ても他の国の方々と触れ合う機会が少なかった国であること、日本語という独自の言語があることなど、その原因は一朝一夕には変えられないことばかりです。しかし、必ずしも変える必要はなく、日本の独自の考え方や文化、言語などもまた、尊重されるべき日本の個性であると考えました。

 他のテーブルでは、メディアが与えるイメージが、更に多文化共生を遠ざけてしまう場合もあるのではないかという意見や、仕事や宗教、政治では各国譲れない点があっても、食事や被服などは他の文化を好んで取り入れることがあるということに着目した班もあったようです。中でも私は、まずは自分が自分であるということのプライドづくりが、多文化を受け入れる力になるのではないか、きちんと自らの文化を知る必要があり、それには教育が欠かせないという意見に、強く感銘を受けました。
今まで特に深く考えずに受け入れていた自分の習慣や文化が、世界に目を向けるとあたり前ではありません。そしてそれに気づくには、自分とは違う文化を持った方とコミュニケーションをとらなければわからないのです。今回のフォーラムに参加し、自分の言葉にすることで、自分が異文化についてどう考えていたのかを知るきっかけとなりました。

ボランティアに参加した市大生の声

 フォーラム終了後、テーブルトークのファシリテーターを行ったボランティアの学生に話を聞きました。このボランティアに参加したきっかけを、「友人に誘われてやってみたいと思ったから、多文化共生については詳しくないけど参加しました!」と話してくれた学生は、「実際に参加してみて、多文化共生というテーマを深く掘り下げて学びになったのはもちろん、ファシリテーションも初めてだったので、いい経験になりました」と笑顔で話してくれました。

 もともと多文化共生について興味があったという学生は、「たくさんの国や地域の方とお話できたことが一番よかったし、フォーラムの参加者の方もみなさん優しく、議論もスムーズに行えて安心しました」と話してくれました。ボランティアのメンバーは事前に今日の流れを把握していたので、議論に集中しやすかったことも、学びが深まる一助となったようです。来年以降も、ボランティア支援室でぜひ紹介していきたいと思います。

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