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国際教養学部 髙橋力也 准教授が第40回大平正芳記念賞を受賞!

2024.06.25
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著書『国際法を編む-国際連盟の法典化事業と日本』が受賞作に選出

国際教養学部 髙橋力也准教授の著書『国際法を編む-国際連盟の法典化事業と日本』が、第40回大平正芳記念賞を受賞しました。
表彰式に出席した髙橋力也先生
大平正芳記念賞は、「環太平洋連帯構想」の発展に貢献する政治・経済・文化・科学技術に関する優れた著作に対して授与されるものです。

髙橋准教授の著書『国際法を編む』は、国際連盟や各国の公文書などの膨大な史料の分析をもとに、国際連盟における国際法の法典化事業とそれに対する当時の日本の能動的な関与について明らかにしたもので、これまでの国際連盟研究において十分に検討されてこなかった法典化事業の全容を解明したことに加え、従来日本外交史研究において低く見積りがちであった多国間外交の意義を問い直したパイオニア的著作として評価され、受賞作に選出されました。

著書に関する記事はこちら
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2023/20230623kokusaihouwoamu.html

髙橋准教授に受賞のコメントをいただきました。
このたびは栄えある大平正芳記念賞を賜り、歴代の錚々たる受賞作の一つに小著『国際法を編む』を加えていただけることになりました。大変光栄に感じるとともに、畏れ多い気持ちで一杯です。

本書は、1920年代に国際連盟が実施した国際法の法典化事業に対する、日本外交の関わりについて検討したものです。当時の日本は、自国の死活的利益が関わる問題を除いて、国際秩序の構築には関心が薄かったといわれていますが、他方で、国際連盟を中心に行われる多国間外交を重要視し、その中で国際法の強化に熱心に取り組んだ、安達峰一郎や松田道一など「連盟派」と呼ばれる外交官たちも現にいました。拙著では、日本の外務省や国際法学会による法典化事業への貢献を題材に、戦間期日本外交のもう一つの側面を明らかにすることを試みました。
各地の公文書館に眠る古びた史料を手に取り、「連盟派」外交官たちの足跡を辿る中で感じたのは、彼らが総じて優れたバランス感覚の持ち主であったということでした。外交官にとって自らが奉じる国家の国益増進と保持は至上命令です。他方で、国際益が関わる多国間外交においては、自国の主張を強引に押し通すようなことはできません。「連盟派」外交官たちは、この国益と国際益という、時に相反する二つ要請のはざまに身を置き、苦慮しながらも、国際協調の道を維持すべく日夜知恵を絞り尽力していました。その成否は別にしても、彼らが成そうとしたことは、中庸を追求する外交であったといえるかもしれません。

今回の大平正芳記念賞がその名を冠する大平正芳元首相は、「哲人宰相」とも呼ばれ、永田町での激務の傍ら、暇を見つけては書店に足を運ぶ大変な読書家だったそうで、古典で磨き上げられた叡智が滲み出るような、含蓄に富む言葉を数多く残しています。中でも、政治や行政などのあり方を、二つの中心を持つ楕円になぞらえ、どちらか一方に偏ることなく、両者が均衡した状態を保持することが肝要であるとした、いわゆる「楕円の哲学」は、どこか「連盟派」外交官たちの試みた中正の外交に通ずるところがあるように思えます。

いつの時代も、また何事においても、中道を歩むことは難しい。「現在」にのみ囚われた思考では、世を見つめる自らの認識に歪みや偏りがあることにすら気づけないかもしれません。今、SNSなどを介して日々押し寄せる「現在」の濁流の只中にあって、いかにしてその流れに足を取られず、楕円の平衡を保つことができるか。私自身も確たる答えを持てないまま、その手がかりをひとまず歴史に求め、ゼミでの輪読などを通じて学生たちと一緒に考え、学びを深めようとしているところです。

最後に、先日の安達峰一郎記念賞に引き続き、大平正芳記念賞の受賞という身に余る栄誉に浴することができたのは、横浜市立大学の教育・研究を日頃から支えてくださっている本学の教職員の方々のおかげにほかなりません。改めて深く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。これらの賞を励みに今後もより一層精進してまいりたいと思います。



髙橋力也准教授略歴
国際教養学部 国際教養学科
専門:国際機構論、国際法史

2010年 - 2011年 外務省総合外交政策局国際人権人道課 国際人権人道法調査員
2011年 - 2012年 外務省総合外交政策局国際平和協力室 国際平和協力調査員
2012年 - 2014年 外務省国際連合日本政府代表部 専門調査員
2016年 - 2022年 日本大学国際関係学部 助教
2022年 -      横浜市立大学国際教養学部 准教授
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