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横浜市と共に復興訓練ワークショップを実施しました

2022.02.22
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災害前に行う地域復興まちづくり模擬訓練ワークショップ

横浜市立大学国際教養学部 石川永子准教授(都市防災計画論)が、横浜市政策局、都市整備局、建築局と共に、災害発生前に行う地域復興まちづくりに関する模擬訓練ワークショップを実施致しました。

今回の連続ワークショップは、本学の2021年度地域実践研究支援事業に採択され、実施しています。 地域実践研究支援事業とは、横浜市立大学の知的資源を活かし、地域社会の課題解決や活性化等を目指すことを目的として、本学教員が自ら提案して実施する、地域の企業・団体・行政等との研究活動を支援するものです。


<ワークショップの概要>
来年度以降に、横浜市内の地域組織と共に行う「大地震後の復興について追体験して考えよう」というプログラムの内容について、今年度は市役所と石川研究室で、実際にワークショップを試しに行いながら検討しました。
このプログラムは、実際に災害が起こってから復興までのストーリーを疑似体験しながら、ロールプレイを実施することで、「地域で意見交換し助け合う力」、「地域住民の暮らしのなかで生まれるアイディアから地域防災・災害対応を向上させる力」を育む体験型研修プログラムにする予定です。
事前復興まちづくりを住民が考えるプログラムは、東京都等で以前から行われていました。しかし、横浜では、都心部に、高低差のある傾斜地に木造密集市街地が多く、また、市民が主体で考えた「防災まちづくり計画」が多くつくられているので、それをふまえて、「横浜型の事前復興まちづくりプログラム」を市役所と横浜市立大学で検討しています。

なお、今回のワークショップの運営には、石川准教授の他、石川ゼミの学生が中心となって進め、教員の研究内容と学生の学びの一体化が図られています。
また、スムーズにワークを進行するためまちづくりの専門家である小口 優子氏と桜井悦子氏がファシリテーターとして参加しているほか、東京都立大学 中林一樹名誉教授・日本女子大学 薬袋奈美子教授、本学の影山摩子弥教授と三輪律江教授がアドバイザーとしてご協力いただきました。
~開催日程~
    事前復興に関する勉強会(2021年8月11日実施)
    第1回:地震災害からの避難(2021年11月4日実施)
    第2回:被災後の仮住まい(2021年12月1日実施)
    第3回:市街地まちづくり(2022年1月18日実施)
今回は第2回ワークショップの現場にお邪魔して、取材をさせていただきました。
実際に横浜市立大学のみなとみらいキャンパスで実施されたワークショップをご紹介します。
第1回:地震災害からの避難
横浜市の特徴である高低差のある密集市街地をモデル地区として、避難場所の位置や避難ルート、要援護者をどのように助け合って避難するかなどの体制を確認し、問題点を検討、どのような体制や道路、避難場所があれば安全に避難できるかを検討しました。(横浜市都市整備局防災まちづくり推進課が主体となり実施)
第2回:被災後の仮住まい
割り当てられた住民の設定を考えながら、どのような仮住まいを選択したいか、また、仮設住宅での暮らしを思い浮かべながら、どのような配置プランが望ましいかなどを検討しました。(横浜市建築局住宅政策課が主体となり実施)
第3回:市街地まちづくり
災害復興に向けて安全・快適な市街地として復興まちづくり像を理解し、意見交換を行い、復興まちづくり計画案を検討しました。(横浜市都市整備局企画課が主体となり実施)
特徴として感じたのは、関わっている人の多さです。横浜市においても、実際に災害が起きたとき、多くの局や区の担当課が関わるため、今回のワークショップでも横浜市の1つの課と実践するのではなく、第1回~第3回でそれぞれの担当課が参画し連携して進めていたことが、より現実に近いロールプレイがされていたと感じました。

参加者の方へインタビュー

今回は、第2回の担当課でもあり、第1回にも参加している横浜市建築局住宅部住宅政策課の林隆一さんと城向咲さんにお話を伺いました。
横浜市建築局住宅部住宅政策課                   城向咲さん(写真左)、林隆一さん(写真右)
横浜市建築局住宅部住宅政策課の通常業務は、横浜市住生活基本計画や空家対策、住宅セーフティネット制度、省エネ住宅の普及促進など、「住宅」に関する業務を幅広く担当しています。その中で、災害時の仮設住宅の土地探し(市の公園や未利用地等を把握)は毎年行っていますが、被災者やまちの復興までを見据えた仮設住宅の検討などは、必要性は感じつつも、具体的に手を付けられていなかったと思います。
首都直下型地震など7~8割は来ると言われていることもあり、横浜市立大学より今回の依頼があった際は、改めて必要なことだと思いなおしました。
そして、復興は色々な部署に関わっていますので、住宅部門だけに閉じるのではなく、福祉の面やまちづくりなど横浜市の中でも「ヨコ」がつながる、よいきっかけを作っていただいたと思っています。
今回のワークショップを通じて、元々横浜市が考えた仮設住宅の配置プランもあったのですが、住民の立場でロールプレイングを行ってみると、人によって違う価値観を持っているので、何が良いのか改めて考えさせられました。 被災者にとっては切実だからこそ、事前準備の大切さを改めて考える良い機会になりました。

住民の方々は、災害を起きた際の避難のことは考えていると思いますが、その先の仮住まいのことを考えている方は少ないと思います。私たちの啓発活動が足りないというのもあり、来年度の住民向けに実施するプログラムでは考えていただく良い機会になったらと思います。
市民向けに実施する際は、地元住民ならではの意見が出てくると思うので、さらに発展した議論ができると期待しています。

運営に携わったゼミ生へインタビュー

今回のワークショップを実施するにあたり、石川ゼミの学生は、事前準備から当日の設営・運営、議論の記録まで幅広いサポートをしていました。そこで得た気づきについて、ゼミを代表して、第2回の学生スタッフ担当の氏家 望さん、古川 愛琴さん、山本 あかりさん(石川ゼミ2年)に話を伺いました。
第2回では、仮設住宅団地の配置計画の検討の際に、公園の配置模型を使用するため、材料の買い出しから始めました。模型の制作自体も初めてだったので、時間がかかりましたし、実際に、横浜市の仮設住宅建設予定地になっている公園を自分たちで訪れました。スライドに使用している写真などは、自分たちで撮影したものです。
最も難しかったのは、関わる人が多いからこそ、どこまで自分たちが行ってよいのかなどが分からず、スケジュール管理に悩みました。改めて、情報を共有する事の大切さに気が付きましたし、良い勉強になりました。当日は、自分たちで調べた仮設住宅予定地の公園の様子などを横浜市の職員の方々にプレゼンテーションをしたのですが、学外の人前での発表は高校生以来だったので、緊張しました。
第1回や第3回では、別のゼミ生が主担当として準備などを行うため、自分たちが主担当ではない回にもみんなで協力して進めていました。今回の第2回で事前に実施したリハーサルでは、他のゼミ生に職員役を行ってもらい、ワークショップのロールプレイングを行い、当日はどのように動けばよいのか把握しました。
事前準備中はやることが多くて大変でしたが、終わってみたら自分の中で得たものが多いという事に気が付き、非常に達成感が強いです。普通に座学の授業をしているだけでは出来ない経験だったと思いますし、社会に出てから力になる経験だと思いました。

最後に

今回の連続ワークショップでは、災害に対する事前の備えが重要なのか、災害におけるシミュレーションを体験してもらう事で、避難のその後を考える良い機会になったのではないでしょうか。
また、運営に携わった学生たちも、現場に積極的に足を運び、深く携わることで多くの経験と学びを得たというのが印象的でした。ワークショップは全体を通じて、横浜市の職員と学生に良い「気づき」と「学び」を与えてくれる場となっていました。
来年度には、地域住民にも体験型研修を実施する予定で進めているとの事で、災害が起きてからではなく、起きる前に、地域と大学が一体となって、考えていく重要な機会になると思います。
【代表教員】
国際教養学部・都市社会文化研究科
准教授 石川 永子
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