生命ナノシステム科学研究科生命ナノシステム科学研究科
search

大学院生 伊藤嘉穂さんが、第48回日本比較内分泌学会大会で優秀ポスター賞を受賞!

2024.10.16
  • TOPICS
  • 学生の活躍
生命ナノシステム科学研究科 博士前期課程2年(生命環境システム科学専攻)の伊藤 嘉穂さんが、8月29日(木)~9月1日(日)に函館市市民会館で開催された、「第48回日本比較内分泌学会大会及びシンポジウム」において、優秀ポスター発表賞を受賞しました。
伊藤嘉穂さん
受賞者
生命ナノシステム科学研究科
博士前期課程2年(生命環境システム科学専攻)

伊藤いとう 嘉穂  かほ さん


指導教員
生命ナノシステム科学研究科
(生命環境システム科学専攻)
佐藤 友美 教授(内分泌学)

受賞内容
「第48回日本比較内分泌学会大会及び シンポジウム」
優秀ポスター発表賞

発表題目
新生仔期マウス卵巣へのアンドロゲン曝露による多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS)様症状誘導機構におけるRUNX転写因子の関与
今回の発表内容について伊藤さんに解説していただきました。
多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) は、女性不妊の最も多い原因であり、主な症状に無排卵、アンドロゲン過剰症、シスト状の 濾胞ろほう の多発があります。通常、卵巣には卵母細胞を袋状に取り囲む濾胞という構造がありますが、シスト状の濾胞では、濾胞内の液腔が拡張し、卵母細胞を取り囲む顆粒膜細胞の層が薄く滑らかになっています。PCOSの病因は未だ不明であるため、当研究室では、出生直後のマウスにプロピオン酸テストステロン (TP) を投与することでPCOSモデルマウスを作製し、研究を行っています。私は、このモデルマウスを用いて、新生仔期のTP処理によるPCOS様症状の誘導機構を明らかにすることを目的として研究を行いました。まず、当研究室やすでに報告されている網羅的遺伝子発現解析の結果から、新生仔期のTPの下流でPCOS様症状を誘導し得る候補転写因子としてRUNX family*1を同定しました。そこで、TPもしくはRUNX inhibitor*2を卵巣に添加して器官培養したところ、TP添加の時と同様に、RUNX inhibitorを添加するだけでもシスト状の濾胞の前段階と考えられるUnhealthy follicle*3が誘導されました。さらに、TPもしくはRUNX inhibitorによって、顆粒膜細胞の細胞増殖が抑制され、Unhealthy follicle内の顆粒膜細胞のアポトーシスも抑制されていました。したがって、新生仔期のTPはRUNXの抑制を介してPCOS様症状を誘導している可能性が示されました。
伊藤 嘉穂さんのコメント
このたびは、名誉ある賞に選出いただき、大変光栄に存じます。また、研究を指導していただいた佐藤友美先生、中島忠章先生、および内分泌学研究室の皆さまに、この場をお借りして心より厚く御礼申し上げます。本学会で得た経験を糧に、より一層研究活動に励んでまいります。
指導教員 佐藤 友美教授からのコメント
優秀ポスター発表賞の受賞おめでとうございます。伊藤さんは、卒業研究からPCOSのテーマに取り組んでおり、今回、アンドロゲン作用の下流の転写因子の候補を見出しました。新生仔期のマウス卵巣は非常に小さく、サンプル集めなどかなり大変でしたが、地道に取り組んでよく頑張ったと思います。また、先行研究をしっかり勉強してきちんと質疑応答ができていたことも、今回の受賞につながったと思います。これから一連の成果を修士論文としてまとめることになりますが、最後まで充実した研究生活となることを願っています。
用語説明
*1 RUNX family:RUNTドメインを介して標的遺伝子に結合し転写を調節する転写因子。哺乳類ではRUNX1、 RUNX2、 RUNX3が存在する。
*2 RUNX inhibitor:RUNTドメインに結合することで、RUNXの標的遺伝子の転写を調節する機能を抑制する阻害剤。
*3 Unhealthy follicle:PCOSの症状であるシスト状の濾胞と同様に大きな液腔と異常な顆粒膜細胞層を持つ濾胞。シスト状濾胞の前段階と考えられる。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加