原発性肺癌
肺がん手術においては安全性はもとより、低侵襲性(傷を小さくする事や残す肺を多くする事)と根治性(がんを治すこと)の両立が最重要であり、当院ではそれらを高い水準で確保できるよう患者さんごとに最も適切な手術法を患者さん本人と相談のうえで選択・提供しています。
いずれも通常は手術前日に入院、術後4~7日間で退院(気管支形成手術は術後7~14日)となります。
1.胸腔鏡下手術


進行期を除いた大半の肺がん患者さんに対して、当院では胸腔鏡下手術を行っております。
最大約3㎝の傷で行い筋肉や肋骨を切らないため術後の痛みが軽く速やかな日常生活への復帰が可能です(図)。また、胸腔鏡のメリットは傷だけではなく、拡大視により血管やリンパ節の剥離層が精密に把握できることも挙げられます。
2.ロボット支援下手術
肺癌に対するロボット支援下手術は2019年8月から保険診療として施行できるようになりました。胸腔鏡と同様の拡大視に加え、3D画像および多関節機能という独自のメリットがあり、複雑で細やかな手術手技が可能でとくにリンパ節郭清の精度向上が期待されています。一方でロボット搬入や器械の出し入れの時間があるため胸腔鏡手術より若干、手術時間が長くなるデメリットもあります。進行がんでは実施困難なこともありますが、ご希望の方は外来受診時にお申し出ください。
3.肺を極力温存する『積極的区域切除』
低侵襲とは傷のみの問題ではなく、病状に応じて適切に肺を温存することも重要です。近年の日本発の国際研究で早期肺癌に対する積極的区域切除はこれまでの標準手術である肺葉切除と遜色ない治療成績が示されました。このデータに基づき、当院では多くの区域切除を上述の胸腔鏡下およびロボット支援下手術で行っております。
4.局所進行癌に対する気管支形成術、血管形成術
局所進行肺癌、とくに肺門部癌に対しては他院では手術不能もしくは片肺全摘が必要とされることが多いですが、当院では腫瘍に巻き込まれていない部分の肺をつなぎ合わせることで極力、肺を温存する気管支形成術、血管形成術を積極的に行っております。さらにこれらの癌に対しては根治性を高めるため、最新のデータに基づいた術前・術後の化学免疫療法も行なっております。他院で手術困難と言われた方、また肺全摘が必要と言われた方も大学病院の高度な技術を生かすことで肺を極力温存した根治手術が可能かもしれませんのでご相談ください。

