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【開催概要】市民講座「知っておきたい大動脈瘤の進行のしくみ~世界初の治療薬開発に向けて~」

2017.08.08
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「知っておきたい大動脈瘤の進行のしくみ~世界初の治療薬開発に向けて~」

平成29年6月26日(月)開催概要

講師 :横山詩子(横浜市立大学循環制御医学准教授)

今回は、「知っておきたい大動脈瘤の進行のしくみ~世界初の治療薬開発に向けて~」と題して、横浜市立大学 循環制御医学 横山 詩子准教授が講演を行いました。

講演では、まず大動脈瘤について、症状や危険因子、現在の治療法等の概要を説明しました。大動脈瘤は進行するまで自覚症状がないことが多く、破裂した場合には急激な腰痛や腹痛が現れ、死亡率が高くなってしまいます。治療方法については外科手術や投薬による血圧管理といったことが中心で、残念ながらまだ根本的な治療薬が開発されていません。
続いて、本学で行っている治療薬開発の研究内容を紹介しました。大動脈瘤にはプロスタグランディンEという、炎症を引き起こし、痛みを感じやすくするホルモンが多く発生します。しかし、プロスタグランディンEには胃の粘膜を保護する役目もあることから、全てを阻害すると悪影響があります。そこで着目したのは、ホルモンなどの物質の刺激を細胞に伝えて作用させる4つの受容体です。プロスタグランディンEの受容体を調べた結果、EP4という受容体が、大動脈瘤で弾性線維が破壊されている血管の壁に特に多く発生することが分かりました。現在、このEP4の作用を阻害する薬の研究、開発を進めています。この薬には、瘤が大きくなる前段階の血管において、炎症や破壊を予防する効果が期待されています。
薬の開発には、病気への効果と共に、薬を飲みすぎる、もしくは飲み忘れても問題が起こらないかどうかなど、副作用を合わせて確認する必要があります。こうした課題についても一つ一つ解決していきながら、いち早く臨床の場に薬を届けられるよう、引き続き研究を進めていきたいと締めくくりました。

質疑応答では、非常に多くの質問が寄せられました。受講者の方からは「病気になる過程や治療薬開発について詳しくお話が伺えて、大変勉強になりました」「私自身も瘤が見つかっており、経過観察中です。今回の研究成果が早く臨床に適用されることを期待しています」と感想をいただきました。
今後も当センターの研究成果情報を講座やWEBサイト、広報物等を通じて皆さまに公表していきますので
何卒よろしくお願いいたします。
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