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口の中の歯周病菌が大腸癌の発癌に関与 ~新たな治療法や予防法に繋がる可能性~

2018.06.28
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口の中の歯周病菌が大腸癌の発癌に関与

新たな治療法や予防法に繋がる可能性

~『GUT』に掲載 ~

公立大学法人横浜市立大学 学術院医学群 肝胆膵消化器病学 日暮琢磨診療講師は、共同研究グループメンバーの協同乳業株式会社 松本光晴主幹研究員らとともに、大腸癌患者の患部組織と唾液からFusobacterium nucleatum (F. nucleatum)を分離・解析した結果、4割以上の患者で癌組織と唾液に共通した菌株が存在していることを発見しました。この結果は、大腸癌の発癌過程への関与が報告されているこの腸内細菌が口腔内に由来すること、すなわち、口腔内のF. nucleatumが大腸癌に関与していることを強く示唆しています。
研究成果のポイント 

〇大腸癌患者の唾液と大腸癌組織で細菌F. nucleatumの共通の菌株を発見。大腸癌組織のF. nucleatumが口腔内に由来することが示された。
〇口腔内・腸内環境からの新たな大腸癌の治療法、予防法などに繋がる発見と考えられる。

背景

次世代型DNAシークエンサーの普及とともに、大腸癌の病態に関わる腸内細菌の研究が世界的に進められています。これに伴い2012年以降、F. nucleatumが大腸癌の病態や予後に悪影響を及ぼすという報告例が増え、非常に注目されています。しかし、従来F. nucleatumがヒト腸内から検出されることは少なく、大腸癌における本菌の由来(感染経路)は不明でした。

研究の概要と成果

本研究グループは、F. nucleatumが口腔内環境において優先菌種であることに着目し、口腔内F. nucleatumが大腸(癌)組織へ移行しているという仮説を立てました。
そこで、直近の抗生物質使用歴が無い等の条件で選抜された全14名の患者を対象に、内視鏡を用いて採取した大腸癌組織および唾液検体を、F. nucleatum選択培地を用いて分離し、計1,351分離菌を解析しました。その結果、患者8名(57%)において、大腸癌組織と唾液の両方からF. nucleatumが検出されました。次に、その8名の検体より分離されたF. nucleatumを対象に、AP-PCR法*1を用いて菌株*2 レベルで解析した結果、8名中6名の検体において、大腸癌組織と唾液の両方から同一菌株が検出されました。これは全被験者の43%、大腸癌からF. nucleatumが検出された患者母集団では75%に相当します。この結果は、大腸癌で高頻度に検出され、大腸癌悪化への関与が強く疑われるF. nucleatumが、口腔内に由来することを強く示唆しています。そしてこの発見は、大腸癌の新たな治療法、予防法、リスク評価などに繋がる可能性があると考えられます。

研究成果の意義と今後の展望

大腸癌は、国立がん研究センターのがん情報サービス「2018年のがん統計予測」の部位別がん罹患数予測で男女合計第1位、部位別がん死亡数予測で男女合計第2位と増加傾向で、対策が求められています。
F. nucleatumは、健常人でも多くの人が口腔内に保有している常在菌の一種で、歯周病の増悪化にも関与することが報告されています。本研究で、口腔内と大腸癌組織における本菌の菌株が一致したことにより、口腔内のF. nucleatumが大腸癌組織に移行/ 感染していることが示されました。但し、現時点では詳細な移行・感染ルートなど不明な点もあり、これらの解明は今後の検討課題です。
本研究で得られた知見は、口腔内や腸内の細菌を調べることによる大腸癌の簡便な診断法を開発できる可能性や、口腔内、腸内細菌を制御することにより大腸癌の治療や予防につながっていく可能性を示しています。
今後、本研究チームは、分子生物学的手法も取り入れて、より多くの大腸癌患者を対象に更なる研究を進めて行く予定です。

※本研究成果は、英国消化器病学会(British Society of Gastroenterology)の機関誌「Gut」に掲載されました。(2018年6月22日オンライン)。


用語解説

*1 AP-PCR法は、任意のプライマーを用いて鋳型DNAを増幅させることで、菌株レベルで増幅DNA(数とサイズ)に再現性高く差が出ることを利用して菌株を識別する方法。感染性病原菌の菌株特定などに広く利用されている。
*2 菌株とは同一種内の生物個体のことであり、ヒトの場合、各個人に該当する。菌株毎に特徴や能力に差が認められる。

掲載論文

Patients with colorectal cancer have identical strains of Fusobacterium nucleatum in their colorectal cancer and oral cavity
大腸癌患者は大腸癌組織および口腔内に同一菌株のFusobacterium nucleatumを保有する 
Yasuhiko Komiya, Yumi Shimomura, Takuma Higurashi, Yutaka Sugi, Jun Arimoto, Shotaro Umezawa, Shiori Uchiyama, Mitsuharu Matsumoto, Atsushi Nakajima
GUT 2018, doi: 10.1136/gutjnl-2018-316661
 

 

日暮診療講師の大腸癌予防に向けたこれまでの主な取り組み

 糖尿病治療薬メトホルミンで内視鏡治療後の大腸ポリープの再発を抑制することを世界で初めて報告
Metformin for chemoprevention of metachronous colorectal adenoma or polyps in post-polypectomy patients without diabetes: a multicentre double-blind, placebo-controlled, randomised phase 3 trial
Higurashi T, Hosono K, Takahashi H, Komiya Y, Umezawa S, Sakai E, Uchiyama T, Taniguchi L, Hata Y, Uchiyama S, Hattori A, Nagase H, Kessoku T, Arimoto J, Matsuhashi N, Inayama Y, Yamanaka S, Taguri M, Nakajima A
Lancet Oncol 2016; https://doi.org/10.1016/S1470-2045(15)00565-3

お問い合わせ先

(研究内容に関するお問合せ)
肝胆膵消化器病学 診療講師 日暮(ひぐらし)琢磨
TEL:045-787-2640
E-mail : takuma_h@yokohama-cu.ac.jp

(取材対応窓口、資料請求など)
研究企画・産学連携推進課長 渡邊 誠
TEL:045-787-2510 
E-Mail:kenki@yokohama-cu.ac.jp

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