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HOME > 教員からのメッセージ − At the Heart of YCU > 世界的に注目される病気の原因となるタンパク質を追究しています − 朴三用教授

世界的に注目される病気の原因となるタンパク質を追究しています − 朴三用教授

インフルエンザウイルスの核となるタンパク質の構造を解明

インフルエンザは皆さんご存知のとおり冬になると決まって流行する病気ですが、近年では鳥インフルエンザウイルスがヒトへと感染し大流行することが懸念されています。またインフルエンザウイルスは頻繁に変異するため、このように変異したウイルス(新型ウイルス)に対するワクチンや新薬の開発が世界中で積極的に行われています。

朴 三用 教授

インフルエンザウイルスの表面にはHAやNAと呼ばれる接着部位があります。これらの接着部位がヒトの細胞に作用してウイルスは細胞内に侵入しウイルスを増殖させます。増殖したウイルスは細胞外に出て他の細胞内に侵入増殖を繰り返し、爆発的に増殖していきます。

インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、ウイルスの複製(増殖)に中心的な役割を担っているため、新規薬剤ターゲットとして注目されてきました。しかし、その構造がわからなかったため、薬を開発しようとしてもできなかったのです。

朴 三用(パク・サンヨウ)
国際総合科学群 教授
(学部)国際総合科学部理学系生命医科学コース
(大学院)生命ナノシステム科学研究科生体超分子システム科学専攻
RNAポリメラーゼの立体構造を世界で初めて解明。その研究成果は、英国科学誌「Nature」や欧州分子生物学機関誌「EMBO J」のオンライン版にも掲載された。
研究者情報 

RNAポリメラーゼの構造

現在、抗インフルエンザウイルス薬のタミフルやリレンザなどは、ウイルスの表面タンパク質NAの作用を阻害する薬です。つまりウイルスを殺す薬ではなく増殖を抑制する薬(ウイルスが細胞外に出られなくなるようにする薬)で、ウイルスに感染後48時間以内に薬を服用しないと効果が少なくなるのは、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に出て他の細胞に広がった後ではタミフルでは手遅れになるからなのです。

そこで私たちはどの型のウイルスでも効果がある新薬開発に向けて、いろいろな型のウイルス間で相同性が非常に高い“RNAポリメラーゼ”に着目しました。RNAポリメラーゼはウイルスの中のタンパク質の一種で、いわば自分の中のタンパク質を作る工場のような働きを持っているので、RNAポリメラーゼの働きを抑制できればインフルエンザウイルスの増殖を止めることが可能になると予想されます。

私たちの研究室では、2011年に世界で初めてRNAポリメラーゼの立体構造を解明することができました。4年ほどかかりましたが、私たちはチームワークを大切にしながら、粘り強く一つひとつの可能性を追究してきた成果だと思っています。これで、RNAポリメラーゼの構造を基に機能を阻害する薬ができる可能性がひろがりました。また、インフルエンザ以外にも、メタボリック症候群や糖尿病、また長生きを促すタンパク質について、現在研究中です。これからも、基礎研究から製薬メーカーへ刺激を与え、創薬のために有意義な材料を提供していこうと思います。

学生として大切なことは、研究の結果よりも過程

研究室で学生と

鶴見キャンパスには、市大出身の学生だけでなく他大学出身や、社会人として経験がある人などさまざまなタイプの学生が入ってきます。とても自由な発想を持っている学生が多いので、打ち解けやすいですね。鶴見キャンパスの特徴として、のびのびと研究ができる体制が整っているので、博士課程まで5年間を終えると、非常に研究の能力を持つ学生が出てくるのです。

そうした学生をさらに伸ばすために私が心がけているのは、毎日接することです。常に声をかけてコミュニケーションを図ったり、教授室のドアを常にオープンにしたりしています。何でもない雑談から始めて、研究のディスカッションまで、とにかく学生と話し合うことを心がけていますね。研究をしていると、当然成功する課題もあり、失敗する課題も出てきます。しかし、大切なのは結果ではなく、その過程なのです。学生が研究しているテーマについては、その大きさや小ささは、重要なことではありません。学生には、その過程をしっかりと学び、一人の研究者として独立できるような、経験と知識を身につけてほしいと思っています。実は私も学生に対してよく怒りますが、その後は何事もなかったように接しています。学生もサイエンティストの卵なので、礼儀をわきまえながら指導していきたいですね。

些細なことではくじけない、心の広さをもった研究者を育てたい

朴 三用 教授

2012年度から、国際総合科学部に生命医科学コースが新設され、市大の学部生のクラスを持つのですが、非常に楽しみですね。金沢八景キャンパスの先生たちによる、非常に高いレベルの教育を受けてくるので、基礎はほとんどできている学生が多いと思います。もっと伸び伸びとした雰囲気の中で、能力を磨いていけるのではないでしょうか。それに、最近の学生は非常に賢く、意識を持って研究に取り組んでくれる人も多いですし。ただひとつ、精神的に弱い人も多いので、メンタリティの面を強くさせていきたいと思っています。

研究はマラソンと一緒で、長い期間かかるものです。長い目で見ながら、毎日こつこつとやっていかなければなりません。だからこそ、学生は些細な失敗ではくじけない心の広さが重要になってきます。ほとんどの人は、勉強はやればできるようになります。そして、時間をかければ良い研究ができると思います。しかし、ある一定の線を越えるためには、心の視野を広げ、精神的にも肉体的にも、強くなければいけません。そういった意味では、私たちの研究室には、個性をちゃんと持っている人が多いですね。普通の人がもてないポジティブ思考が、研究には大切なのです。10個やって1個しか成功しないけど、その1個を喜べる、そういう研究者へ成長していってほしいと思います。

(2012.4.23更新)

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