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HOME > 教員からのメッセージ − At the Heart of YCU > 地に足のついた環境政策は、「現場」を知ることから生まれます - 青 正澄教授

地に足のついた環境政策は、「現場」を知ることから生まれます - 青 正澄教授

横浜・川崎の経験を、世界で活かすための調査、研究を遂行

かつて横浜・川崎エリアは日本有数の工業地帯として、またその負の面としての「公害の街」という呼び名でも知られていました。それが今では、横浜は「環境モデル都市」、川崎は「エコタウン(ゼロエミッション工業団地)」として、それぞれ認定されています。

私の研究室では、この変化、再生の中心的役割を果たしている両地域の企業を訪問し、廃棄物をどう処理しているのか、どこに捨て、どう再利用しているのかなど、環境に配慮した活動や、先進的な環境技術(CLOSE UP 1)を調査しています。企業にとっても、学生が見学に来ることで、より責任感を持って業務に取り組むことができる。そのためのプレッシャーをかけるというねらいもあります。

青 正澄(あお・まさずみ)
国際総合科学群 教授 / グローバル都市協力研究センター長
(学部)国際総合科学部国際都市学系地域政策コース 
(大学院)都市社会文化研究科 
研究者情報   授業シラバス 
アカデミックコンソーシアムでは、環境ユニットを担当。海外フィールドワークでは、毎年スウェーデンに学生を引率し実習を行う。

CLOSE UP 1

日本を、世界をリードする、川崎・横浜エリアの環境技術

ペットボトルから新たなペットボトルを作る技術を持つ企業、廃木材の品質によってリサイクルの方法を変えることで、資源を有効活用している企業、下水処理施設からの汚水を処理すると同時にメタンガスを燃料として取り出し、焼却する廃棄物を最小限にする事業を行う横浜市と企業の連携施設など、横浜・川崎エリアは企業・行政が高い環境技術を持っています。地域の中に多くのリサイクル関連の施設が隣接しているからこそ可能なこと。日本はもちろん、世界における明日の環境配慮型都市の姿がここにあるとも言えます。

企業研究から、途上国の環境支援へ

横浜・川崎の企業調査・研究で得た成果を、現在、環境破壊が進んでいるアジアなどの発展途上国に対する技術支援、国際協力へと活かすための検討も行っています。マイナスをプラスに改善した貴重な経験は、必ず他の地域の環境問題解決の糸口にもなるはずです。

ただ現実問題として、途上国では、環境への政策があっても、行政のゆがみなどで実行されていないケースも多い。そんな状況を把握する意味でも、アジアをはじめとした現地へ足を運び、失敗を含む経験を伝え、現場の人と話し合う。環境問題にとって大事なのは、できるだけ多くの現場に入り、自分の目で、耳で、その実情を感じ取ることだと思います。

海外でのフィールドワークを通して、環境問題を肌で感じる

環境問題に取り組むきっかけは、スウェーデンへの留学

私が環境問題に関心を持ったのは、大学時代のスウェーデンへの留学がきっかけです。スウェーデンは永世中立国で戦争をやっていないこともあり、築300年にもなる家が残っています。そんな背景もあってか、生活環境と自然環境はつながっています。いいものをどう維持していくのかが大事という考えを持っています。そうした思想の違いにカルチャーショックを覚えました。

また現地の学生の行動にも衝撃を受けました。授業で1〜2週間、寝袋を持って森の中で生活するというプログラムがありますが、それが終わって森の中から出てきた女子学生が、リュックの横にビニール袋をぶら下げていたので「それは何?」と尋ねると、「自分の排泄物」だと言うのです。「普段食べている物には化学物質が含まれているので、自然には還らない。森には捨てられない」と、若い20代の女性が平気な顔でそんな行動を取ることが想像もできませんでした。環境と向き合い、共存してゆくということの真の意味を教えられました。

CLOSE UP 2

出会いと発見の連続、海外フィールドワーク

青研究室では、今年2月13日〜24日の日程で、学生18名がスウェーデンとラトビアを訪問しました。174か国もの人種で構成される超多文化社会「マルメ市」では、先天性の障害を持った子どもの自立を支援する施設で、人間が幸福に生きる権利の確立に向けた取り組みを学びました。人種の垣根を超えたエコシティの計画では、どのようにして参加型の市民社会を実現しようとしているのかを目の当たりにしました。

また、ストックホルム市内にあるスウェーデン県議会を訪問した際には、スウェーデンが目指す低炭素化社会構築の先進事例を学ぶと共に、横浜市大の学生によるプレゼンテーションと意見交換も行いました。

あらたな世界との出会いに、学生の好奇心、モチベーションがさらに高まりました。

わかった気になる、でなく、本質にふれる環境教育を

自らの体験を踏まえ、私の研究室では実地教育を重視しています。毎年アカデミックコンソーシアムを開催するアジアの都市を訪問したり、厳冬の時期を選び、スウェーデンや東欧を訪れ(CLOSE UP 2)、大学や福祉施設、行政機関などで研修や講義を受ける他、現地の自然学校に入学します。マイナス20℃の極寒の中、アートの作成やスポーツ、野外で調理などを体験します。また勇気を出して凍った湖に飛び込む訓練に挑む学生もいるなど、まさに五感で大自然の空気や、そこで暮らす人々の生活、考え方や生き方を感じ取ることができるのです。

観光ツーリズムとしての環境ツアーの体験だけでなく、現地へ行って実際の生活を体感してみることで、初めて見えてくるものがあるはずです。このような海外研修は、私のゼミだけが行っているのではありません。横浜市大では全学を通して海外へ出る学生が右肩上がりに増えています。大学は施設よりも学生に経験を積ませることに資金をつぎ込んでいます。「グローバル人材を育てる」という意識では全国の大学の中でも本学はトップランナーだと思います。学生には幅広い探究心を持って、世界を、そして事実を見極める目を養ってほしいですね。

写真は、今年アカデミックコンソーシアム総会が行われたタイ・バンコクで研修を受けている青研究室の学生たち

「環境」という共通のキーワードから、真のグロ−バリズムを育む

日本の課題は「タコツボ」からの脱出

日本は島国なので、地続きのアジアやヨーロッパのように、「国際河川をどう守ればいいのか」といったことに意識が及ばない面があります。

またアジアにおいては日本の事例が唯一の先進国の事例であり、環境問題に関しても「日本は支援者であって、技術や資金を提供する」という上から目線になりがちです。それはいわば、共通の根を持たない「タコツボ型」の発想といえます。国家間の相互理解を深めるには、タコツボから脱する必要があります。

そのひとつのアプローチとしても、多彩な国が集まっているヨーロッパ、中でも厳しい気候条件の中、環境への意識と連帯感を高めてきた北欧諸国の人々の経験から学ぶことは多いと思います。

アカデミックなネットワークで、世界を変えたい、つなげたい

現在の私の活動目標として、これまでの経験や知識を、アカデミックコンソーシアムのメンバー間で共有する「ナレッジ・ソサエティー」の構想があり、そのための共通のテキストの制作を進めています。環境問題は、スポーツや音楽と同じ、国境のない世界共通のものです。北欧・バルト海諸国では、外交が断絶した冷戦時代にも、環境問題は議論されていました。日本と中国や北朝鮮との今後の関係構築のヒントも、こんなところにあるのかもしれません。


環境という同じゴールを設定することで、政治、経済を飛び越えての研究が進められる。我々研究者が政策を協同推進していくことで、最終的には各国間の政治的な合意形成に至る。そのようなサポートができたらと願っています。

青研究室では、ベトナムからの留学生も受け入れ、国際的な人材育成に取り組んでいる。写真は、ベトナム国家大学ホーチミン校からの教育勲章受賞式(2012年10月31日)。

(2012.11.26更新)

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