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【開催報告】COC事業報告会—ゲストトーク、教員による報告、教員・学生とのディスカッション—

2015.10.30
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【開催報告】COC事業報告会—ゲストトーク、教員による報告、教員・学生とのディスカッション—

平成27年10月30日(金) (浜大祭1日目)に金沢八景キャンパスカメリアホールにて、大学COC事業の報告会を実施しました。大学COC事業とは文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」のことで、大学が文字通り地域の知の拠点として、自治体とともに人材育成に取り組む事業を推進するものです。横浜市立大学では、平成25年度に採択され、横浜市とともに進める「環境未来都市構想推進を目的とした人材育成開発・拠点づくり事業」に取り組んでいます。
報告会は、理事長のあいさつ、事業説明につづき、3部構成で、教員と共同研究先からの取り組みの報告、ゲストを招いての大学と地域・地方創生について語るトークセッション、地域貢献活動に取り組む学生・教員のパネルディスカッションを行い、一般の方、学生、教職員など約70名の参加をいただきました。
第1部 教員地域貢献活動支援事業「ブルーカーボン横浜プラットフォーム」

山下公園前海域で「海中デザイン」に取り組む

【第1部】教員地域貢献活動支援事業報告「横浜の海から環境を考える」

第1部では、「ブルーカーボン横浜プラットフォーム」に取り組む国際総合科学群教授大関泰裕、石井彰客員研究員、共同研究先である八千代エンジニヤリング株式会社の石井重久氏が、スライドや実際の海中の撮影映像を使って、その内容について解説しました。
第1部登壇者
ブルーカーボンは、地球温暖化の原因であるCO2に含まれる炭素を海の生物に吸収させ、削減させる活動です。この研究では、山下公園前海域を対象とした測量調査、海中の生物の調査や映像化などを通して、CO2固定に役立つ生物が生息し、浄化能力の高いポテンシャルを持つことを確認しており、八千代エンジニヤリング株式会社の海域環境保全やきれいな海づくりの技術を活かして、高性能な海の設計「海中デザイン」に取り組んでいると報告がありました。
八千代エンジニヤリング株式会社は日本有数の総合建設コンサルティング会社ですが、「国や自治体、企業などから調査等を請け負って実施するため、その成果を社会で共有し、普及・発展させることが難しい。大学と共同研究を行うことにより、情報を公開し、さらなる協働先が見つかったり、多くの改善につながったりと可能性が広がり、また、評価手法等が確立されていく」と語られました。
第2部ゲストトークセッション

大学は地域と企業・行政・NPOなどを結ぶ役割を持っている—外から見た大学と地域の関わり

【第2部】ゲストトークセッション「わたしたちが地域で目指すもの」

第2部は、ニュース情報番組等でご活躍されているTBS解説委員の龍崎孝氏、NPO法人KANATAN副理事長で逗子市議会議員の長島有里氏、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ代表理事でヨコハマ経済新聞編集長の杉浦裕樹氏をゲストに迎え、国際総合科学部教授鈴木伸治を進行役に「今、大学に求められているもの」をテーマにトークセッションが行われました。
龍崎孝氏

ご自身の体験と大学と地域

龍崎氏からは、東日本大震災後に新設されたJNN三陸臨時支局の支局長として、気仙沼で大学生と一緒に失われたまちを復興させようという取組を報道してきたご体験から、大学と地域の関わりについてお話いただきました。
三陸にはほとんど大学がないため、いろいろな大学が調査・研究・ヒアリングなどで入ってきたが、地域の人には「誰のための活動なのか」という疑問があったとのことです。
また、地域の未来をどう作っていくかを見据えた持続性が大事で、高田の人たちは、大学には高齢者が生きていける社会づくりや介護をどう受けていけるか、など自分たちで実験をしてほしいという要望があったとのこと。地域の声は直接、企業には届かないため、地域から生まれたアイデアと企業をつなぐことに大学の意味があるとお話しされました。
長島氏からは、ご自身のNPO法人KANATANの活動-児童養護施設の子どもたちへの就学・就労支援-から、世代間同居について、ご紹介いただきました。18歳になり施設を出なければならない子どもたちは就労するにあたって、住居が大きな問題となり、NPO法人KANATANでは、「独居老人と若者が暮らすシェアハウス」提供の取組を進めているというお話でした。
また、多くの大学生がその空き家を見つけるプロジェクトや児童養護施設での家庭教師のボランティアに参加しているとのことで、毎年実施しているシニアと学生のウィンドサーフィン大会や鎌倉のIT企業や市民が行っているカマコンバレーの取組、SNSなど幅広いネットワークが多くの大学生ボランティアを集めるきっかけになっているとのことです。
杉浦裕樹氏
杉浦氏からは、市民一人ひとりが地域のコトを「自分たちゴト」として捉え、地域の活動に、その人なりの関わり方で参加・参画するためのプラットフォームづくりである、横浜コミュニティデザイン・ラボの取組のご紹介があり、特に3.11以降、地域という意識が強くなっていることを受け、いろいろな地域で活動する団体のネットワークができているというお話がありました。
横浜コミュニティデザイン・ラボ運営するさくらWORKSには、横浜市立大学COC事業の関内拠点がありますが、ここを拠点として教員の地域貢献活動が繰り広げられています。
ここ数年、ヨコハマ経済新聞のニュースを見ても、地域に大学が入ってきているという実感があるとのことでした。
長島有里氏

地方創生の議論から考える大学と地域

「逗子も超高齢社会ですが、自治体は資金もなく、行政だけでは問題解決は無理。自分たちで解決策を見つけるしかないが、ぜひ地域の大学生や大学に協力をしてほしい。大学生の行動力や問題解決力に期待している。」と長島氏がお話しになれば、杉浦氏からは「若者への温かいまなざしがあるので、学生は地域へもアクセスしやすい。地域資源としてのヒューマンリソースを活かしてほしいし、活動の内容や方向性をテキストにまとめたり、示す役割として大学は必要で高いニーズがあり、活躍の舞台は多い。」とお話しされました。
加えて龍崎氏からは、「地域の人に理解されるニュースを伝えるには、その歴史など人文系の知識が非常に重要。横浜市大の図書館には、全国各地の自治体や教育委員会から集めた地方史などのコレクションがあり、横浜市だけでなく、他の地域にも貢献できるので発信してほしい。大学には、多種多様の専門を持つ教員と多様な考え方を持つ学生がいて、学問の蓄積も多い。神奈川県内で地域を考える時、一番ニーズに応えられる大学だと思う。もっと誇りをもってよいと思う。」とお言葉をいただきました。
第3部パネルディスカッション

教員も学生も地域に出ていくことで新たな可能性が得られる

【第3部】パネルディスカッション「わたしたちが地域で目指すもの」

第3部は、日頃から地域貢献活動に携わっている教員と学生のパネルディスカッションを第2部にご登壇いただいた杉浦氏をファシリテーターにパネルディスカッションを繰り広げました。
第3部発表のようす
横浜市立大学COC事業では、研究によって地域課題を解決することを推進するため、「教員地域貢献活動支援事業」を行っています。
国際総合科学群影山摩子弥教授(国際総合科学部国際都市学系地域政策コース)から「横浜の地域課題からオープンイノベーションを生み出す企業ネットワークの構築とCSR活動を伝える新たなコミュニケーション手法の研究」、医学群武部貴則准教授(医学部臓器再生医学)から「地域の健康・医療問題解決に向けたメディカルデザインハブの構築」、国際総合科学群金亜伊准教授(国際総合科学部李学系物質科学コース)から「MEMS加速度センサーを用いた市民参加型地震波計測ネットワークの構築:横浜市における防災・教育活動に向けて」という3つの教員による地域貢献活動のご紹介を行いました。
学生のパネラーたち
教員地域貢献活動の紹介に続いて、学生が取り組む地域貢献活動支援事業からYDCの藤江華子さんから「医学生・看護学生が創る『医療』教育」、中西ゼミの清水俊作さんから「まちづくりデザインゲーム並木版の制作・活用を通じた地域活性化」、アクティブ・ラーニング推進プログラムから芦澤ゼミの有泉歩美さんから「起業体験プログラム@PIAフェスタ」の3つの取組を発表してもらいました。
プレゼンテーションの後、学生から
「私たちが訪問授業を行うと小中学生が非常に喜んでくれて、たぶん医師や看護師の方より身近に感じて積極的に意見を出してくれることにびっくりしました。また、訪問授業実施にあたって校長先生に直接交渉しているので、人事異動によって続けていくことが難しいといった苦労もあります。」(YDC)
「地域住民の会議に参加させてもらって、直接意見をいただけたり、励まされたりすることがよかったです。」(中西ゼミ)
「地方から来た学生が多く、地域貢献・地域活性化という実感がなかったが、活動していく中で、金沢区で頑張っているかっこいい大人の方たちの姿を見て、金沢区を好きになりましたし、すでに来年の活動のイメージができてきています。」(芦澤ゼミ)
といった活動への感想が述べられました。
教員のパネラーたち
教員からは、
「国のプロジェクトなどで研究者目線でこういうシステムが良いとローコストのものを作ってもコミュニティに溶け込まない。地域と密着している大学がよいと思って、このCOC事業の地域とのプロジェクトでやってみたら、市民に賛同をいただいて、今開発をしてもらっているのは市の技術者の方である。理系の学生も研究室だけでなく、市民と触れ合うことで新しいことができるんじゃないか、と思っている。」(金准教授)
「学生へのメッセージとして、私が非常に大事にしているラテラルシンキングという考え方を伝えたい。違う視点を入れることが大事ということだが、例えば、YDCの医療教育の教材開発をする時に災害救急を考えて地震計を入れていく、あるいは教材にゲームの理論を入れていく、教材開発で起業する、起業するときにはクラウドファンディングを使うとか、隣人の考え方を入れていことで、一つぐらい成功するかもしれない。これは東大より横浜市大が強いと考えている。」(武部准教授)
「地域を活性化する仕組みを地域に作ることを目指したい。行政がお金を使ってするのではなく、地域が作る。そのために大事なのは人。それを生み出すのが大学の役割だと思っている。学生の皆さんに伝えたいことは、皆さんが行っている地域での活動は今しかできない。地域に出ていくと、自分で悩みながらソリューションを見つけ出していく。非常に大きな力になる。また今日のようなプレゼンテーションで自分を客観視することで、仕事ができる人になる。今後も続けていただきたいし、ぜひ回りを巻き込んで欲しい」(影山教授)
と語られました。
進行役でもある杉浦氏からは「地域は多様でいろいろなことがある。横浜市立大学の地域の人材を作り、拠点を作る事業もあと2年。横浜の地域資源がうまくマネジメントされていくためには、横浜市立大学が地域にできることがたくさんあるな、一緒にやっていけたらいいなと思いました。」とお話しいただきました。
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