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横浜市立大学発認定ベンチャーCROSS SYNCが、NIKKEI THE PITCH GROWTH 2024-2025のグランプリを受賞!

2025.03.17
  • TOPICS
  • 医療
  • 病院

—遠隔ICUから始める “ICU Anywhere” の実現—

横浜市立大学発認定ベンチャー*1企業の株式会社CROSS SYNC(以下、CROSS SYNC)が、2025年3月1日に開催されたNIKKEI THE PITCH GROWTH 2024-2025決勝大会のファイナリストとして最終ピッチ*2を行い、グランプリを受賞しました。

NIKKEI THE PITCH GROWTHは、全国のスタートアップ・アトツギベンチャーを対象にしたピッチコンテストの全国大会です。全国8ブロックの地方予選に106社が参加し、各ブロックにおいて高評価を得た22社が決勝大会に進み、最終ピッチを行いました。CROSS SYNCは関東ブロックから決勝大会に進み、代表取締役で横浜市立大学附属病院集中治療部 部長の髙木俊介 准教授が、「遠隔ICU*3から始める “ICU Anywhere” の実現」について4分間のピッチを行いました。

横浜市立大学医学部を卒業後、医師として、CROSS SYNCの創業者としてマルチに活躍している髙木准教授のNIKKEI THE PITCH GROWTH 2024-2025決勝大会でのピッチと、グランプリ受賞のコメントを紹介します。
創業の原点
髙木准教授は、横浜市立大学医学部を卒業し、研修医時代に経験した患者の容態急変・死亡という出来事をきっかけに、集中治療の道を志しました。15年間現場で経験を積む中で、防ぎ得たはずの死が後を絶たない現状を目の当たりにし、「テクノロジーでこの状況を変えたい」という強い思いからCROSS SYNCを創業しました。

医療現場の課題とCROSS SYNCのソリューション
ICU(Intensive Care Unit、集中治療室)では、患者の容態急変時に一定の異常兆候が見られるものの、実際にはその多くが見過ごされているという現状があります。その背景には、集中治療専門医の不足や、紙での申し送りなどのアナログな情報共有によるインシデントが多数発生している課題が存在します。
そこで、複数の医療施設の患者情報を集約し、大学病院等の専門医と連携することで、遠隔での診療支援を可能にする遠隔ICUシステム*3を開発しました。これにより、どこからでも患者の情報をモニタリングすることができ、専門医の不足を補い、質の高い医療を必要な場所へ届けることができるようになりました。

横浜モデルから全国、そしてグローバルへ
CROSS SYNCは、横浜市立大学を中心に複数の施設と連携し、「横浜モデル」と名付けた遠隔ICUシステムを確立しました。この「横浜モデル」をベースに、全国各地の医療機関へ展開を進めています。さらに、患者さんの重症度を自動的にスコアリングする仕組みを開発し、さらなるモニタリングの強化を図っています。ベトナムやフィリピンなど海外への展開も予定しており、グローバルな医療課題の解決にも貢献することを目指しています。
図 横浜市立大学附属病院を核にした遠隔ICU連携病院群(横浜モデル)
※CROSS SYNC提供
ビジネスモデルと今後の展望
2024年6月の診療報酬制度の改定により、遠隔ICUによるモニタリングを実施した場合に、医療機関が診療報酬を算定できるようになりました。そのことが追い風となり、多くの医療テックベンチャーがマネタイズに苦労する中、CROSS SYNCは安定した収益モデルを確立することができています。
ICUで培った技術を一般病床や在宅医療、災害医療などへ展開することで、さらなる事業拡大を目指します。そのためにも今後、IPO(Initial Public Offering、株式公開)によって資金調達を加速させ、医療人材の不足を解消するとともに、海外展開や新規事業への投資を強化したいと考えています。

髙木俊介准教授に受賞のコメント をいただきました。
5年前の創業時にはそんなこと難しい、無理だ、という声もあった中で、仲間と一緒に少しでも今の医療をよくしたいという思いでこれまで続けてきました。やっと今、医療が少しずつ変わるかもしれない、というところまで来ています。また、これまで500例あまりの患者さんやご家族の皆さまが、未来の人のためになるならと画像やデータの提供に同意をしていただきました。素晴らしい仲間と、患者さん、ご家族の皆様に感謝しています。
「医療の今を変える ICU Anywhere」をビジョンとして事業を進め、ICUから在宅医療まで、患者と家族が共に医療データを活用し、治療に参加できるような世界の実現を目指していきます。
起業を考えている学生や研究者の皆さん、研究成果を社会に実装していくことには幾つものハードルがありますが、決して不可能ではありません。一歩踏み出し、チャレンジしていれば共感してくれる方が現れて事業を助けてくれます。起業や事業化を悩んでいる学生や研究者の方々は是非、横浜市立大学には挑戦を後押しする土壌がありますので、果敢にチャレンジして欲しいと思います。
用語説明
*1 横浜市立大学発認定ベンチャー:研究者が自らの研究成果に基づく大学発スタートアップを創出できるように「横浜市立大学発認定ベンチャー」の称号を付与し、大学の施設利用や、知的財産権等の使用に関する優遇措置などの支援をしている。
横浜市立大学 大学発スタートアップ創出支援について(研究ポータルサイト)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/collaboration/univ_venture.html

*2 ピッチ:投資家や政府などに対して自社の商品やサービスを短時間で紹介したり、コンテストなどのイベントで起業家が投資家などの審査員に対して自らの事業計画をプレゼンテーションしたりすること。

*3 遠隔ICU:複数の病院の集中治療室の医療情報をネットワーク通信でつなぎ、中心となる病院に設置する「支援センター」から集中治療専門の医師等が患者さんをモニタリングし、遠隔で現場の医師等に助言する。
複数の医療機関を支援する遠隔ICUシステムについて(横浜市立大学附属病院のウェブサイト)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/effort/section/approach/2020Tele-ICU.html
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