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データサイエンス研究科の金子惇准教授がDST Evidence Award 2024で優秀賞受賞!

2024.11.29
  • TOPICS
  • 医療
  • 地域
  • 研究
  • データサイエンス学部

—へき地医療の課題解決へ、新たな指標が切り拓く未来—

横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇准教授が、11月19日(火)に開催された一般社団法人DSTが主催する「DST Evidence Award 2024」において優秀賞を受賞しました。
受賞のトロフィーと共に記念撮影
DST Evidence Awardは、データとエビデンスに基づいた社会変革を目指す人々を称え合う場として企画され、今回が第1回目の開催となります。エビデンスを社会実装し課題解決に寄与した事例、課題解決に繋がる社会に実装し得る研究成果、または研究のアイデアを、3つの部門に分けて広く募集されました。

金子准教授は、「へき地医療の現場からのエビデンス発信と持続可能な医療提供体制の構築:離島診療所のPractice Based Research Networkから全国のへき地医療研究ネットワークへ」というプロジェクトで応募し、社会保障領域の課題解決に繋がり得る研究で、企業や自治体等の取り組みに実装できる可能性がある研究を対象としたエビデンス部門のファイナリストに選出されました。金子准教授は、日本の医療における深刻な課題であるへき地*1の医療に着目し、「へき地度」を表す尺度Rurality Index for Japan (RIJ)という指標を開発しました。この指標が、へき地医療の現状を可視化し、より質の高い医療提供へとつながる可能性を秘めていることが評価されました。
受賞者
データサイエンス研究科 ヘルスデータサイエンス専攻
金子 惇准教授(専門:家庭医療学、プライマリケア)

受賞内容
DST Evidence Award 2024
優秀賞(エビデンス部門)
今回の発表内容について金子准教授に解説していただきました。
日本の医療は、高齢化が進み医療需要が増加するなか、特にへき地においては医療従事者の不足が深刻な問題となっています。この問題に対して、「へき地」とは何か、どのように定義し、測定するのか、という根本的な問いを投げかけました。

これまでの研究では、医療関連の研究においても利用可能なへき地の定義が医療へのアクセスを考慮していなかったり、へき地かへき地でないかという2段階になってしまい実際のへき地が持つグラデーションを表現していなかったりという課題がありました。そこで、修正デルファイ法というステークホルダーのコンセンサスを形成する方法を用いて、人口密度、直近の二次救急病院までの距離、離島かどうか、特別豪雪地帯かどうかの4つの要素からなる「RIJ」という指標を開発しました。この指標は、郵便番号や市区町村ごとのへき地度を表しており、これにより医師偏在指標や住民の健康状態との相関関係を明らかにしました。
プレゼンテーションの様子
■RIJがもたらすインパクト
RIJは、その画期的な手法と実用性から、すでに多くの研究者や行政関係者から注目を集めています。この指標を活用することで、以下のことが可能になります。
  • へき地医療の現状を可視化:どの地域が特に医療資源が不足しているのか、具体的な数値で把握できる。
  • 医療資源の最適配置:医療機関の設置場所や、医師の配置などを、より科学的な根拠に基づいて決定できる。
  • 新たな政策立案:へき地医療の改善に向けた、より効果的な政策を立案できる。
  • 国際的な連携:日本の取り組みを世界に発信し、他の国の医療問題解決に貢献できる。
プレゼンテーション後の質疑応答の様子
RIJは、単なる指標にとどまらず、地域住民の健康寿命延伸や、医療の公平性の確保など、さまざまな社会課題解決への貢献が期待されます。


金子准教授に受賞のコメントをいただきました。
今回の受賞に際し、へき地医療の課題解決に向けて、一歩前進できたことを大変うれしく思います。RIJがより多くの人々に活用され、日本の医療の質向上に貢献できれば幸いです。今後は、RIJをさらに発展させ、より精度の高い指標へと改良していくとともに、全国のPractice Based Research Networkとの連携を強化し、海外への発信も積極的に行っていきます。
会場内の展示ブースでは、金子准教授の研究成果についての資料を展示。多くの方にお越しいただきました。
金子 惇 准教授 略歴
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻
同医学部臨床疫学・臨床薬理学教室

2008年 浜松医科大学医学部医学科卒業
2008-2011年 沖縄県立中部病院初期研修、沖縄県立中部病院プライマリ・ケアコース後期研修
2011-2014年 沖縄県立北部病院附属伊平屋診療所
2014-2018年 CFMD東京リサーチフェロー
2018-2020年 浜松医科大学 地域家庭医療学講座 特任助教
2020-2023年 横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 講師
2023年4月より現職
用語説明
*1 へき地:「へき地」という言葉は医療資源の乏しい郡部を指す言葉として行政文書でも用いられており、英語のruralに対応する言葉として本研究では「へき地」「へき地度」という言葉を用いている。ただ、「へき地」も”rural”もネガティブなニュアンスを含んで用いられる場合もあるものの他に適切な用語が無いため使用されているという側面もあり、その点を鑑みて本プレスリリースでは「」付きの「へき地」「へき地度」という表現を用いている。
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