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大学院生 川内 美月さんと丹後 健人さんの論文が、行動経済学会の機関誌「行動経済学」に掲載されました

2024.10.10
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  • 学生の活躍
  • 研究
国際マネジメント研究科 博士後期課程3年の川内美月さんと丹後健人さんの論文が、行動経済学会の機関誌「行動経済学」に掲載されました。
上:川内美月さん/下:丹後 健人さん
論文著者
国際マネジメント研究科 博士後期課程 3年
(白石研究室)
川内かわうち 美月 みずきさん

国際マネジメント研究科 博士後期課程 3年
(中園研究室)
丹後たんご 健人 けんとさん

指導教員
国際マネジメント研究科
白石 小百合 教授(計量経済学)
中園 善 行 教授(マクロ経済学)

論文タイトル
世帯内格差と主観的幸福度

掲載雑誌
「行動経済学」

今回の発表内容について川内さんに解説していただきました。
本研究では、「夫婦間の経済格差が縮小すると、妻の主観的幸福度が上昇する」を明らかにしました。ここでのキーワードは「夫婦間(世帯内)」です。
これまでの経済格差に関する議論は、主に世帯間(世帯同士)での格差、大半は、低所得世帯と高所得世帯の格差が中心でした。
近年では日本でも共働き世帯が多く占めるようになり、夫妻共に収入を得るなど、世帯の”かたち”も多様化しています。本研究においても、日本の世帯間消費格差が 2000 年以降横ばい傾向にあることが分かり、さらに世帯内(夫妻間)の格差は近年縮小傾向にあることを明らかにしました。具体的には、夫婦間の私的消費(夫または妻が自分自身のために支出)を分析した結果、1990 年代以前は、妻の私的消費は夫と比べて三分の二程度でしたが、最近では、ほぼ同水準にあり、夫婦間の私的消費格差はほぼ解消していると言えます。
この格差の解消により、妻の主観的幸福度が上昇することが明らかになりました(使用データの特性上、妻の幸福度のみ分析)。この結果は、相対所得仮説(自分の所得が増加しても、周囲の人も同様に増加していれば幸福度は上昇しないという仮説)などを考慮してもなお頑健な結果です。つまり、「世帯間」で観察できなかった経済格差が、「世帯内」では存在し、それを解消することで「幸福度が上昇」するという結果が得られました。
経済格差は、一国の経済成長(国の豊かさ)を損なうことが知られています。現在、持続的な社会構築を目指す中で、国の豊かさを測る際にGDP*1のような金銭的指標だけでなく、主観的幸福度のような非金銭的指標を併用することが増えています。本研究は、まさにこれらの両面から世帯内の経済格差を捉えることができました。そのため、経済格差については世帯間だけでなく世帯内でも、また、金銭的指標だけでなく非金銭的指標でも、よりミクロな視点での分析が必要と主張できると考えています。
川内美月さんのコメント

共著者の丹後さんと白石先生、中園先生はじめ多くの方々にご指導・サポートいただき、論文が公刊されることになりました。皆さまに感謝申し上げます。今後も主観的幸福度に関する研究活動にまい進してまいりますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
丹後健人さんのコメント
今回、論文を公刊させることができ大変光栄です。このような研究成果を出すことができたのは、研究が行き詰った時に親切に指導して頂いた共著者の白石先生やこれまでご指導頂いた太田塁先生(国際経済学)、中園先生、また一緒に議論してくれた中園研究室の皆さんのおかげです。成果をさらに発展させるべく、今後も研究に励んで参ります。
該当の論文はこちらからご確認ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbef/17/0/17_24/_article/-char/ja

用語説明
*1 GDP 国内総生産 1年間など一定期間内に国内で産出された付加価値の総額で、国の経済活動状況を示す。
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