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社会課題を解決するためのアイデアを発見し、ビジネスモデルを学生が考案

2024.04.02
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  • 国際商学部

—企業が取り組む社会貢献とキャリア・デザインを理解する—

【100周年記念特別講座】(特講)社会貢献型実習は、国際商学部の吉永崇史教授*1が担当し、学生の社会貢献に対する関心を、ビジネスアイデアの創出につなげることを目指す授業です。また、SDGsの目標達成に向かって企業が取り組む社会貢献と、それに持続的にかかわるためのキャリア・デザインを理解することを目標としています。
社会貢献に積極的に取り組んでいる企業の協力のもと、「社会が抱える課題を、ビジネスを通じて解決するためにはどうしたらよいか?」の問いに基づき、ビジネスモデルの考案をグループワークで取り組みました。
1月に実施された最後の授業では、社会貢献型実習で学んだことの集大成として、8組のグループが社会課題を解決するために考案したビジネスモデルを発表しました。
グループで協力し、発表に取り組む様子
グループワークを通じて得られる学生たちの学び
学生たちはグループに分かれて、第11回から第14回の授業4コマ(90分×4回)の限られた時間の中でプレゼンテーションに向けた準備を進めました。グループワークで課題に取り組むメリットは、同じグループのメンバーとアイデアを出し合い、コミュニケーションを取りながら、一つのビジネスプランを作り上げることで、学生たちは協調性を学ぶことができます。また社会課題の解決への考案を繰り返すことで、目的や課題を明らかにする発見力や新たな価値を見出す想像力を高めることにつながります。
それぞれのチームが解決したい社会課題につながるビジネスモデルを発表
各チーム自分たちが解決したい課題と、それをどのようにビジネスとして成立させながら解決につなげられるかを、論理的に説明するため、次のような順序でプレゼンテーションしました。
① ビジネスモデルの概要や目標を表したタイトルについて説明
② 考案したビジネスプランによって解決したい社会課題を提示
③ ②で示した社会課題につながるビジネスモデルの資料を展開
     ・具体的な問題「どのようなことを解決したいのか」
     ・ターゲット「誰にむけてのものなのか・商品やサービスの顧客層」
     ・解決策「どのような製品やサービスで解決するのか」
     ・サービスの提供方法
④ 考案したプランの収支計画に基づき、顧客はどのような利益を得ることができるのか、コストと収益のバランス
    と利益の予想を明確化
⑤ 考案したビジネスモデルで到達したい目標とプランの魅力や優位性を説明

発表されたアイデアは、現代社会における孤立問題を課題とした仮想空間でのコミュニケーションとサービスを展開するビジネスプランや地域を活性化するためにマッチングシステムを構築したプランといった、現代的な発想や新しい視点が多く組み込まれたものでした。

ビジネスモデルの発表の様子
YCU卒業生の起業家 玄正 慎さん(一般社団法人ファストエイド代表理事*2)をお招きし、アドバイスをもらいました
今回の講義には、社会課題に向き合い、実際に社会貢献のためのビジネスに取り組んでいて、YCUの先輩でもある玄正げんしょうまこと さん(一般社団法人ファストエイド*2)を招き、各グループのプレゼンテーションに対して、コメントをいただきました。
玄正さんは、YCUを卒業後に、起業体験イベントに参加したのがきっかけで起業への第一歩を踏み出したそうです。多くのプロジェクトを企画してはやり直し、考え直すことを繰り返し、社会問題の解決につながるプロジェクトを考案されました。より豊かな社会の実現のため、プロジェクトのまま終わらせたくないという強い気持ちからスタートアップを起業、その活動から発展して、現在の一般社団法人ファストエイドを創業するに至ります。
学生の発表に対しては、発想力を評価し、さらにそのアイデアを良くするために必要なアドバイスや足りないところへの指摘をしてくださいました。競合との比較や統計的なデータをとるためには、まず顧客へインタビューや観察をすること、「動いて実際に聞いてみる・実際にやってみる」ということの大切さを学生たちに伝えてくださいました。
 
一般社団法人ファストエイド代表理事 玄正慎さん 
玄正慎さんのアドバイスを熱心に聞く学生たち 
ビジネスプラン「大学生×地方自治体マッチングシステム」地域のお祭りを盛り上げて、地域の活性化に貢献
課題に取り組んだ学生たちに話を聞きました

プレゼンテーション後に講義について話す学生たち
 —グループワークでこの課題に取り組んだ感想を聞かせてください。

私たちのチームは地域のイベントを支援することで、地域の活性化に貢献するビジネスモデルを発表しました。チームのメンバーは5人。全員で意見を出し合い、リサーチをして、最終日のプレゼンに向けた準備を進めました。最初はどのような社会課題にフォーカスすべきなのか迷ってしまい、チームで意見をまとめるのが大変でした。発表の当日もぎりぎりまでメンバーで話し合いをしました。7分という短い時間の中で説明できるか不安で、納得できなかった部分もありましたが、メンバー5人で一緒に一つの課題に向けて取り組んで、やり遂げられたことに達成感を感じました。それがとても嬉しかったです!

—今回のビジネスプランを決定した理由を教えてください。

チームの共通意見は「地域の持続性」。SDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」の課題を解決したいという思いから、地域の「お祭り」を盛り上げるプロジェクトをビジネスプランに決定しました。

—課題に取り組む中で、大変だったことを教えてください。

アイデアにたどり着くまでも難しかったですが、そこからがさらに困難でした。どうしても学生目線での発想ばかりになってしまう。大学生が地域のお祭りを盛り上げるというビジネスモデルでは、ターゲットである大学生にとっての価値は浮かんでくるけれど、もう一方の地域の方々のニーズがどのくらいあるのか、想像がつきません。
また、収支計画を立てるにも、知識量が少ないのでコストと収入の金額がなかなか出せなくてとても苦戦して、自分たちの未熟さを実感しました。(涙)

—今後の展望はありますか。

玄正さんにもらったアドバイスで、自分たちが考案したビジネスモデルの可能性を感じることができました。これから社会に出たときに必要になる企業が注目すべき視点を学ぶことができたと思います。この経験を生かして、今後も地域を支援する活動に携わっていきたいです。

玄生 慎さんから学生にメッセージをいただきました。
どのチームも面白く、個性あふれる発想のビジネスモデルでした。今は、ビジネスの進め方のノウハウをまとめた本があるので、そういうものを見て学んでほしいです。頭の中だけで考えたアイデアはたいてい顧客のニーズとは違っているので、実際に顧客に話を聞いてニーズを検証することが何より大切で、そこから本当の学びが始まります。
ぜひ時間のある学生のうちに様々な経験を積む体験を重ねてください!


吉永先生からのコメント
社会貢献型実習では、学生の社会貢献に対する関心をビジネスアイデアの創出につなげることに挑戦しています。今年度は、グループワークの前段階で、9回にわたり社会課題に向き合ってその解決のための実践を重ねている社会人の方々にご登壇いただき、ご自身の実践や想いを受講生に伝えていただきました。受講生はそこから多くの刺激を受けて、自分たちならどのような社会貢献型ビジネスに取り組んでみたいのかをグループワークを通じて考えて、その構想をまとめて、発表しました。限られた発表時間ではありましたが、経験豊富な玄正慎さんから有意義なアドバイスをいただいたことで、発表者一人ひとりに、今後、関心を持った社会課題に継続的に向き合っていくモチベーションが生まれたのではないかと思います。
今回の講義で得た学びを今後の学修やキャリア形成に活かしていくこともこの講義のねらいとしています。学生たちが解決したい社会課題をチームで考えて、アイデアを出し合いビジネスプランを作り上げていくことで、より社会問題への意識が高くなります。課題に取り組んだ学生は、グループでアイデアを具体化することをきっかけに、頭で考えるだけでなく、実際に動くことの大切さも学ぶことで、自分たちがやりたいこと・やるべきことが明瞭になったという感想がありました。今回、授業で学んだことやアドバイスをもとに、ビジネスモデルがブラッシュアップされ、実現する可能性が広がり、社会貢献につながることを楽しみにしています。

用語説明
*1 吉永崇史教授:
横浜市立大学国際商学部/国際マネジメント研究科国際マネジメント専攻教授。博士(知識科学)。2013年に横浜市立大学に着任。経営組織論、ダイバーシティ・マネジメント、ナレッジ・マネジメントを中心に、多様性を活かして知識創造を志向する経営組織と、組織活性化のための効果的なコミュニケーションについての研究・教育活動を実施。文部科学省高等教育局障がいのある学生の修学支援に関する検討会委員、横浜市男女共同参画審議会委員等も務める。
*2 一般社団法人ファストエイド:
CPR(心肺蘇生法)の普及活動を行う非営利法人。ペットボトルで手軽に胸骨圧迫の訓練ができるCPRトレーニングボトルの普及に取り組んでいる。

【100周年記念特別講座】(特講)社会貢献型実習は、こちらの記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2023/20231215yoshinaga.html
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