『メディアからみる空き家』空き家問題の実態を知り、利活用を提案する

10月31日に、国際教養学部の授業科目「不動産マネジメント論」（齊藤広子教授^*1）において、NHK メディア総局「クローズアップ現代」のディレクター、荒川あずささんによる講義が実施されました。この講義は、今年5月の「クローズアップ現代」で放送された「急増！“なんとなく空き家”どうなる税負担!強制撤去も！？」や、NHKスペシャル「老いる日本の住まい」の番組の制作を通して、不動産学・不動産マネジメント論の専門家として当番組に出演された齊藤広子教授とのご縁がきっかけで実現しました。
この講義を引き受けてくださった荒川ディレクターには、現代社会の『空き家問題』について、これからの未来を担う世代の学生たちに現実を知ってもらいたい、また社会人とは違った視点での発想やアイデアを聞きたいという思いがあったそうです。
授業は、これまでにNHKが取材された動画や情報をまとめたスライドを共有しながら問題提起し、学生たちがそれについて考え、アイデアを提案する形で進められました。

 最初に、空き家問題についてのイメージが湧くように、荒川ディレクターから学生たちに空き家の実態や全国の空き家状況について説明されました。次に都心部や郊外の空き家問題についての課題と、その解決策として空き家を活用した事例の紹介がありました。DIY型賃貸借^*2で空き家が外国人向けのフォトスタジオに生まれ変わった事例は、都会にある手放せない空き家を、和の雰囲気を生かしてリフォームをするというアイデアであり、「思い出を残した再生法」に教室からおどろきの声が上がりました。　　　　　　　　　

授業の終盤には実際に社会課題の解決に向けた取り組みとして、課題のある空き家をどのように再生し、活用していくかというアイデアを学生たちが提案しました。
坂の上という立地、2階建て（駐車場なし）という課題に対して、階段や坂道があることを生かした「トレーニング＆さっぱりとリフレッシュできるサウナ付き筋トレハウス」や、眺めがいいことを生かした「空を見てゆっくりできるようなカフェ」など、ユニークなアイデアがありました。

授業を受けた学生の感想の中に「都心に空き家が多くあることに驚いた」、「空き家は迷惑な存在という印象が強かったが、持ち主の思い出や金銭的な問題などすぐには動けない理由がたくさんあり、自分ごとの問題だと感じるようになった」といった声が多く、荒川ディレクターは、「講義を実施する当初の目的を達成できて嬉しかった」と話してくれました。また講義で紹介した空き家の管理等を行う「ランドバンク^*3」の取り組みも、今後まちづくりに関わっていくことになる学生たちが、新しい概念として興味深く聞いてくれたと感じられたそうです。


この講義を通して学生たちは、空き家問題を身近に感じることできたとともに、増え続ける要因、高齢化社会が進む社会における相続の問題、そして空き家所有者が空き家の活用について問題を抱えている現状を認識することができました。
そしてメディアを通じ、動画やスライドで取材の内容や事例を共有することで、より深く学ぶことができ、学生から空き家の利活用のアイデアがたくさん提案されました。
また、単に手放すだけではなく「空き家の持ち主が納得することを大事にして、使えるものは使っていくことが大切である」といった解決策を生み出すことが本当の社会解決につながる大きな学びや気づきを得ることができる時間でした。
 

講義の最後には、齊藤広子教授から荒川ディレクターに「NHK（メディアの世界）に入った理由やきっかけは？」といった質問があり、学生に向けて「メディアを通じて世の中を少しでもよくしていけたらいいなと感じたから」というメッセージをいただきました。
荒川ディレクター、ありがとうございました！

 *1 齊藤広子教授 プロフィール
筑波大学第3学群社会工学類都市計画専攻卒業、不動産会社勤務を経て、大阪市立大学大学院生活科学研究科修了。博士（工学）・博士（学術）・博士（不動産学）。岐阜女子大学家政学部住居学科助教授、明海大学不動産学部教授、英国ケンブリッジ大学客員研究員を経て、2015年4月より現職。専門は不動産学、不動産マネジメント論。魅力的なすまいやまちのマネジメント手法確立の研究と実践。
*2 DIY型賃貸借
空き家持ち主の意向を反映して、借主（入居者）が自ら住宅の改修を行うことのできる賃貸借契約や賃貸物件のこと
*3 ランドバンク
空き地や空き家の管理・流通・再生を担う組織