YCU 横浜市立大学
search

フロリゲンと類似した構造のタンパク質FTL9がイネの種子サイズと種子数を制御することを発見

2023.05.10
  • TOPICS
  • 研究
  • 理学部

FTL9の機能調節により、イネの種子のサイズと種子数をコントロールできる可能性を示唆

横浜市立大学木原生物学研究所の辻寛之准教授(兼 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 生物機能開発利用研究センター・大学院生命農学研究科 教授)、田岡 健一郎 特任助教(当時)らの研究グループは、国立遺伝学研究所の佐藤豊教授との共同研究で、植物に花芽を形成させる因子であるフロリゲン*1と類似した構造のタンパク質FTL9の機能を解明しました。さらに、FTL9の機能調節により、イネの種子のサイズと数をコントロールできる可能性を示唆しました。
本研究成果は、英国の科学雑誌『The Plant Journal』に掲載されました。(2023年3月30日付)

研究内容

植物の種子の数や大きさは親植物の状態に依存することが分かっていますが、親植物からの情報伝達方法は不明でした。本研究では、イネにおける親植物から種子への情報伝達に関与する分子として、フロリゲンと類似した構造を持つタンパク質FTL9を新たに同定しました。フロリゲンは花芽分化の強力な誘導因子として知られていますが、これと類似した構造のタンパク質が種子の形質を制御することは新しい発見です。本研究の成果は、フロリゲンと関連タンパク質が植物の生活史、特に花や種子の形質制御に重要であることを示しています。
栽培イネでは人為選抜によりFTL9の機能が喪失しており、結果として種子サイズが大きくなっていますが、栽培化されていない野生イネではFTL9の機能が維持されており、種子サイズは小さく、数が多い傾向にあります。これを踏まえたFTL9の機能調節によって、イネの種子のサイズと数をコントロールできる可能性が示唆されました。
FTL9遺伝子による種子サイズ制御。FTL9遺伝子の機能を欠損させたイネ(上)では、正常なFTL9遺伝子を有するイネ(下)と比較して種子サイズが大きい

用語説明

*1 フロリゲン:
被子植物の花の発生を開始させる運命決定因子。正体はFT/Hd3aと呼ばれる球状タンパク質。

論文情報

雑誌名: The Plant Journal
論文:A leaf-emanated signal orchestrates grain size and number in response to maternal resources
著者:Ta, K.N., Shimizu-Sato, S., Agata, A., Yoshida, Y., Taoka, K.-i., Tsuji, H., Akagi, T., Tanizawa, Y., Sano, R., Nosaka-Takahashi, M., Suzuki, T., Demura, T., Toyoda, A., Nakamura, Y. and Sato, Y. (2023)
DOI: https://doi.org/10.1111/tpj.16219
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOAL

  • 02.飢餓をゼロに
  • 13.気候変動に具体的な対策を
  • 15.陸の豊かさも守ろう