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新型コロナウイルス感染症による罹患後症状(いわゆる後遺症)より正確な発生率をメタ解析で確認

2023.02.27
  • プレスリリース
  • 研究
横浜市立大学附属病院 化学療法センター 堀田信之センター長および帝京大学医学部附属病院 腫瘍内科 陳昊医師らの研究グループは、システマティックレビュー*1とメタ解析の手法を用いて新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の罹患後症状(いわゆる後遺症)において、より正確な発生率を確認しました。
本研究成果は、感染症専門医学誌「Journal of Infection」に掲載されました。(2023年2月15日オンライン)
研究成果のポイント

  • システマティックレビューとメタ解析の手法を用いて COVID-19の罹患後症状のより正確な発生率を確認した。
  • 米国疾病予防管理センター(CDC)基準で7%、世界保健機構(WHO)基準で11%に罹患後症状が発生した。
  • COVID-19罹患後症状において、倦怠感(50%)、脳の霧(41%)、頭痛(29%)、記憶障害(28%)の頻度が高かった。

研究背景

COVID-19による罹患後症状は post COVID-19 condition や long COVIDとも呼ばれ、COVID-19 罹患後に感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がないのに急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに、もしくは再び生じて持続する症状全般をいいます。罹患後症状が永続するかは不明であり、Withコロナ/Afterコロナを考える中で罹患後症状について研究する事は重要だと考えます。その中で、罹患後症状の発生率や各症状の割合に関する報告は多数ありますが、報告により提示されるデータがまちまちでした。

研究内容

本研究では、システマティックレビューの手法により既存のデータを検索し、メタ解析の手法によりデータを統合し、74,690名のビッグデータによるCOVID-19(オミクロン株)の罹患後症状を解析しました。
なお、米国疾病予防管理センター(CDC)と世界保健機構(WHO)が異なる罹患後症状の診断基準を提唱しているため、別個に解析しました。その結果、CDCの定義による発生率は7%(95%信用区間*2:5%-9%)(図1)、WHOの定義による罹患後症状の発生率は11%(95%信用区間:10%-12%)(図2)となりました。
図1. CDC定義の罹患後症状の有病率
図2. WHO定義の罹患後症状の有病率
また、WHO定義を用いた研究では、罹患後症状のある者のうち、どのような症状が出たのかを解析すると、倦怠感(50%)と約半数の人が患っていることが確認されました。次いで、脳の霧(41%)、頭痛(29%)、記憶障害(28%)、呼吸困難(28%)、嗅覚障害(26%)、うつ(23%)、睡眠障害(21%)、集中力低下(20%)の頻度が高かったといえます。(図3)
図3. 感染後罹患症状の分布(WHO基準)

今後の展開

本研究の意義は、世界中で大流行しているCOVID-19による罹患後症状の頻度を、大規模データにより明らかにしたことです。今後の新型コロナウイルス罹患後症状に関する政策や行動指針を考えるための参考にすることができる重要なデータといえます。

論文情報

タイトル: Prevalence and clinical features of long COVID from omicron infection in children and adults.
著者: Hao Chen(陳昊); Ling Zhang; Yumeng Zhang; Gang Chen; Dahu Wang; Xiaoyun Chen; zhenguang Wang; Jingshu Wang; Xiaofang Che; Nobuyuki Horita (堀田信之); Nobuhiko Seki
掲載雑誌: Journal of Infection
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jinf.2023.02.015
 

用語説明

*1 システマティックレビュー:既存の論文を系統的に検索評価して解析する手法。

*2 95%信頼区間:真値(知りたい値)を推定するにあたり、95%の確率で真値を捉えると考えられる区間のこと。
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