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【YCU RESEARCH 2021】COVID関連研究(健康社会医学ユニット)

2022.03.16
  • TOPICS
  • 研究

COVID関連研究(健康社会医学ユニット)

new! 2022.3.8
 

The Transition of Social Isolation and Related Psychological Factors in 2 Mild Lockdown Periods During the COVID-19 Pandemic in Japan: Longitudinal Survey Study

COVID-19感染拡大による2つの緊急事態宣言期間における社会的孤立の推移とその関連要因

健康社会医学ユニット 谷 渚  助教

 
本論文は徳島大学の山本哲也准教授(責任著者)と内海千種准教授、同大学院修士1年の鈴木菜穂さんとの共同研究の成果によるものです。

本研究では、日本にて発令された2回の緊急事態宣言下における社会的孤立状態の推移とその関連要因を縦断的に調査し、社会的孤立状態がどのように推移しているか、また特定の推移パターンを持つ人が多く存在するクラスターを抽出してどのような心理社会的特性が見られるかについて分析しました。

緊急事態宣言が発令された7都府県に住む7893人(女性3694人[46.8%]、49.6[標準偏差 13.7]歳)からデータを得ました。調査は、第1回および第2回緊急事態宣言の最終段階である2020年5月11日~12日(第一期)および2021年2月24日~28日(第二期)にオンラインで実施されました。社会的孤立状態の推定についてはLubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)を用い、12点未満を社会的孤立状態と定義しました。

本研究の結果のポイントは以下の通りです。

・2つの期間を通してみると、社会的ネットワークと孤独感の改善は見られませんでしたが、心理的苦痛は有意に改善し、うつ病はわずかに減少していました。
・7893人のうち3868人(49%)が第1~2期を通じて社会的孤立状態が持続しており、947人(12%)は第1期では社会的孤立状態になかったにもかかわらず、第2期では社会的孤立状態と推定されました。
・未婚、子どもがいない、あるいは世帯所得の低い層では、より多くの人が第1~2期にわたる持続的な社会的孤立を経験していました。
・ノンパラメトリックベイズ共クラスタリング解析を用いて関連する変数間の網羅的相互作用を分析した結果、第1~2期を通じて社会的孤立を経験しなかった人を多く含むクラスターでは、健康的な行動、より多くの交流、良好な人間関係を持ち、孤独感や心理的ストレスが少ないことが示されました。
・同解析方法の結果、第1~2期を通じて社会的孤立が持続した人を多く含み、かつ孤独感や心理的ストレスが強いクラスターでは、顕著に人間関係が悪化し、オンラインでの交流が少ないことがわかりました。

本研究では、度重なる緊急事態宣言のもとで社会的孤立がどのように推移したか、またそれに関連する心理的・社会的・行動的要因の実態を明らかにしました。これらの結果は、パンデミック時の社会的孤立状態にある人々の個人特性に合わせた介入方法を構築する上で役立つと期待しています。

 

2021.12

 

Alcohol Use and Its Related Psychosocial Effects during the Prolonged COVID-19 Pandemic in Japan: A Cross-Sectional Survey 

コロナ禍における飲酒問題の実態とその関連因子

健康社会医学ユニット 谷 渚  助教

 
本論文は徳島大学の山本哲也准教授(責任著者)と内海千種准教授、同大学院修士1年の鈴木菜穂さんとの共同研究の成果によるものです。

我々は3回目の緊急事態宣言期間の終盤(2021年6月15~20日)に宣言の対象地域となった6都府県(東京、愛知、大阪、京都、兵庫、福岡)に在住する11423名(うち女性が48.5%、平均年齢48.82 ± 13.30歳)を対象に飲酒行動を含めた調査を行いました。

この研究で用いた飲酒行動の指標はAUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)という世界的に用いられている尺度です。AUDITは過去1年の飲酒について尋ねるものでアルコール依存症の診断基準も同様です。3回目の緊急事態宣言は1回目の宣言の約1年後なので、この長引くパンデミックや緊急事態宣言が繰り返される状況下において、どのような因習状況の実態があるかを調べるには最適な時期だといえます。AUDIT得点が8点未満は「飲酒の問題なし」、8~14点以上は「危険な飲酒」、15点以上は「アルコール依存症の疑い」と判定されます。

本研究の結果のポイントは以下の通りです。

・パンデミック前(2018年)の日本のデータと比較して、男女ともにアルコール依存症疑い(AUDIT15点以上)の割合が高く、その割合の増大傾向は特に女性で顕著でした。
・男性の危険な飲酒(AUDIT8~14点)の割合はパンデミック前後で目立った差はない一方(むしろ減少傾向)、女性の同グループの割合は増加していました。
・アルコール依存症疑い群では、危険な飲酒群および飲酒問題なし群(AUDIT8点未満)と比べて、心理的苦痛、抑うつ、不安が増大していました。(※なお、いずれの心理指標においても、パンデミック前のデータと比較すると、飲酒問題の有無にかかわらず全体的に良好ではありませんでした)
・不安と抑うつが高いほど、アルコール依存症疑いと関連していました。
・健康的な食習慣の減少、健康的な睡眠習慣の減少、(他者に感染させないための)予防行動の減少、身近な人との関係の悪化、COVID-19関連の不眠の悪化、仕事や学業の困難、COVID-19関連の不安の減少が、アルコール依存症疑いと関連していました。一方、運動の増加と、身近な人とのオンライン交流の増加も、あるアルコール依存症疑いと関連しているなど、解釈の難しい結果もありました。

以上を踏まえ、COVID-19の流行による日常生活上の様々な困難は、深刻な飲酒状況と関連しており、こうした困難を抱える人々に対するサポートが必要であると考えられます。
   

2021.7


Social isolation and its psychosocial factors in mild lockdown for the COVID-19 pandemic: a cross-sectional survey of the Japanese population 

緊急事態宣言下における社会的孤立とその関連因子 

健康社会医学ユニット 谷 渚  助教

 
本論文は徳島大学の山本哲也准教授(責任著者)と内海千種准教授、同大学院修士1年の鈴木菜穂さんとの共同研究の成果によるものです。

この研究では、本邦におけるCOVID-19パンデミックによる緊急事態宣言下での社会的孤立に関連する社会人口学的および心理学的特性を明らかにすることを目的としました。

最初に1回目の緊急事態宣言の対象となった7都道府県在住の10代から80代の男女を対象に、宣言期間の終盤である2020年5月11日〜2020年5月12日にオンライン調査を実施し、11,333人から回答を得ました。

本研究の主な結果は以下の通りです。

・1回目の緊急事態宣言下では社会的孤立と孤独感がパンデミック以前の研究と比較しても顕著に高値でした。
・男性であること、中年層であること、低所得であることは、社会的孤立を予測し、学生であることは社会的孤立の少なさに関与していました。
・社会的孤立は、オンラインでの親しい人との交流の減少と、緊急事態宣言下での楽観的思考の減少と関連していました。
・個人的な問題を相談したり、助けを求めたりする相手が男性の方が少ない傾向があり、中年層(40〜64歳)では、友人に関連した社会的ネットワークが希薄になっていました。

以上の結果は、現在、もしくは将来のパンデミック時に人々が精神的健康を維持するために、社会的相互作用の改善を目的とした介入が必要となる集団を特定するのに役立つ有用なリソースとなることが期待されます。

 

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