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よこはまウォーキングポイント参加者 60歳代の高血圧の発症者が相対的に12.3%少なかった! これに伴う医療費抑制推計額は少なくとも9千万円!

2020.12.21
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よこはまウォーキングポイント参加者 60歳代の高血圧の発症者が相対的に12.3%少なかった! これに伴う医療費抑制推計額は少なくとも9千万円!

横浜市・横浜市立大学(田栗正隆教授・窪田和巳講師・山中竹春教授)・日本電信電話株式会社・エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社は、令和元年8月に締結した「『官民データ活用による超スマート社会の実現に関する包括連携協定書』に基づくよこはまウォーキングポイント事業及び横浜市国民健康保険特定健康診査の影響分析に関する覚書」に基づき、よこはまウォーキングポイント事業(以下、「YWP事業」)への参加が、生活習慣病予防や医療費等に及ぼす効果を分析しました。

1.分析の概要

2015~2018全年度で横浜市国民健康保険に加入かつ2015年度の特定健診受診者の中から、2015年度時点で運動機能に障害がなく、かつ生活習慣病を発症していない人(28,367人)を選び、その後YWP事業に3年連続参加した人(1,973人)と未登録者(22,081人)等で、次の項目を比較・分析しました。

  • 生活習慣病予防(2016~2018年度の高血圧・糖尿病の新規発症率)
  • 医療費及び、高額医療費上位1%に入る確率(2018年度の総医療費、高血圧、糖尿病)
  • メタボリックシンドローム状態の変化

2.役割分担

 
役割 担当

分析テーマ設定
 
全者
 
分析用データの作成
 
横浜市【※】
 
分析・可視化ツールの準備
 
エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社

分析用データを用いた分析
 
横浜市立大学・エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社

分析結果の考察
 
全者

進捗管理・課題管理・レポート作成
 
日本電信電話株式会社

【※】YWP事業の参加者データは、YWP事業の共同事業者である株式会社NTTドコモの協力により作成

3.結果

ア.高血圧の新規発症抑制効果(統計的有意差あり)
60歳代において、結果に影響を及ぼす可能性のある背景要因を揃えた結果、3年連続参加者の中で高血圧を新規発症した割合は26.30%、未登録者の同割合は29.99%で、3年連続参加者の方が3.69ポイント低くなっていました。これを実際に高血圧を新規に発症した人数で比較すると、3年連続参加者の発症者は未登録者の発症者より12.3%少なくなっていました。【※1】

【※1】3年連続参加者と未登録者の対象者数が同数の場合、仮に未登録者の発症者数が100人とすると、3年連続参加者の発症者数は87.7人となり、12.3%少ない。

◇高血圧の新規発症抑制に伴う60歳代参加者の年間医療費抑制額(推計)
高血圧の新規発症が抑制されると、高血圧医療費も抑制されます。また、高血圧は脳卒中や心筋梗塞の強いリスク要因であり、高血圧を抑制することで、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な疾患の発生も減少します。そのため60歳代のYWP事業3年連続参加者全体での高血圧の新規発生抑制に伴う医療費の抑制額は、少なくとも【※2】年間90,534,935円と推計されます。    
【※2】今回推計できたのは高血圧と脳梗塞予防の削減推計額のみです(詳細は「4 考察」参照)。
 ①  高血圧の新規発症抑制に伴う高血圧医療費の抑制額  62,899,302円
 ②  高血圧の抑制により、高血圧が原因で発生する
 脳卒中が減ることに伴う脳卒中(脳梗塞)医療費の抑制額
 
 27,635,633円
 ③  高血圧の新規発症抑制に伴う医療費抑制額➀+②の合計  90,534,935円
 

イ.その他の結果(統計的有意差なし)

① 生活習慣病予防
  • 60歳代男女の糖尿病の新規発症率は、3年連続参加者の方が、男性は0.31ポイント、女性は0.41ポイント低かった。   
② 医療費
  • 60歳代男女の高血圧の平均医療費は、3年連続参加者の方が、男性は年間1,420円、女性は204円低かった。また、高額医療費上位1%に入る確率は、3年連続参加者の方が、男性は1.08ポイント、女性は0.30ポイント低かった。
  • 60歳代男女の総医療費の高額医療費上位1%に入る確率は、3年連続参加者の方が女性のみ0.75ポイント低かった。
  • 60歳代男女の糖尿病医療費の高額医療費上位1%に入る確率は、3年連続参加者の方が女性のみ0.09ポイント低かった。
③ メタボリックシンドローム状態
  • 60歳代男女のメタボリックシンドロームになる人の割合は、3年連続参加者の方が、男性は1.1ポイント、女性は0.9ポイント少なかった。       
  統計的有意差あり・・・確率的に偶然ではないと考えられる結果であった。      
  統計的有意差なし・・・結果の偶然性を排除できなかった。

4.考察

(1)分析対象と方法
今回の分析では、①単に現状でのYWP事業参加・非参加による生活習慣病有病率等を比較するのでなく、対象を生活習慣病を発症していない人に限定し、その後3年間の参加・非参加での生活習慣病新規発症率を比較していること、②アンケートではなく健診結果等の実際の数字を使用していること、がYWP事業の効果を正確に評価できる方法と考え、実施しました。

(2)分析結果
対象者数が多い60歳代で、YWP事業への参加による高血圧の新規発症率の抑制効果を示すことができ、YWP事業は生活習慣病予防に一定の効果があると推察されます。
高血圧の新規発症率抑制や、高血圧抑制による重篤な疾患である脳梗塞の発生減少に伴う60歳代での医療費抑制額は約9千万円と推計しました。 高血圧抑制が他の重篤疾患(脳梗塞以外の脳卒中疾患、心筋梗塞等)への予防効果や、他の年代でも効果が期待できる可能性を考慮すると、医療費がさらに削減できる可能性があります。
参加期間については、今回高血圧の新規発症率が抑制されたのは、3年連続参加者であり、継続して続けることが重要と考えられます。


よこはまウォーキングポイントは、横浜市とNTTドコモ、凸版印刷、オムロン ヘルスケアの共同事業です。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報室
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

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