医学部小児科学の研究グループが横浜国立大学と共同でウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発
2020.01.22
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医学部小児科学の研究グループが横浜国立大学と共同でウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発
本研究のポイント
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研究概要
横浜市立大学医学部小児科学の伊藤秀一主任教授、魚住梓助教、横浜国立大学工学研究院の太田裕貴准教授らの研究グループは、新生児用ウェアラブルデバイスのためのマルチバイタルセンサを開発しました。ゴム材料などの柔軟な材料を新生児とデバイスのインターフェースに用いることによって新生児に対して負荷が低く、高密着に装着できるウェアラブル型の黄疸、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、脈拍など複数バイタルサインの同時計測が可能なマルチバイタルセンサを実現しました。また、現在はバイタルサインの計測精度を向上させるとともに、その他のバイタルサインも同時に検出できるようなデバイスへ発展することで新生児医療の高度化が期待できます。本研究は戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)(No. 181603007)のサポートの元で行われました。
本成果は、国際学会「IEEE MEMS2020」(1月19日付:日本時間1月20日)に発表されました。
本成果は、国際学会「IEEE MEMS2020」(1月19日付:日本時間1月20日)に発表されました。
研究成果
新生児は出生により胎内から胎外へ環境が変化することで、臓器を始めとした体内環境が非常に不安定になります。そのため、その後の生育を勘案すると、黄疸を起こすとされているビリルビン濃度を始めとして複数バイタルサインの経時的な計測が必要不可欠です。そこで本研究では、ゴム材料などの柔軟な材料を新生児とデバイスのインターフェースに用いることによって新生児の負担が小さく、高密着に装着できるウェアラブル型マルチバイタルセンサを開発しました。2019年1月に発表しました黄疸に加えて今回新たに経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、脈拍の同時計測の可能性を導き出し、Bluetoothを介してスマートフォンやタブレット端末で新生児の体調を経時的に確認することが可能となりました。
実験手法
微細加工技術を用いて柔らかい基板上にLED、フォトダイオード(PD)、IC、Bluetooth 素子を載せた回路を作製しました。その回路を、生体適合性が高く柔軟なシリコーンゴム材料の中に封入することにより、非常に柔軟なデバイスを開発しました。横浜市立大学医学部小児科学の協力により、出生0~5日後の新生児に対して、作製したデバイスによる測定結果と、従来から用いられている各種バイタルサイン計測デバイスによる検査の結果を比較し、相関があることを確認しました。
社会的な背景
新生児は出生とともに、母体に依存した胎内環境から、自らの力で生存する必要がある胎外環境への適応を迫られます。その変化は極めて大きく、様々な事象により、その生命は容易に脅かされます。また、自ら症状を訴えることができないため、対応が遅れることも珍しくありません。そのため、持続的に生体情報を獲得するための様々な機器が開発されてきました。とりわけ、ウェアラブル端末を用いたアプローチは、非侵襲的で望ましいものですが、新生児の皮膚は非常にもろく、柔らかいため、愛護的で持続使用可能な、次世代のインターフェースの開発が必要不可欠となります。
そのような新生児における重要なバイタルサインが脈拍、SpO2、黄疸度の度合いを示すビリルビンです。現在、脈拍、SpO2に関しては有線による常時計測を行うことができます。また、ビリルビンに関しては光学式ハンディデバイスでの計測が用いられています。それぞれが単独での計測であり、医療従事者の利用観点から考えると新生児に対してアクセスしやすくかつ無線で経時計測が可能なデバイスが必要です。小型、ウェアラブル、個人で購入可能な脈拍、SpO2、ビリルビン濃度測定デバイスが実現すれば、新生児の入院日数を短くし、患者の金銭的負担と医師・看護師の負担を軽減することができます。
そのような新生児における重要なバイタルサインが脈拍、SpO2、黄疸度の度合いを示すビリルビンです。現在、脈拍、SpO2に関しては有線による常時計測を行うことができます。また、ビリルビンに関しては光学式ハンディデバイスでの計測が用いられています。それぞれが単独での計測であり、医療従事者の利用観点から考えると新生児に対してアクセスしやすくかつ無線で経時計測が可能なデバイスが必要です。小型、ウェアラブル、個人で購入可能な脈拍、SpO2、ビリルビン濃度測定デバイスが実現すれば、新生児の入院日数を短くし、患者の金銭的負担と医師・看護師の負担を軽減することができます。
今後の展開
本研究では、脈拍、SpO2、ビリルビン濃度が計測できる新生児向けのウェアラブルセンサを開発しました。今後は更に心電や呼吸など他のバイタルサインの計測と連動して、包括的に新生児の様々なバイタルサインを計測できるウェアラブルセンサを開発して行く予定です。これらで取得したデータを機械学習と連動することで新生児、家族、医師、看護師が安心して生活できるスマートネットワーク環境を提供できることが期待されます。

図1 ウェアラブル型マルチバイタル計測センサ

図2 ウェアラブルマルチバイタルセンサの写真: a. 約3センチのセンサ、b. 2つのLEDからの反射光を4つのフォトダイオードで計測、 c. デバイス上の小型ICとBluetoothモジュール、d.センサ部分の拡大図
また、本成果は、令和2年2月5日(水)~2月7日(金)に開催される、テクニカルショウヨコハマ2020(第41回工業技術見本市 パシフィコ横浜展示ホールA・B・C)の横浜国立大学ブースにて展示いたします。
参考:プレスリリース2019年1月28日「医学部小児科学の研究グループが横浜国立大学と共同でウェアラブル型黄疸センサを開発」
参考:プレスリリース2019年1月28日「医学部小児科学の研究グループが横浜国立大学と共同でウェアラブル型黄疸センサを開発」