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データサイエンス研究の最前線、マクロミル共同研究室を取材!

2019.11.26
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データサイエンス研究の最前線、マクロミル共同研究室を取材!

データサイエンス分野で産学連携に関する基本協定を昨年7月に締結した、YCUと株式会社マクロミル。その連携の大きな柱として構想されていた、マクロミルとのデータサイエンス(DS)共同研究室が今年9月にいよいよ本格稼働しました。
大学内ではなく、企業内に設立された共同研究室はYCUで初めて。今回は、マーケティングリサーチの最前線で事業を展開するマクロミルとのDS共同研究室にお邪魔し、代表者であるYCUデータサイエンス学部の中谷朋昭教授や研究に携わるみなさんに、その研究内容や将来展望について伺いました。
  • 共同研究室名称
    横浜市立大学・マクロミル データサイエンス共同研究室
    YCU/Macromill Data Science Joint Lab.
  • 設置場所 株式会社マクロミル内
  • 開設 2019年4月1日
横浜市立大学・マクロミル データサイエンス共同研究室
横浜市立大学・マクロミル データサイエンス共同研究室は、株式会社マクロミルの品川本社からほど近い別ビルの一室にあります。オフィス内のデスクはフリーアクセス。大きな窓のある開放的な空間で日々研究を進めています。
まず、ここでの研究について、中谷教授に話を聞きました。


—この研究室での研究内容を教えてください

(中谷) 大きな研究テーマとしては、「欠損データの統計分析」と「データ等価方法の研究」という2つがあります。「欠損データの統計分析」とは、統計分析に必要なデータが何らかの理由で観測できなかった場合に、それを補正して望ましい分析結果を導く統計技術を開発する研究です。また、「データ等価方法の研究」は、意識や満足度など、個人間で異なる評価尺度を統計理論に基づいて調整する手法の研究です。これらはマーケティングだけでなく、経済学や医学・疫学など、幅広い分野で応用されています。長期的なゴールとしては、これらのテーマで少しでも新たな知見を得て、研究論文として公表することを目指しています。
データサイエンス学部 中谷朋昭教授
—データサイエンス(DS)学部にとって、企業の中に共同研究室があることのメリットは何でしょうか。

(中谷) 教育・研究のいずれにおいても、企業で実践的に活躍するデータサイエンティストとすぐにコンタクトできる環境であることが最大のメリットです。日常会話の中から研究のヒントを得て、社会展開を意識した理論研究や実践的な分析につながっていくことでしょう。逆に企業側にとっても先端的な分析手法を業務の中に取り入れるきっかけにつながると考えています。
—この共同研究室を活用して、YCUのデータサイエンスにおける教育、研究がどのように展開していくかを教えてください。

(中谷) 卒業研究や大学院での修士・博士論文でマーケティング関連のテーマを希望する学生には、共同研究室に滞在して、生のデータに触れながら実践的な研究を進めることができると期待しています。
DS学部からは、私と勝又特任助教のほか、7名が協力教員として共同研究室に参画して、金沢八景キャンパスと品川の共同研究室を行き来しています。また、YCUに限らず、多くの大学や研究機関に所属する研究者が集える場を提供していきたいと考えています。

 では、企業の側から見て、YCUのデータサイエンス学部とともに共同研究室を設置するメリットはどんなところにあるのでしょうか。共同研究室の客員研究員である株式会社マクロミルの次世代リサーチ技術開発室 西村広之さんに話を聞きました。
株式会社マクロミル 次世代リサーチ技術開発室 西村広之さん
(西村) 事業会社の中でデータサイエンスのスキルを持つ人はまだまだ少ないです。扱うテーマが先進的すぎて社内の人材だけでは解決できない時も多く、YCUとのコラボレーションにより、最新の知見に触れることができるのは大きなメリットです。
高度なデータサイエンス人材は募集をかけてもなかなか見つからず、どの事業会社も人材の獲得に苦労しています。また、社内で育成しようと思ってもいったい何年かかるのかと。新たな技術の開発などにおける即効性という意味では、YCUとの連携のような産学連携は一つのソリューションになると思います。
長期的な視点で考えたら、YCUのように大学がデータサイエンス学部をもち、データサイエンス人材育成をすることはとても意義あることだと思います。データサイエンティストとしてのスキルの基盤となるのは統計学です。この統計学をベースにデータサイエンスを学べるところは国内ではまだまだ少ないのが現状だと思います。YCUのデータサイエンス学部のように、統計学の多彩なバックグラウンドをもつ研究者を多数擁しているというのは、これからの時代、とても心強いですね。
そしてさらに、同研究室に新たに着任した特任助教の勝又裕斗先生に話を聞きました。勝又先生の専門は、もともと政治学領域における統計分析。一見まったく分野違いに見える政治学とマーケティングリサーチですが、政治学における応用統計の分野も、広く捉えると人間行動を分析する学問であり、マーケティングリサーチに通じるのだと言います。 
勝又裕斗 特任助教
(勝又) この共同研究室で他のメンバーの研究に触れ、政治学の分析では扱ってこなかった手法に触れたり、企業において研究の成果が活用されようとしていることに、日々とても刺激を受けています。今後、この研究室で欠損データの分析を進め、アンケートや統計調査に欠損値があっても、適切な推論を行えるようにするための方法の研究を進めたいと思います。
また、株式会社マクロミルの執行役員でもあり、この研究室の共同代表者である西部君隆さんからは、「これから先、世間でますます『データサイエンス』の重要性が言われるようになってくると思います。そんな中で、データサイエンス学部の先駆けであるYCUとともに研究を進めることができることに、大きなポテンシャルを感じています。」と言っていただきました。
YCUと株式会社マクロミルのDS共同研究室において、今後どのような研究成果が生み出され、ここからどんな新たな社会的価値が創造されていくのでしょう。YCU/Macromill Data Science Joint Lab.の活動から目が離せなくなりそうです。
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