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生命医科学研究科博士前期課程2年田村さん、日本結晶学会ポスター賞を受賞!

2018.12.04
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11月10日、平成30年度日本結晶学会年会にて表彰

生命医科学研究科博士前期課程2年 田村梨沙子さん
大学院生命医科学研究科博士前期課程2年の田村梨沙子さん(指導教員:禾 晃和准教授)は、2018年11月10日(土)、11日(日)に東京工業大学大岡山キャンパスで開催された平成30年度日本結晶学会年会において発表を行い、日本結晶学会ポスター賞に選出されました。表彰式は、11月10日(土)に開催された同年会の懇親会で執り行われました。

発表題目
『構造情報に基づいたエピトープ挿入部位の最適化による抗体断片との安定な複合体形成』


田村さんのコメント
数あるポスター発表の中から本研究発表を評価していただき、大変嬉しく思います。本研究を進めるにあたり、日頃から熱心にご指導してくださる禾晃和准教授をはじめ、構造生物学研究室の皆様や共同研究者の皆様など、多くの方々に深く感謝致します。
ポスター発表当日は、結晶学の専門家の方々と、タンパク質のX線結晶構造解析に関するより深いディスカッションを行うことができました。研究内容を伝えることの難しさや、研究を行う者としての力量不足を痛感する点もありましたが、今後の研究活動につながるようなコメントを多くいただけたため、大変有意義な機会となりました。この経験を活かして、今後も研究に励んでいきたいと思います。

禾 晃和先生のコメント
今回の発表で取り上げた研究は、田村さんが大学院進学と同時に一から立ち上げたものであり、約1年半という短い期間でポスター賞の受賞という評価を受ける研究成果を挙げたことは、本当に素晴らしいことだと思います。日々の研究活動の中でも、目的や意義をしっかりと理解した上で実験や解析に取り組もうとしており、そのような姿勢がポスター発表の質疑応答の場面でも生かされ、評価されたのだろうと思います。タンパク質結晶学の専門家の厳しい審査を受けて選ばれたポスター賞ですので、今後も自信を持って研究活動に取り組んでもらえたらと思います。 
発表内容の概要
タンパク質の生理的な役割を理解する上で、立体構造情報は非常に重要な手がかりとなります。立体構造を決定する手法の中で、もっとも汎用性の高い手法はX線結晶構造解析であり、タンパク質分子だけでなくリボソームやウイルスのような巨大な複合体も含め、様々な大きさの粒子のかたちを原子レベルの分解能で決定することができます。

X線結晶構造解析を行うための第一段階は結晶化ですが、どのようなタンパク質でも結晶になるわけではなく、構造解析を行う上でのボトルネックとなっています。このため、結晶になりにくい膜タンパク質などを解析する際には、抗体のFab断片などを結合させることで標的タンパク質の結晶化を促すという手法が用いられています。このFab断片のように結晶化促進作用を示す分子を結晶化シャペロンと呼び、受容体や膜輸送体をはじめとする創薬標的にもなる膜タンパク質の多くが、結晶化シャペロンを利用することで構造決定されています。しかしながら、それぞれの標的タンパク質に対してモノクローナル抗体を作製し、さらに結晶化に適した抗体を選び出すことは容易ではないため、この結晶化法を用いるには多大なコストや労力を要するという問題がありました。

そのような背景の下、田村さんは、PAタグと呼ばれる配列を標的タンパク質に移植し、この配列を非常に高い親和性で認識するモノクローナル抗体NZ-1のFab断片を結合させることで、標的タンパク質の結晶化を促進するという新規の結晶化法の開発に取り組みました。PAタグは12アミノ酸残基からなる配列で、NZ-1抗体と結合する際にループ状の構造をとります。今回の研究では、標的タンパク質のループ領域の配列をPAタグと置き換えた変異体を多数作製して、NZ-1抗体のFab断片が結合した際に、標的タンパク質の結晶化が促進されるかを調べました。

その結果、NZ-1抗体のFab断片が結晶化シャペロンとしてはたらくことが確かめられたとともに、PAタグを移植する部位を適切に選ぶことでFab断片が安定に結合するようになり、標的タンパク質の立体構造を高い分解能で決定できるようになることも示されました。今回の研究で検討した結晶化法がさらに改良されれば、モノクローナル抗体を個別に作製することなく、NZ-1抗体を共通して利用することで様々なタンパク質の結晶化を促進することが可能になると期待されます。

表彰式の様子

授与された記念メダル

日本結晶学会について
1950年創立。結晶学およびこれに密接に関連する学問の進歩を図ることを目的とする。物理学、化学、生物学、鉱物学など幅広い学問分野の専門家が、結晶学という共通言語の元、一堂に会して議論を行う学際的な学会。
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