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第11回ムギ類研究会で関根茜さんが「優秀発表賞」を受賞!

2017.01.27
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第11回ムギ類研究会で関根茜さんが「優秀発表賞」を受賞!

平成28年12月10日(土)・11日(日)に岡山大学資源植物科学研究所で開催された第11回ムギ類研究会(※)で、国際総合科学部・理学系・生命環境コース4年の関根茜さんが「優秀発表賞」を受賞しました。
受賞について関根さんにお話を伺いました。

(※)ムギ類研究会は、オオムギおよびコムギの研究者が集まる研究会で、毎年1回開催されています。

今回の第11回ムギ類研究会では、どのような内容を発表されたのでしょうか?また、どのような点が今回の受賞につながったのでしょうか?

アオウキクサから見出された植物脂肪酸のKODA(α-Ketol-OctadecaDienoic Acid)は、その液にたった1回植物の種子を漬けたり、花芽にスプレーしたり、挿し木を浸すだけで、たくさんの花や実をつけたり発根を促進して、最後には作物の収穫量を上げることが報告されています。私は植物が育つのに必要な栄養である窒素が欠乏したストレス条件で、KODAが示す効果の研究をしています。日本国内で現在まで栽培されてきた遺伝系統の分かっているコムギ96品種(コアコレクション)を使い、窒素飢餓と追肥による回復能力を調べました。KODA処理を行うことで穂数と種子数が増加した結果、収穫量は全体で約12%向上し、特に肥料切れで収量が下がる品種ほど大きな底上げ効果を観察しました。
他の学生の発表と違って、直接的に農家の収穫量が向上する可能性を含んだ結果であり、未来の世界の食料生産課題に役立つ研究発表だったことが受賞につながったのだと思います。

参加にあたって、事前準備など特に意識した点や工夫した点があれば、お聞かせください。また、苦労した点と、それをどのように乗り越えられたかも教えてください。

今まで学外の人に向けて発表した経験がなく、ポスターの内容、構成および口頭発表の要点をいかに効果的に発表するのか分かりませんでした。しかし、先生やほかの研究者の方々から、図表や文字の効果的な見せ方、要旨や結論を初めに伝え論理立てて説明する方法など、「どうしたら自分の研究の面白さと意味が共有できるのか」について繰り返しの議論を重ねる大切さをご指導いただきました。また、発表前日には実寸で出力したポスターを確認してもらい、構成や表現でわかりづらい点を率直に指摘いただき修正して臨めたので、当日は簡潔にわかりやすく伝えることができたと思います。

普段はどのような研究・勉強をされているのでしょうか?

コムギが育ちにくい土地や食糧難に苦しむ地域でも、収穫量を増やし安定的に食糧確保できるようにするための研究を行っています。葉緑素や光合成の活性度と収穫量の関係性を明らかにするため、毎週畑でコムギの成長を観察するとともに、コムギに関する様々なデータを採取し、統計的に解析しています。データ収集のほかにも、毎週行われる研究室のセミナーで、自分の研究の進捗発表と考え方のディスカッションを重ねることで、同級生や後輩から新しいものの見方や植物科学の情報を得られ、刺激を受けています。自分が発表する際は、紹介する論文の趣旨や面白さがより伝わるよう、構成や見せ方、話し方を工夫しながら取り組んでいます。

関根さんの将来の夢や、目標を教えてください。

横浜市大では授業や研究だけでなく、サンフランシスコの日本語学校におけるアシスタント教師の国際ボランティアや、メキシコの遺伝資源について学ぶ外務省のプログラムに参加するなど、様々な経験から多くを吸収して学生生活を満喫してきました。また、理科教育にも関心があり教職課程を履修しましたが、大学卒業後は大学院で理科教育についての専門的な研究を進めます。
将来は、横浜市大で学んだことを活かし、社会に貢献できるような人間になりたいと思います。

坂智広教授(植物遺伝資源科学)から関根さんの受賞についてコメントをお願いします。

関根さんは卒業研究で、実際にテニスコートの広さがある研究圃場で一年をかけてコムギを栽培しながら観察とデータの測定を行いました。資生堂と横浜市大との共同研究を通じて、KODAが環境ストレスに対して画期的な効果を持つことを示しました。地球規模での環境変動と食料危機が心配される時代の中で、毎日の地道な努力で世界を救う可能性のある研究のシーズを生みだしました。小柄で大人しい外見とは異なり、研究室での勉強にくわえて雨の日も暑い日も圃場でコムギを調査するガッツと秘めた情熱が将来性の大きい研究成果を生み、今回の受賞として評価されたのは大変素晴らしいことです。
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