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第39回日本分子生物学会で遠藤大樹さんが優秀ポスター賞を受賞!

2017.01.04
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第39回日本分子生物学会で遠藤大樹さんが優秀ポスター賞を受賞!

2016年11月30日(水)~12月2日(金)にパシフィコ横浜で開催された第39回日本分子生物学会で、荒谷康昭研究室(大学院生命ナノシステム科学研究科生命環境システム科学専攻)博士前期課程2年の遠藤大樹さんが優秀ポスター賞を受賞しました。

今回の学会では、どのような内容を発表されたのでしょうか?

「食細胞NADPHオキシダーゼ欠損好中球におけるIL-1β過剰産生機構の解析」というタイトルの発表を行いました。私たちの血液中にある白血球は、体に侵入してきた病原菌を殺菌することで、感染から身を守ってくれています。白血球には幾つかの種類がありますが、その中で最も多い好中球という白血球は、病原菌の侵入箇所に直ちに集積して、病原菌に向けて活性酸素を噴射して殺菌を行います。食細胞NADPHオキシダーゼは、好中球が活性酸素を作り出すために必要な酵素です。遺伝的に食細胞NADPHオキシダーゼを欠損すると、好中球の殺菌力が低下するため、少量の病原菌が感染しただけでも重い肺炎を患う慢性肉芽腫症(CGD)と呼ばれる病気を発症します。
ところが、この酵素が欠損していると、大腸炎や関節炎など、感染とは無関係の炎症性疾患も発症しやすいと言われています。また、私たちの研究室では、この酵素が欠損しているマウス(CGDマウス)の肺に、死んだ病原菌を投与しただけでも、重篤な肺炎が起こることをすでに発表しています。私は、この酵素が欠損すると感染とは無関係に炎症が重篤化するメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行ってきました。その結果、この酵素を欠損しているマウス(CGDマウス)の好中球は、IL-1βと呼ばれる炎症を酷くする物質を過剰に産生することを発見しました。そして、その過剰産生のメカニズムを詳しく解析して本学会で発表しました。この発見によって、CGDと呼ばれる疾患の発症メカニズムの一端を明らかにしたことが高く評価されて、今回の受賞につながったと考えています。

学会に参加するに当たって、事前準備など特に意識した点や工夫した点についてお聞かせください。

好中球を専門としている人以外の人にも分かりやすく伝えることを意識しました。研究の流れが汲みとりやすいようなポスターレイアウトにするためにイラストを用いた説明も加えました。また、私たちの研究室から計3つの演題を連続して発表しましたので、他のメンバーの研究と私の研究との関連性も理解してもらえるように工夫しました。

研究室では普段どのような研究・勉強をされているのでしょうか?

研究テーマは、「CGDマウスにおける肺炎の重篤化機構の解析」です。個体レベルと細胞レベルの両方の側面から研究を進めていますが、どちらかというと細胞レベルの解析に重点を置いており、ELISA法やウエスタンブロット法、リアルタイムPCR法といったいろいろな実験方法を用い研究を進めています。研究が行き詰っても自分自身で乗り越えられることができるために、また新しいアイデアを自分自身で思いつくことができるように、広く視野を持っておくことを意識して、幅広く文献を読むようにしています。

遠藤さんの将来の夢や、目標を教えてください。

私は、幼い頃から生き物に興味があり、色々な生き物の飼育を行ってきました。大学院へ進学し、動物を用いて生命現象を理解することや、生物が社会に利用されることの面白さについて、研究活動を通して実感できたと感じています。製薬系の企業への就職が決まっていますので、卒業後はヒトと向き合うことになります。現在の荒谷研究室での学びを糧として、より一層、責任感のある人間に成長していき、職場に活かしていきたいと考えています。 

荒谷康昭教授から今回の遠藤さんの受賞についてコメントをお願いします。

遠藤くん、受賞おめでとうございます。実験を始める前にしっかりとしたプランが立案でき、そのプランに沿って迅速かつ丁寧な実験ができることが遠藤くんの持ち味だと思います。思い通りの結果が得られなくて疲れた日々が続いたこともありましたが、それに挫けずに毎日こつこつと研究に励んで、信頼性の高い結果を着々と積み上げてきました。その努力が今回の受賞に表れただけでなく、学術論文として受理されるまでの成果に繋がりました。学会発表は今回で3回目になりますが、人に伝える技も回を重ねるごとに上手になったように見受けます。私たちの研究室で経験したことを活かして、理系の側面から社会に貢献する人材としてどんどん成長していって欲しいと思います。
Written by 広報室
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