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薬理学 五嶋教授ら研究グループが統合失調症を引き起こす新たな原因分子を発見!

2014.01.09
  • プレスリリース
  • 研究

薬理学 五嶋教授ら研究グループが統合失調症を引き起こす新たな原因分子を発見!

横浜市立大学学術院医学群 山下 直也 助教、五嶋 良郎 教授(薬理学教室)らは、統合失調症患者において発現異常が認められる分子が、統合失調症の発症に関与することを発見しました。この研究は、藤田保健衛生大学 宮川剛教授、自然科学研究機構 生理学研究所 高雄啓三特任准教授らとの共同研究による成果です。
※この研究成果は平成25年12月27日付けで『Frontiers in Behavioral Neuroscience (フロンティアーズ イン ビヘイビアル ニューロサイエンス)』にオンライン掲載されました。

※本研究は、文部科学省「イノベーションシステム整備事業 先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム」の一環として、また、独立行政法人科学技術振興機構、日本学術振興会、ならびに、一般財団法人 横浜医学振興財団の研究補助金により行われました。
☆研究成果のポイント
○脳の形成に重要な役割を果たす「クリンプ1」というタンパク質を発現できないマウスが、統合失調症患者さんが示す症状に類似した行動異常を示すことを発見した。

○「クリンプ1」を発現できないマウスに統合失調症の治療薬を投与すると症状が改善した。

○一部の統合失調症患者において、「クリンプ1」がうまく機能しなくなっていることが明らかにされつつあるため、本知見は、統合失調症を発症する新しいメカニズムの解明や治療薬の開発に繋がると考えられる。

研究概要

統合失調症は、人口の1%ほどの人が発症する精神神経疾患であり、日本でも80万人以上の方が治療を受けていることが知られています。しかしながら、統合失調症になる原因は多岐にわたると考えられており、どのように病気になるのかは殆ど分かっていません。私達は、「クリンプ1」という、脳の形成に重要な役割を果たすタンパク質が、統合失調症の発症に関与することを発見しました。
「クリンプ1」は、正常な脳の発達に重要な役割を果たすタンパク質で、「クリンプ1」を発現できない遺伝子改変マウスでは、脳の発達が障害されることが分かっています。近年、統合失調症の発症には、脳の発達障害が関係することが分かってきました。そこで私達は、この遺伝子改変マウスが、統合失調症に類似した症状を示すかどうかを調べるため、幾つかの行動試験を行いました。
その中の一つとして、遺伝子改変マウスが「驚愕反応抑制の低下」という症状を示すことが分かりました(図1)。「驚愕応答抑制」とは、突然に強い音刺激を動物に与えることで生じる驚きの度合い(驚愕反応)が、その強い刺激の直前に比較的弱い刺激を与えることで抑制される現象のことです(図1)。一部の統合失調症患者さんでは、私達が調べた遺伝子改変マウスと同様に、「驚愕応答抑制の低下」が認められます。また、統合失調症の治療薬として用いられている「クロルプロマジン」を投与したところ、遺伝子改変マウスの症状が改善したことから、「クリンプ1」を発現できない遺伝子改変マウスが、統合失調症患者さんに類似した症状を示すことが分かりました。
ごく最近になり、米国とドイツのグループが共同で、一部の統合失調症患者さんでは、「クリンプ1」の発現が異常になり、「クリンプ1」がうまく働かなくなっている可能性を指摘しました。しかし、実際に統合失調症の発症に関与するかについては分かっていませんでした。従って今回の研究から、「クリンプ1」が上手く働かないと、統合失調症に類似した症状を示すことが初めて明らかにされたことになります。今後は、この遺伝子改変マウスを用い、統合失調症に有効な治療薬の開発を目指していきたいと考えています。


(図1)「クリンプ1」を発現できない遺伝子改変マウスでは、驚愕応答抑制が低下するが、この症状はクロルプロマジンに投与により改善する

お問い合わせ先

(本資料の内容に関するお問い合わせ)
公立大学法人横浜市立大学 学術院医学群 薬理学
山下 直也、五嶋 良郎
TEL:045-787-2593 / 2594
E-mail:ynaoya-ycu@umin.net (山下)
goshima@med.yokohama-cu.ac.jp (五嶋)

(取材対応窓口、資料請求など)
公立大学法人横浜市立大学 先端医科学研究課 立石 建
TEL:045-787-2527 FAX:045-787-2509 sentan@yokohama-cu.ac.jp
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