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国際総合科学群教授大関泰裕の糖鎖生物学研究ユニットが、理研バイオ解析チームと共に、スフィンゴ糖脂質の糖鎖構造を解読し腫瘍細胞の増殖抑制を惹起する、全く新規なレクチン"MytiLec"の一次構造を決定!

2013.04.05
  • プレスリリース
  • 研究

概要

 学術院国際総合科学群教授大関泰裕(糖鎖生物学)は、生命科学研究や環境指標の実験動物としてEST遺伝子ライブラリーのデーターベース化も行われている軟体動物二枚貝のムラサキイガイから、Fabry病の蓄積物やO157菌毒素の標的として知られるグロボトリオース(Gb3)スフィンゴ糖脂質に結合し、本糖鎖を発現するリンパ腫細胞を選択的に殺傷するMytiLecレクチンタンパク質を発見し、理化学研究所(埼玉県和光市)バイオ解析チームヘッド堂前 直氏と共に、動物レクチンとして全く新規な一次構造(B3EWR1(LEC_MYTGA))を決定した。
 本成果は長崎国際大学薬学部専任助教藤井佑樹(本学大学院出身者、客員研究員)、文科省国費留学生・本学大学院生博士課程 イムティアジ・ハサン (ラジャヒ大学Assistant Professor)、本学大学院生小出康裕、本学名誉教授安光英太郎、同准教授ロバート・カナリー、チッタゴン大学准教授S M アベ・カウサル (本学大学院出身者、元文科省国費留学生・JSPS外国人博士特別研究員)氏らとの共著論文として、米国の伝統ある学術雑誌The Journal of Biological Chemistry (平成24年12月28日刊 Vol 287, 44772-44783頁2012年)に掲載された。

研究概要

 レクチンはウイルスからヒトに至る生命体に広く存在する糖鎖結合性タンパク質の総称で、細胞表面のスフィンゴ糖脂質と結合したシグナルが細胞内に伝わり、増殖を制御する働きが近年注目されています。研究グループは、ムラサキイガイから-ガラクトース糖と結合するレクチンを発見し、学名に由来してMytiLecと名づけました。
そのアミノ酸配列を質量分析とプロテインシークェンサーで解析すると、既知タンパク質と全く類似性のない新規な一次構造が決定されました。MytiLecは149アミノ酸からなる単純タンパク質で、アミノ末端のトレオニンはアセチル化され、塩基性アミノ酸がアミノ基側、酸性アミノ酸がカルボキシル基側に集まる50アミノ酸からなる類似のサブドメインが3回反復した非常にユニークな構造を有しました。
 レクチンの糖鎖結合性を網羅的に解析し、O157細菌が分泌するベロ毒素が細胞に結合する際の足場となるグロボトリオース(Gb3:Gal1-4Gal1-4Glc)糖鎖に結合することが判明したため、Gb3を多く発現するヒトリンパ腫Raji細胞にMytiLecを加えると、後期アポトーシス(プログラムされた細胞死)が誘導された。これらの結果から、MytiLecは、スフィンゴ糖脂質を介す細胞の情報伝達を研究するための優れた糖鎖研究分子として活用され得ることが期待されました。

今後の期待

 生命科学分野では、糖鎖を介した細胞増殖制御の研究が注目されており、MytiLecレクチンは、本学で発見されたユニークな一次構造を持つ糖鎖レセプターです。今後、構造生物学者との共同研究により、その立体構造を明らかにし、糖鎖結合の仕組みを原子レベルで解析していくことで、Gb3スフィンゴ糖脂質に結合したMytiLecからどのようなシグナルが発信され、リンパ腫細胞が死んでいくのかなど、細胞機能に関する生命科学の新たな知見が解明されていく可能性があります。
 本研究は、JSPS科学研究費補助金「基盤研究(C)」(22580226)、同「特別研究員奨励費」(09F09100)、文部科学省共同利用・共同研究拠点事業「海洋生物学研究共同推進拠点JAMBIO」公募研究配分金、公立大学法人横浜市立大学研究推進課ユニット配分費「ケミカルバイオロジー&バイオアフィニティー研究」、地域貢献活動支援事業費(八千代エンジニヤリング(株))、横浜市温暖化対策統括本部横浜グリーンバレー・ブルーカーボン実証実験事業の支援により行われた。
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