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令和3年度実績 基礎研究医養成活性化プログラム

基礎研究医養成活性化プログラム

実践力と研究力を備えた法医学者育成事業

(平成29年度文部科学省補助金採択事業)

◆令和3年度の活動実績

活動報告書が出来上がりました。こちらからご覧下さい。 

◆2022年3月24日 第11回「COVID-19の画像診断」山城恒雄先生

本学のCOVID-19対応の最前線でご活躍の山城先生にご講義いただきました。COVID-19肺炎は、他の起因菌・起因ウイルスに比較して特徴的な画像を呈することについて、実際の画像を提示して丁寧にご説明いただきました。画像をみることでCOVID-19肺炎の病期を推測できるという説明には驚きましたが、実際の画像を見ながら丁寧に解説いただくことで「なるほど」と合点できました。臨床医療から少し距離のある法医学者にとっては、COVID-19についての最新の知識を得る貴重な機会でした。また、COVID-19について各自が疑問に思っていることにも丁寧にお答えいただき大変勉強になりました。 

◆2022年3月11日 第10回「『法医学者の使命』合評会」福島至先生

福島先生の提案で、2021年8月に刊行された東京大学名誉教授 𠮷田謙一の『法医学者の使命 「人の死を生かす」ために』を読んでの合評会を開催しました。医師は日常的に論文についての抄読会はしますが、一冊の書籍を読んでその内容について議論するという講義はほとんど経験したことがなく、参加者にとってはとても新鮮でした。法医学を専門とする医師が法医学に関する一般書籍を読んで、何を考えたのかについて話し合うことは若手・ベテランを問わず興味深いものでした。本書で扱われているテーマの中には、今の法医学的知識や技術では証明することができない病態に関するものも含まれており、若い先生が研究課題を探すという意味でもよい機会であったと感じました。 

◆2021年12月16日 第9回「若手法医学者の不安と悩み」磯崎翔太郎先生

現在は大学院博士課程の最終年度にあたる磯崎先生から、研究面での苦労や経験について率直な話を聞かせていただきました。
学生時代に法医学者になることを決意され、多くの苦難に直面しながらも、法医学者としての未来に向けて努力されており、その姿勢は我々も見習うべきと感じました。大学院生であるにもかかわらず自らの研究をプランニングして、成果をあげ、研究費を取得されていることは素晴らしく思います。
磯崎先生の益々の活躍を祈念するとともに、背筋が伸びる思いで拝聴しました。

◆2021年12月10日~11日 第3回 日本法医病理学会(長崎)

当初、9月に予定されていた学会でしたが、新型コロナウイルス感染症が落ち着いている時期に対面学会として開催されました。我々にとっても久しぶりの対面での学会であり、いつも以上に熱心に、活発な議論が行われました。
今回は「法医鑑定を再考する」をテーマとし、シンポジウム形式で以下の演題で発表があり、それぞれに深い議論がなされました。

・「 法医鑑定の基礎」 科学警察研究所 福永龍繁先生
・「 法医解剖時の写真撮影法の紹介」 横浜市立大学 井濱容子教授
・「 剖検にて脳を固定する意義」 杏林大学 北村 修先生
・「 損傷の視方から鑑定まで」 福岡大学 久保真一先生
・ 「薬毒物鑑定の重要性について」 旭川医科大学 清水惠子先生
・「 法医学鑑定の実際と研究」 九州大学 池田典昭先生
・「 鑑定結果の説明」 香川大学 木下博之先生

本学会では、法医鑑定における歴史から現代の課題まで、多岐にわたる問題提起がなされ、若手の法学者にとっては初めて聞く話も多く、興味深い内容でした。受講生も活発に質問し、法医鑑定に関する理解を深めることができました。
コロナ禍で学会が遠隔実施されるようになりましたが、やはり対面には対面の良さがあることを改めて実感した機会となりました。

受講生の声

本学会では、法医鑑定について、実務と研究をテーマとしたシンポジウムが行われました。「法医鑑定を再考する」というシンポジウムでは、解剖時の写真撮影法、所見の取り方、病理組織学的検査や薬毒物検査、鑑定結果の説明など、鑑定の各段階で求められる技術や考え方を基礎から丁寧に学ぶことができました。発表を通して、他大学の実務の様子を垣間見ることもでき、他施設から学ぶ貴重な機会となりました。また、「法医鑑定に応用が期待される研究」のシンポジウムでは、分子生物学を用いた法医病理学研究の動向についての発表がありました。現在、私はPCRなどの分子生物学的手法により死後にウイルス感染症を診断するための研究に取り組んでおりますが、紹介された手法は研究の発展につなげられるかもしれないと感じました。
新型コロナウイルスの流行により、約2年ぶりに現地開催の学会に参加することができました。久しぶりに全国の先生方にお目にかかることができ、法医実務や研究に尽力されている様子を伺うことができ、とても励みになりました。

受講生の声

令和3年12月10および11日に長崎大学医学部にて開催された第4回日本法医病理学会学術全国集会に参加しました。「法医鑑定」を中心としたプログラムで、自身が解剖補助した症例や小児虐待の鑑定書を作成し始めた大学院生の私にとっては、現在だけでなく今後とも参考にしたい内容でした。特に、「薬毒物鑑定の重要性」「法医鑑定の実際と研究」のセッションで紹介された再現実験はとても印象的でした。鑑定の信頼性を高めるための研究の大切さとそれを証明してきた諸先生方の努力を感じ、法医学を追求するモチベーションにつながりました。また、新型コロナウイルス流行のためこのような対面開催での学術集会に参加することはほとんどなかったため、教室外での法医学者とのネットワークを築く貴重な機会となりました。

◆2021年11月25日 第8回「保険金支払いの実際と法医学者の関わり方」浅川敬太先生

医師免許を持ちながら弁護士として活躍されている浅川先生に、保険会社からの照会に関する基礎知識や注意事項について分かりやすくご講義いただきました。
法医解剖や検案を行うと、後日、保険会社からの質問状が届くことがあります。保険会社の質問が意図するところや利用目的などについて分かりやすく解説いただき、保険会社からの照会に回答する際の参考になる知識を多数ご教示いただく貴重な機会となりました。

◆2021年10 月19日 第7回「研究倫理についての基礎知識」榎本祐子先生

本年の医学系倫理指針の統合を受けて、若手研究者が研究倫理について理解する機会は貴重であり、関西医科大学の倫理委員会事務局でお仕事をされた経験を持つ榎本先生にご講義を頂きました。指針の基本を踏まえた上で、具体的なQ&Aなども盛り込んで非常に分かり易くご説明いただきました。研究の種類や方法によって申請の要否は難しい場合がありますが、倫理申請は研究者自身を守るという意味もあることを知り、今後に活かしていきたいと感じました。 

◆2021年10月4日~31日 第105次 日本法医学会学術集会総会(福岡)

新型コロナウイルス感染症の影響で、当初6月に開催予定であった学会が9月に延期されました。さらに、延期された日程が緊急事態宣言の対象時期となってしまったため、現地での開催は自粛され、インターネット上で動画やポスターを掲示する形の開催となりました。
受講生にとっては、学会に参加して多くの法医学者から直接指導を受ける機会が減り残念な結果となりましたが、一方で登録したポスター発表がインターネット上に掲載されました。 

受講生の声

今回は死後CTと解剖所見を比較した症例報告を行いました。緊急事態宣言下であったので仕方がありませんが、現地で発表できず残念に思います。次の機会には、現地で発表して多くの先生方の意見を拝聴できることを期待しています。

◆2021年9月21日 第6回「病理解剖症例から考える~末期がんと肺炎~」三戸聖也先生

末期胃がんの在宅療養中に肺炎を発症して、搬送先の病院で死亡した症例を中心にして、癌の組織学的解説から肺炎所見のみかたについてのご講義でした。法医解剖と病理解剖の大きな違いのひとつは悪性腫瘍についての取扱いです。病理解剖では、悪性腫瘍の症例では多くの臓器について免疫染色を含めた多くの染色をして詳細な検討が行われるため、若手の先生にとっては他分野を知る良い機会となりました。死体検案書の書き方についても議論がなされました。肺炎の組織像から組病態を推察することの重要性についても言及があり、肺のホルマリン固定の方法やマクロ写真の取り方のコツについてもご教示いただきました。

◆2021年8月25日 第5回「法医学者に必要な法歯学の基礎知識」下地さおり先生

法歯学を専門に学位を取得された下地先生にご講義をいただきました。歯科医師が身近にいない環境では、法歯学について詳細に学ぶ機会がなく、これまで歯牙に関する講義を受けたことがない若手の先生には大変勉強になる講義でした。各歯牙の特徴、乳歯と永久歯の違いなどの基礎歯科学から、実践的なデンタル所見の取り方まで広くお話しいただきました。東日本大震災でのお話もあり、法歯学の重要性について理解を深めることができました。

◆2021年7月27日 第4回「心筋炎の基礎知識」三戸聖也先生

法医学者としての経験を持ち、現在は臨床病理医として活躍されている三戸先生より、心筋炎の病理診断についてのご講義が行われました。心筋炎の分類から、組織所見のみかた、病態について多くの症例を提示しながら丁寧に解説いただき、各種特殊染色を使い分けることによって、心筋炎の病期が推定できることについても言及がありました。聴講者からは実際の解剖例の心筋炎について、病理組織診断や病期や病態について質問があり、活発な質疑が行われました。死因に繋がる心筋炎についての知識が深まり、有意義な講義となりました。

◆2021年6月22日 「新型コロナウイルス感染症関連死について~ワクチン後死亡をどう考えるか~」山本琢磨先生

新型コロナウイルス感染症の爆発的な感染拡大を受けて、法医実務でも関連する死体を取り扱う機会が増加しています。感染が疑われる症例を解剖・検案する際の感染防御と、その死因判断が大きな課題となっています。ワクチン接種が進む中でワクチン接種後に死亡する症例も散見され、個々の死因判断のみならず、法医学が社会に還元できることについての議論も行われました。また、各種届け出に関する基準についても情報交換することができました。

◆2021年5月25日 第2回 「死因論を考える(2)」山本琢磨先生

前回の山本准教授の講義を受けて若手の先生より具体的な症例についての質問が多く寄せられたため、翌週に続編を開催しました。頸部圧迫による窒息は「窒息」なのか、生き埋めになった症例の死因について、また新生児・乳児の死因判断について等、若手の先生が疑問に思っていることや検案書作成の際に悩む症例について活発な議論が行われました。

◆2021年5月18日 第1回 「死因論を考える」山本琢磨先生

兵庫医科大学の山本准教授より、法医実務において大変重要な死因の考え方についてご講義頂きました。乳児死亡や入浴中死亡、頸部圧迫症例などについて実際の症例を提示しながら、どのような所見をどのように解釈して死因を判断していくかについて、実践的なトレーニングが行われました。また、死体検案書の書き方から死因論まで、幅広いテーマについて活発な議論が行われ、大変有意義な機会となりました。

◆4月~ 放射線科医との解剖・検案症例カンファレンス

 本学では全ての法医解剖と検案症例に対して死後CT撮影を行っており、毎回CT撮影時には放射線科の医師立ち会いのもとで解剖前の読影をお願いしています。2週間に1回のペースで、解剖結果を放射線科の医師にフィードバックし、解剖所見とCT所見についての検討会を開催しています。我々法医学者にとってはCTの読影を学ぶ大変貴重な機会であり、CTの威力と診断の難しさを日々実感しています。

事務担当:横浜市立大学医学国際化等担当