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活躍するYCU生—三上雅史さん(生命ナノシステム科学研究科 生命環境システム科学専攻)第131回講演会日本育種学会優秀発表賞を受賞しました。

ー今回の学会では、どのような内容を発表されたのでしょうか?

今回の学会では、「CRISPR/Cpf1を用いたイネの多重遺伝子破壊」というタイトルで口頭発表を行いました。生物のゲノムを自由に改変できるゲノム編集技術の進歩が著しく、その中でもゲノム編集のツールの1つであるCRISPR/Cas9は昨今脚光を浴びています。CRISPR/Cas9は、Cas9と呼ばれるタンパク質(DNA二重鎖切断を担う)とguide-RNA(gRNA:標的配列の認識を担う)で構成され、様々な生物種のゲノム編集に使われています。その一方で、近年Cpf1(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)と呼ばれる新たなタンパク質が登場しました。Cpf1はProto-spacer Adjacent Motif(PAM)配列や二本鎖DNA切断末端の形状がCas9とは異なります。従ってCpf1による植物のゲノム編集が可能になれば、ターゲット配列の制限が緩和され、変異スペクトラムの拡大が可能になることが期待されます。またCpf1はNuclease活性だけではなくRNase活性も有するため、1つのプロモーターでポリシストロニックに転写させた複数のCRISPR RNA (crRNA)を機能的な単位に分割できると考えました。そこで本研究では、Francisella novicida 由来のCpf1(FnCpf1)を用いたイネの標的変異導入実験(*1)と、ポリシストロニックに転写させた複数のcrRNAによる多重遺伝子破壊を行い、その成果を発表しました。

(*1)
Efficient targeted mutagenesis of rice and tobacco genomes using Cpf1 from Francisella novicida
Endo A*, Mikami M*, Kaya H and Toki S. (* co-first authors)
Scientific Reports 6, Article number: 38169 (2016)
http://www.nature.com/articles/srep38169

Francisella novicida由来Cpf1によるイネおよびタバコゲノムの高効率な標的変異導入(日本語版)
http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/83508

ー参加するに当たって、事前準備など特に意識した点や工夫した点、苦労した点があれば、お聞かせください。

ゲノム編集のツールの1つとしてCRISPR/Cas9が注目されている中、CRISPR/Cpf1を植物のゲノム編集に使用する利点をアピールすることを意識して発表しました。今回の発表では、FnCpf1のRNase活性によって、1つのプロモーターでポリシストロニックに転写させた複数のcrRNAによる多重遺伝子破壊の内容を中心に発表しましたが、Cas9とCpf1の違いを理解してもらうことも念頭にもっていたので、短い発表時間で、イントロから結果までのスライドを端的に説明できるようにしました。

—今回の受賞を、今後の研究活動等でどのように生かしていきたいと考えていますか?

育種学会で受賞できたことは、今後の研究を行うためのモチベーションの向上につながりますので、より一層研究等を頑張りたいと思います。

—土岐先生から今回の三上さんの受賞についてコメントをいただきました。

飛躍的な発展をしているゲノム編集の分野は、世界的にとても競争率が高く、研究の独創性や新規性だけではなく、成果を短期間で出すためのスピードも求められる状況にあります。三上君は研究のスピードをさらに加速させ、独創性の高いゲノム編集系を構築すべく研究に勤しんでいますが、今後も歩みを止めることなく、汎用性が高く、かつ長く、利用される画期的な成果を出して頂きたいと思います。

(2017/7/27)

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