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横浜市立大学・文京学院大学・東京学芸大学 
三大学合同 オンラインでつながる多文化共生の学び



国際教養学部 坪谷美欧子准教授
【研究分野】社会学
国際移民の社会学の中でも世界に広がる中国人の移動現象を中心に、移民集団のナショナル/エスニック・アイデンティティについての研究を行う。

YCU国際教養学部の坪谷美欧子ゼミでは、グローバリゼーションや多文化共生、マイノリティ、都市・地域社会などをテーマに問題分析に必要な社会学的な思考・理論・方法について学んでいます。現在2年生から4年生まで20人のゼミ生が所属するそんな坪谷ゼミでは、7月27日に東京学芸大学・文京学院大学と合同で「オンラインでつながる多文化共生の学び」と題して学生によるゼミ活動の発表会が行われました。

今回発表が行われたテーマは3つで、「コロナ禍の日本社会における外国人の現状と課題」、「外国につながる子供の多様なニーズに応える教育体制をより充実させるには—地域日本語教育と学校教育の境界を超えて」、「初等教育において外国につながる児童の居場所を作るためには—学校生活を通じた寛容な心の育成—」、それぞれ30分間フィールドワークの発表が行われ、最後に全体での討論が行われました。今回の3つの発表テーマをご紹介します。



1. 「コロナ禍の日本社会における外国人の現状と課題

このチームがテーマにしたのが、コロナ禍において様々な活動の制限や移動等の制限がおこなわれる中、祖国を離れ日本で暮らす移民への影響を、「労働」を足掛かりとして在日外国人の生活に与えた影響を改めて考察し、その課題について考えるというもの。コロナ禍の影響をもろに受ける宿泊業・飲食サービス業には、技能実習生や留学生など多くの外国人が従事していることから、適切な支援を得られない移民はこのコロナ禍において非常に大きな影響を受けていると言います。また、技能実習生の受け入れ先である企業等からのインタビューなども行い、コロナの影響や外国人労働者を受け入れるにあたって国のあるべき姿などについて考察を行いました。このチームでは、今回のコロナ禍で露見したのは、一過性の労働問題ではなく、日本の外国人受入体制における構造的な問題であと結論付けました。外国人労働者を、単なる労働力としてみなすのか、地域社会の一員として将来の発展のための人材として捉えていくのか、日本社会自体がコロナ禍で試されている、と我が国の外国人労働者をとりまく状況の課題をあぶり出しました。


2.「外国につながる子供の多様なニーズに応える教育体制をより充実させるには—地域日本語教育と学校教育の境界を超えて」

外国につながる児童に対して、学校教育と地域での日本語教育の境界を越えた支援を充実させていく必要があるという問題意識の下で、それに必要なことは何かを、このチームでは考えました。横浜市内においても外国人の人口が増え続け、日本語の指導が必要な外国籍の児童生徒数が増えています。そんな児童への日本語学習指導の取組としては、「国際教室」というものがあげられますが、その「国際教室」はまだまだ公立学校などでは設置が追い付かない現況があると言います。学校に在籍する外国につながる子どもの支援を、どのように充実させるべきか、という点が大きな課題です。このチームでは、日本の学校の現状から、地域の外国人住民との多文化共生における実情、地域における日本語教育などの観点からこの課題を考察し、支援を必要としている人に必要な支援を届けるには、「地域の中の日本語教育」という基盤をより確立させていくことや、その情報発信、事業を推進する中で、地域内での人と人とのつながりをさらに強めることなどが重要だとまとめました。


3.「外国につながる子供の多様なニーズに応える教育体制をより充実させるには—地域日本語教育と学校教育の境界を超えて」

在留外国人数と児童数は増え続けており、小学校等にも一定数外国につながりを持つ児童が在籍しているといいます。一方で学校現場では「国際教育」が盛んにおこなわれ、多文化理解や国際理解につながる教育が行われています。そこで、なぜ、現在の学校での国際教育では外国につながりを持つ児童が過ごしやすい居場所を作る事ができていないのかという課題意識からこのチームは調査・検討を行いました。国際教育を行う教員や、外国にルーツを持つ子どもの親などにインタビューを重ねながら、その子どものルーツによるアイデンティティを尊重しつつも居場所を形成し、同時に学校で行われている国際教育が真の多文化理解、国際理解につながる教育になっていくためには何が必要かを丁寧に考察していきます。このチームが考えた一番大切なことは、児童同士の日常的な関わりだと結論付けました。しかしそれは環境によって状況が異なるため、児童同士の関わりに関係なく居場所ができるように、学校で行われる国際教育の改善を行うことが必要であるとして、発表をまとめました。

以上、今回の合同発表会では日本で共生する様々な立場の外国人に焦点を当て、調査報告が行われました。
このゼミでの学びについて、ゼミの担当教員である坪谷美欧子准教授に、目指す学びや学生に獲得してほしい視点などについて聞きました。


坪谷先生コメント

今回プレゼンテーションを行った3年生のゼミ生は、今年4月よりグループ分けやテーマ選び、グループごと調査活動など発表のための準備をほぼ4か月の時間をかけて進めてきました。
はじめて学生だけの本格的な調査・研究活動だったので、様々な戸惑いや葛藤もありましたが、他大の学生さんの参加があることで良い意味での緊張感をもって進めていましたし、明確な問いを持ったプレゼンテーションができていました。
今回のような研究発表会だけでなく、ゲストを招いた講演会や自由なディスカッションなどの形で多文化や多様性について考える他大学との交流の機会についても今年度中に計画しています。

今後も坪谷ゼミでは、国際都市横浜における都市や地域社会の多様性についての課題について、様々な角度から学びを深めていきます。


講義風景



(2021/09/17)

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