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第4回データサイエンスセミナー〜株式会社ファミリーマート

データサイエンス学部では、実社会におけるさまざまなデータ分析の活用事例について学ぶ「データサイエンスセミナー」を開催しています。 第4回にあたる今回のセミナーでは、いまや人々の生活と切っても切り離せないコンビニ業界で、絶対的な存在感を示す株式会社ファミリーマートの阿部大地氏と溝口憲司氏にお話を伺いました。

挑戦し続ける流通業界でマーケティングに活かされるデータサイエンス_風景1
数字から読み解くファミマの快進撃

上半身ファミチキのファミチキ先輩が、全力で奮闘する動画広告をご覧になったことがあるだろうか。新卒採用情報のページには、「最近のファミマはヤバい。」というコピーが踊るほど、ファミリーマートはいま変化の真っ只中にあり、今回のセミナーの端々にも、新しさ、楽しさへの工夫が感じられ、学生のココロを捉えて離しません。

近年、小売業界の売上高は百貨店の低迷をよそに、スーパーやコンビニ業界が好調。ファミリーマートも全国に16,430(2019年5月末)店を構え、売上高は3兆円を超えて業界第2位となっています。一日の平均来客数は約1,500万人。ざっと計算すると、国民1人あたり年間に45〜46回ファミマを訪れていることになります。そのために、毎週約200の新製品が登場し、常時3,000アイテムある店舗内の商品は3〜4ヶ月で入れ替わります。
そんな、変化の激しい業界内で常に先端を走り続けるために、同社は多くのフランチャイズ加盟店と共に4つの挑戦を進めていると言います。

まず、クーポンやポイントなど、買い物に便利な新機能付きの決済アプリなどをリリースするという【デジタル戦略】。
次に、パナソニックと協業し、IoTを駆使し、お客様の利便性だけでなく、実際に働くスタッフの作業軽減を目的とした【次世代のコンビニエンスを目指す】というもの。
さらに、24時間フィットネスやコインランドリーを併設した【新業態店舗の展開】。
そして、本部そのものの【働く環境】も大改革が行われています。決まった席を持たずに、その日仕事をするメンバー同士で近くに席を設けるフリーアドレスのスタイル。服装もスーツが必須ではなく、女性や外国人が働きやすいダイバーシティ化など、カジュアルで働きやすい環境づくりを推進しています。

挑戦し続ける流通業界でマーケティングに活かされるデータサイエンス_風景2
商品をすすめなくても売れる仕組みづくり

マーケティング担当で商品開発などに関わる阿部氏によれば、「マーケティングはとても身近なもの」だと言います。
ニーズのあるものを探し、そこにマッチした商品やサービスを開発して提供するのがマーケティングの基本です。「この商品をどう売るか?」ではなく、その前にお客様を正しく認識し、「お客様がほしいものをどうやって売るか」が大切。おすすめしなくても買ってくれる仕組みをつくるのが、マーケティングの課題なのです。
P.F.ドラッカーが著書『マネジメント』の中で語っている、「マーケティングの究極の目標は、セリング(売り込み)を不要にすること」———つまり「商品、サービスが店頭に並ぶ前から、売れる仕組みを作る」ことを目標としたいのです。

では、マーケティングにおいて、データはどのように活用されているのでしょうか。たとえば、この1年で売上げが5%減った、売上げを回復させたいという問題に対し、データから解決策を導き出すためには、まず市場分析を行います。

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簡単に解説すると、近年、男性の就業者が減少しているのに比べ、25〜44歳の女性就業率が増加していることが明らかとなった場合、この層をターゲティングし、働く女性に便利な「中食商品」(人手によりあらかじめ調理され、自宅に持ち帰る惣菜などの食品)の強化を図ります。
さらに、4P(1. Product 2. Price 3. Place 4. Promotion)分析によって、夕食準備に時間がない主婦に向けたお総菜(1.)を、家族分購入しても1,000円以内の価格(2.)で、夕方、牛乳を買う有職主婦が多いため、牛乳売場の隣(3.)に、朝のTV番組でのCMや値引きをしてより買いやすく(4.)提供することで、売上げを10%増やすという解決策を考えるわけです。

そうした課題解決には、一人でなく、それぞれの得意分野を生かしてチームで対応していくのが理想的です。その中で求められるデータサイエンティスト像とは、単なる分析屋ではなく、課題を理解してICT(情報伝達技術)を活用しながら、最適な分析手法を提案・実践できる人なのです。

「原因」を突き詰めると「結果」が見えてくる

同社で市場調査、商品調査を担当している溝口氏によれば「市場分析はすでにあるデータを見ることも大事。でも実際に外に出て自分の目で見て顧客のように感じることのほうが得られることは多い。」と言います。
「講義の中で気になったことがあれば、実際にその現場に行って自分の目で見て、ぜひ感じ取ってください。」と同氏。「現場に行って答え合わせをする」、「現場で仮説を立ててみる」、これが調査や分析ではとても重要なのです。消費者行動を理解するには、「自分自身がひとりの消費者になりきること」、そして「同じ体験をしてみること」が一番の近道というわけです。

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人が店で買い物をするとき、そこには必ず「きっかけ=原因」と「結果」が存在します。たとえば、暑いから(原因)→喉が渇く(結果)、喉が乾いたから(原因)とかクーポンが届いたから(原因)→飲み物を買いに行く(結果)といった具合に。このような因果関係を定量的に把握することは、マーケティングにおいてはとても重要だという同氏。「ここでは、みなさんも馴染みがあるコンビニのおにぎりを例に売上の要因分解、モデリングをしてみます。」

まず、おにぎりが売れる(買われる)原因は何なのか?
●気温が高くなると行楽などで外出する機会が増える。
●雨が降ると外出を控えるので機会が減る。
● おにぎり100円セールがあると普段1個買っている人が2個買ったりするかも。
といった仮説を立て、売上や気温・降水量などの時系列データを用意します。これらのデータを多変量分析にかけると、この条件で販売した場合の売上予測が見込めるのです。他にも、他社のセール情報やテレビCMの投入、SNSの広告配信、商品構成、地理情報といった様々な原因系のデータも使用して予測を行うことで精度を高めていきます。

パパパコメントにスフレ・プリン。学生目線のセミナー

今回のセミナーで、同社の柔軟で革新的な側面を特に感じたのが、受講する学生たちに、その場でパパパコメント(スマホなどからメッセージを投稿する機能)を使ってもらい、スライド上にリアルタイムでコメントを流したり、アンケートをリアルタイムで集計・分析して、スライドに映し出したりするなどの工夫を採り入れていること。

特に学生たちが嬉々としてざわめいたのが、ファミマの開発商品スフレ・プリンを試食してアンケートに答えるという、リサーチデータ分析の場面でした。とろける食感のプリンとふわふわスフレを一度で楽しめるハイブリッドスイーツ。こんな授業であれば、だれもが参加したいに違いありません。 アンケートによって、見た目、味、価格などを判断してもらい、この商品の優先課題や強みを分析。学生側からも「価格をもう少し安く」「激ウマ!!」「パッケージが地味」「スプーンを改良して」など、素直な回答が飛び込んできます。企業側から見て貴重なコメントが得られるだけでなく、具体的な条件を絞り込むことで、想定したターゲット層の評価が得られているかなどの検証も可能になります。 これからの新しい世代に寄り添い、「挑戦」をキーワードにまい進しようとするパワーの影に、データサイエンスに裏打ちされた、確かな礎を感じたセミナーでした。

講師プロフィール
株式会社ファミリーマート 商品売場企画部
阿部大地(あべ・だいち)氏

阿部大地(あべ・だいち)氏

2000年にサークルケイ・ジャパン株式会社に入社し、スーパーバイザー(店舗コンサルタント)を経て、デジタルマーケティング、CRMを担当。経営統合により、ファミリーマートに入社後は、オウンドメディア、商品、販促プロモーションなど幅広いマーケティングに従事。法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科でMBA(経営管理)を取得し、同大学院の特任講師を兼任。

溝口憲司(みぞぐち・けんじ)氏

1996年にサークルケイ・ジャパン株式会社に入社し、バイヤー、営業企画、商品企画を経て、現在、マーケティング、市場調査、データ分析を担当。法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科でMBA(経営情報)を取得後、法政大学イノベーション・マネジメント総合研究所 特任研究員(マーケティング、ビジネスデータ分析)を兼任。

(2019/07/01)

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