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マーケティングビジネスにおける情報の価値とは 第4回データサイエンスセミナーを開催

2018年4月に誕生したデータサイエンス学部では、実社会におけるさまざまなデータ分析の活用事例について学ぶ「データサイエンスセミナー」を開催しています。第4回のセミナーは、株式会社インテージホールディングス 代表取締役社長の宮首賢治氏にお話をいただきました。

データのプロを目指すための心構えとは

株式会社インテージホールディングスは独自に収集した各種データを消費財メーカー、製薬メーカー、サービス業などに提供したり、データを解析してマーケティング活動を支援するソリューションなどを提供しています。今回はマーケティング支援事業を展開する視点から「情報の価値とは何か?」をテーマに講演をいただきました。

宮首氏ははじめに、日本のサッカーがプロ化して強くなったのを例に挙げ、データのプロを目指すのであれば、アマチュアとの違いを見せつけるような腕前を持たなければいけないと語りました。

次いで、各報道機関による内閣支持率の推移を見ながら、情報の価値はどこにあるのかを説明しました。各社の示した数値は直近だけを見比べても差があり、傾向は似ているものの推移にも違いがあります。同じような調査なのにどうしてこのようなことが起こるのでしょう。同氏によると、各社の出した数値が間違っているのではなく、データから「まったくの真実」を捉えるのは難しいのだそうです。

調査ビジネスでは、何かを単純に聞けば分かるではなく、設計によって差が生じるのです。例えば、調査員が対面して聞くか、電話で聴取するかによって、応え方も変わります。質問項目や回答肢の数や言葉によって、支持率が変わってくるのだそうです。調査とは与えた刺激によって反応を得ることであり、どういう聞き方をするかが、プロとしての技の見せどころなのです。

また、調査の命はトレンド(時系列)にあるのだそうです。その価値は瞬間の数値ではなく、動きそのものです。過去のデータと比べられるように、同じ聞き方で調査を続けることが大切だと語りました。

膨大な情報の中から価値を見いだすことの難しさ

化粧品などの日用雑貨品や食品に見られるNo.1広告に業界標準として活用されているのが、同社の小売店パネル調査です。これは、全国の小売チェーンから約5,000店舗のPOSデータを収集して分析したもので、ここでも同じ調査を継続して行うことが大切だと言います。

また全国50,000人のモニターから、毎日の購買の記録を集めた消費者パネル調査も行っています。消費者が同じ商品を繰り返し購入する比率は約20%~30%と低く、メーカーの競争は激しいことがうかがえます。世の中にはさまざまな情報があふれていますが、情報は無料という意識もあり、そこに対価が得られる価値を生み出すのは難しいことだそうです。

無理だと思うことを実現するのがイノベーション

同氏によるとデータサイエンスとは、問題の本質を把握した上で、その課題を適切に設計し、課題の解決に向けて必要になるデータ群とその加工方法をデザインすることだと言います。

データサイエンスの領域では自動化が進んでおり、人が実施する領域は課題設計デザインや、可視化・解釈評価に絞られてくるのだそうです。

この限られた領域で大きな力を発揮するのがこれからのデータサイエンティストです。イノベーションとは無理だと思い込んでいることを実現することだと同氏は言います。絶対に無理だと思うことにこそ、イノベーションが生まれると思ってほしいと伝えました。

参加した学生からは、「データを分析していく中で、聞き方によって偏りが出てくという経験をしたことがなかったので、興味深かった」「こうした職種があることも知らなかったが、今回のセミナーを受講してよく分かった」などの感想が寄せられました。  データサイエンスセミナーは今後も続き、今年度は合計11回の開催が予定されています。

講師プロフィール:
株式会社インテージホールディングス
代表取締役社長 宮首 賢治(みやくび・けんじ)氏

1957年広島県生まれ。愛媛大学法文学部文学科卒業後、80年4月社会調査研究所(現 株式会社インテージ)入社。ソリューション本部長、営業本部営業企画部長などを経て、2007年取締役 インキュベーションセンター長に就任。2010年常務取締役事業開発本部長。2011年代表取締役社長。2013年から株式会社インテージホールディングス代表取締役社長を務める。

(2018/07/19)

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