大学院生 伊藤 貴仁さんが筆頭著者の論文がChemical Scienceに掲載!
2024.12.06
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生命医科学研究科 博士後期課程3年(創薬有機化学研究室)の伊藤 貴仁さんらの研究グループは、ヘリックス構造を形成するペプチドによる肝細胞選択的なキャリアの開発に成功し、その研究成果が「Chemical Science」に掲載されました。
筆頭著者
生命医科学研究科 博士後期課程3年
創薬有機化学研究室所属
伊藤 貴仁 さん
指導教員
生命医科学研究科
創薬有機化学研究室 出水 庸介大学院客員教授
論文タイトル
「Strategic Design of GalNAc-Helical Peptide Ligands for Efficient Liver Targeting」
(日本語訳:肝臓選択的 デリバリーのためのGalNAcヘリカルペプチドリガンドの戦略的デザイン)
掲載雑誌
Chemical Science
DOI:doi.org/10.1039/D4SC05606J
生命医科学研究科 博士後期課程3年
創薬有機化学研究室所属
伊藤 貴仁 さん
指導教員
生命医科学研究科
創薬有機化学研究室 出水 庸介大学院客員教授
論文タイトル
「Strategic Design of GalNAc-Helical Peptide Ligands for Efficient Liver Targeting」
(日本語訳:肝臓選択的 デリバリーのためのGalNAcヘリカルペプチドリガンドの戦略的デザイン)
掲載雑誌
Chemical Science
DOI:doi.org/10.1039/D4SC05606J
今回の研究内容について伊藤さんに解説していただきました。
現在、核酸医薬品等の従来の薬剤と異なる分子の開発が進められています。それらは従来の薬剤と比べて分子量が大きいことなどの物理的性質が異なることから、それ自身では細胞に入ることが困難であり 、そのような薬剤を運ぶ技術 (drug delivery system:DDS)が求められています。DDSの中でも薬剤を必要とする場所に選択的に運ぶ、組織選択的なデリバリーに関する研究が盛んに行われています。 肝臓を狙うGalNAcリガンドが代表的で、GalNAcの受容体は三量体を形成していることからGalNAcを三つ持つ分子が分子設計として有効であると考えられています。受容体は三角形の秩序立った構造をしていますが、これまでに知られているGalNAcリガンドは分子の自由度が高い構造をしていました。我々の研究室では、α-ヘリックス構造 (らせん構造)を形成するペプチドの機能性研究を行なっており、α-ヘリックス構造による側鎖の配向性を制御できることに着目しました。そこで、α-ヘリックス構造を形成するペプチドの側鎖の片側にGalNAcを搭載することで、これまでと異なるアプローチでGalNAcリガンドの設計ができると考えました。
本研究では、ヘリックスの片側にGalNAcを導入したヘリカルペプチドを設計し、それらの二次構造解析から、オリゴ核酸のDDSとして用いられるTri-GalNAcと細胞内取り込み活性、タンパク質のデリバリー評価を実施しました。いずれの活性評価においても今回設計したペプチドの活性が高いことがわかりました。さらに、近年注目を集めるタンパク質分解剤(LYTAC)への応用を行いて、膜タンパク質 の分解にも成功し、今回開発したペプチドが分子の細胞内輸送と標的タンパク質の分解を誘導できることを明らかにしました。
現在、核酸医薬品等の従来の薬剤と異なる分子の開発が進められています。それらは従来の薬剤と比べて分子量が大きいことなどの物理的性質が異なることから、それ自身では細胞に入ることが困難であり 、そのような薬剤を運ぶ技術 (drug delivery system:DDS)が求められています。DDSの中でも薬剤を必要とする場所に選択的に運ぶ、組織選択的なデリバリーに関する研究が盛んに行われています。 肝臓を狙うGalNAcリガンドが代表的で、GalNAcの受容体は三量体を形成していることからGalNAcを三つ持つ分子が分子設計として有効であると考えられています。受容体は三角形の秩序立った構造をしていますが、これまでに知られているGalNAcリガンドは分子の自由度が高い構造をしていました。我々の研究室では、α-ヘリックス構造 (らせん構造)を形成するペプチドの機能性研究を行なっており、α-ヘリックス構造による側鎖の配向性を制御できることに着目しました。そこで、α-ヘリックス構造を形成するペプチドの側鎖の片側にGalNAcを搭載することで、これまでと異なるアプローチでGalNAcリガンドの設計ができると考えました。
本研究では、ヘリックスの片側にGalNAcを導入したヘリカルペプチドを設計し、それらの二次構造解析から、オリゴ核酸のDDSとして用いられるTri-GalNAcと細胞内取り込み活性、タンパク質のデリバリー評価を実施しました。いずれの活性評価においても今回設計したペプチドの活性が高いことがわかりました。さらに、近年注目を集めるタンパク質分解剤(LYTAC)への応用を行いて、膜タンパク質 の分解にも成功し、今回開発したペプチドが分子の細胞内輸送と標的タンパク質の分解を誘導できることを明らかにしました。
伊藤さんのコメント
私は有機合成を専門としており、研究初期にはバイオロジーに関する知識や技術をほとんど持ち合わせていませんでしたが、この3年間でそれらを習得できたことは大きな成長だったと感じています。初期段階では、設計したペプチドの肝細胞選択性が十分ではないことに悩んでいました。しかし、コロナ禍明けに対面形式で行われた学会に参加した際、前の大学(長崎大学)の研究室の先輩から頂いたアドバイスが設計を大きく改善するきっかけとなり、特に印象に残っています。さらに、本研究を通じて2回、海外の学会に参加する機会にも恵まれました。これらの経験は、研究活動を深めるだけでなく、貴重な思い出として心に残っています。
私は出水先生のご指導のもと連携大学院の 国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)で研究を行っており、研究生を経て、本年6月より任期付研究員として採用されました。本研究の遂行にあたり、指導教員である出水先生をはじめ、国立衛研および企業の多くの専門の先生方に多大なご協力を賜りました。心より感謝申し上げます。また、本研究はデータ思考イノベーティブ人材育成プログラム事業(SPRING)および笹川科学研究助成の支援を受けて進めることができました。多くの方々のご支援とご指導に支えられたことに、改めて深い感謝の意を表します。
指導教員 出水 庸介 大学院客員教授のコメント
伊藤さん、論文アクセプトおめでとうございます!
今回の研究では、GalNAcを搭載したヘリカルペプチドが革新的な肝臓選択的DDSとしての新たな可能性を示し、今後の応用展開にも期待が寄せられます。特に、肝臓特異的受容体を介した高効率な細胞内取り込み の達成は、これまでの治療法に革新をもたらす成果として注目されることでしょう。
伊藤さんは博士課程1年より創薬有機化学研究室に所属し、博士課程3年の6月からは国立衛研の任期付研究員として(違法薬物や紅麹など)緊急対応を含む多岐にわたる研究業務にも貢献してきました。常に研究に真摯に取り組むその姿勢は、学生やスタッフにとっても大きな励みとなっていると思います。
今後のさらなる研究活動においても、ますますのご活躍を期待しております。
私は有機合成を専門としており、研究初期にはバイオロジーに関する知識や技術をほとんど持ち合わせていませんでしたが、この3年間でそれらを習得できたことは大きな成長だったと感じています。初期段階では、設計したペプチドの肝細胞選択性が十分ではないことに悩んでいました。しかし、コロナ禍明けに対面形式で行われた学会に参加した際、前の大学(長崎大学)の研究室の先輩から頂いたアドバイスが設計を大きく改善するきっかけとなり、特に印象に残っています。さらに、本研究を通じて2回、海外の学会に参加する機会にも恵まれました。これらの経験は、研究活動を深めるだけでなく、貴重な思い出として心に残っています。
私は出水先生のご指導のもと連携大学院の 国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)で研究を行っており、研究生を経て、本年6月より任期付研究員として採用されました。本研究の遂行にあたり、指導教員である出水先生をはじめ、国立衛研および企業の多くの専門の先生方に多大なご協力を賜りました。心より感謝申し上げます。また、本研究はデータ思考イノベーティブ人材育成プログラム事業(SPRING)および笹川科学研究助成の支援を受けて進めることができました。多くの方々のご支援とご指導に支えられたことに、改めて深い感謝の意を表します。
指導教員 出水 庸介 大学院客員教授のコメント
伊藤さん、論文アクセプトおめでとうございます!
今回の研究では、GalNAcを搭載したヘリカルペプチドが革新的な肝臓選択的DDSとしての新たな可能性を示し、今後の応用展開にも期待が寄せられます。特に、肝臓特異的受容体を介した高効率な細胞内取り込み の達成は、これまでの治療法に革新をもたらす成果として注目されることでしょう。
伊藤さんは博士課程1年より創薬有機化学研究室に所属し、博士課程3年の6月からは国立衛研の任期付研究員として(違法薬物や紅麹など)緊急対応を含む多岐にわたる研究業務にも貢献してきました。常に研究に真摯に取り組むその姿勢は、学生やスタッフにとっても大きな励みとなっていると思います。
今後のさらなる研究活動においても、ますますのご活躍を期待しております。