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城ヶ島で学生による防災セミナーを開催!

2024.09.30
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住民の声を生かした津波避難対策などを学生が提案

国際教養学部では、3年次に選択必修の集中講義があります。今回取材した地域課題実習は、地域政策やまちづくりに関して、グループワーク形式の実習を通して、地域課題の解決・改善に取り組むための思考力、調査・解析力、提案力を修得することを目的としています。
この夏、石川永子准教授の指導・監修のもと、3年生14名が8月6~9日の4日間の集中講義に参加し、三浦市城ヶ島の民宿に滞在しながら城ヶ島の津波避難などについて学びました。さらに、2日間参加した石川ゼミの2年生5名と共に、最終日には城ヶ島の住民への報告会として「防災セミナー」を開催しましたので、その様子をご紹介します。
防災セミナーに参加してくれた城ヶ島の住民の皆さんと学生、石川先生(前列右端)

-住民への聞き込み・現地調査

三浦市役所防災危機対策室の藤田主査による城ヶ島の防災についての事前学習をしたうえで、テーマごとに4班に分かれて8月6日から島内の調査を始めました。
住民へインタビューを行い、困りごとを聞いたり、避難行動要支援者の方にヒヤリングをしたりしました。また、島を巡って実際の避難経路の問題点を洗い出したり、夜間の地震発生に備えて、避難経路などの夜間調査を行ったりもしました。
 避難行動要支援者の避難を体験
 避難経路の夜間の様子を調査

-城ヶ島「防災セミナー」の開催

3日間の調査で明らかになった城ヶ島の防災に関する課題について、最終日の8月9日に住民へ提案するための「防災セミナー」を開催し、今後の対策について提案しました。
城ヶ島区長や防災隊長、婦人会の方、神奈川県や三浦市の職員など12名ほどが参加し、学生の報告を真剣な面持ちで聞いていました。
○高齢者や要支援者に向けて、避難経路の改善や「0.5次避難場所」を提案
1班と3班は、高齢者や要支援者に向けた避難対策について提案しました。
城ヶ島は高齢者が多いにもかかわらず、避難経路は急こう配や整備がされていないなどの課題があります。そこで、避難経路の階段の高さや幅の測定や、昼間と夜間の見え方の調査を行いました。高齢者や要支援者が、既存の避難経路をより利用しやすくするため、街路灯の効果的な設置場所の提案や、草刈りをボランティアによる実施提案、避難経路に環境整備の改善案について提案しました。
そのほか、「避難を諦めないでほしい!」という学生の思いから、「0.5次避難場所」という提案がありました。前述の通り、島内には避難経路の課題や、住宅地の裏山の階段を上って津波から逃れたあと、徒歩で「避難場所」として指定されている公園まで距離があり、高齢者がそこまで歩いて行くのが大変であるなどの問題などがあります。住民へのヒヤリングでは、「避難を諦めている訳ではないけれど実際には避難が難しい」と感じている住民の存在を知りました。そこで、実際の避難場所よりも手前に(標高は津波避難に適している)避難場所を設置することで、高台の避難場所よりも達成しやすい目標ができ、諦めない避難につながるのではないかと考え、「0.5次避難場所」を提案しました。
また、「0.5次避難場所」に備蓄倉庫を備えることで、一時的な避難場所としての利用も提案しました。
リュック型の備蓄バッグを段ボールで試作して披露。住民からは「とても分かりやすい」と好評でした。
 ○観光地としての城ヶ島の防災
2班と4班は、観光地としての城ヶ島の新たな防災拠点について提案しました。
災害の程度によっては既存の避難場所は浸水してしまうという課題や、立地的に孤立してしまう可能性のある城ヶ島ならではの避難後の生活における課題に注目し、新たな避難所として宿泊施設を兼ね備えた道の駅の整備を提案しました。ただ避難所を作るのではなく、平常時は観光客向けの施設として機能させることで、新たな観光産業として地域の課題解決にも期待されます。
また、多くの観光客が訪れる城ヶ島では、災害時の観光客の避難も課題になっています。実際に観光客にインタビューを行うと、「避難場所が不明」という意見が多数あり、避難看板の設置場所や、デザインについても提案しました。
学生の発表後、各班では住民の感想や質問が飛び交った
○逃げ地図の作成
この実習では、2日間参加した2年生5人が中心となり、城ヶ島地区の津波から避難するための「逃げ地図」*1づくりも行いました。各班に分かれて、地図上で自宅から避難所までどれくらい時間がかかるかを、住民の皆さんに色を塗ってもらい、どこに避難するのがよいか一緒に考えました。
平面の地図だけでは分からない地形は住民の皆さんに教えてもらいました。「そっちは普段行かないな」「その坂道は地震で崩れるかもしれない」「いや、崩れないと思うよ」「こっちの道も上がれるよ」「え、上がれるんですか!?」と話し合いながら、真剣に色を塗っていきました。
「逃げ地図」作成の様子

-参加者の声

○城ヶ島区長の藤井さん
真剣に議論したり、パソコンに向かって作業したりしている姿にとても驚かされた。4日間、商店街や灯台、岸壁など、島内のさまざまなところに行って大変だったと思う。我われにないアイデアがとても素晴らしい! 提案していただいたことから、できることを検討して、実現していきたいと思う。また何かあったら教えてほしいし、今後も城ヶ島をよろしくお願いしたい。
○防災隊長の石橋さん
暑い中、本当にありがとう。今日教えていただいたことを区の防災隊としてどう取り組むか、参考にさせてもらいたい。今回をきっかけに区民を守るための認識をあらためたい!

○婦人会
暑い中これだけ調べてやってくれた。これを機に、もっと住民に災害の恐ろしさを知ってもらいたいと思う。ありがとうございました。

○三浦市役所防災危機対策室 主査 藤田さん
提案いただいたものをすべて反映できるか、検討していきたい。「逃げ地図」も三浦市はなかなか進んでいないため、今回をモデルケースとして広めていきたい。今回城ヶ島に来ていただき、とても感謝しています。
○学生の声(3年村上さん)
城ヶ島で過ごした4日間は、大変充実した貴重な時間でした。今回、私の班は0.5次避難所を提案しました。これは実際に現地を歩き、住民の方々と直接お話ししなければ分からなかった課題に対する提案であったため、データや他地域の事例等の情報だけではその地域に必要なことを知ることができないと実感しました。城ヶ島は高齢の方が多く、高台へ上がらなければならない津波避難は簡単ではないですが、住民の方々の強い絆や実際に行われている取り組みから、人の力を合わせることで防災への備えは強化できるのだと強く感じました。私達の提案が城ヶ島の防災に少しでも役立つとうれしいです。
指導教員 石川 永子准教授のコメント 
学生達は2年生の時から必修の実習を通して、地域課題の解決に向けた提案をしてきましたが、高齢化が進み津波の危険性も高い地域で、これほどまでに、差し迫った深刻な地域課題に向き合い、住民の方々の意見を聞きながら、地域にとって「実効性」「有用性」がありつつ、学生らしい若い世代の視点での意見を取り入れた提案をまとめたことはなかったと思います。そのため、やりがいがあるけど重い、大変な活動でありました。この実習をやり遂げた学生達の頑張りは素晴らしかったと思いますし、学生達の真剣さや熱意を見て、地域の方々が多くの協力をしてくださいました。避難行動要支援者のいるご家庭への聞き取りや、クルーザーで「海から城ヶ島を観察する」機会など、城ヶ島の人々の温かさや自然の豊かな島の魅力を感じた実習でした。
また、石川研究室としては、今後も城ヶ島の高齢者避難や夜間避難の円滑化など、住民の方々と知恵をいかしながら進めていきたいと考えておりますし、10月には本学にて、三浦市副市長にも参加いただき、最終提案の発表会をする予定で、城ヶ島の防災に少しでも学生のアイデアが生かせてもらえたらと願っています。
用語解説
*1 逃げ地図:避難場所までの徒歩での所要時間を、色分けして示した地図。地域住民が主体的に防災について考えるツールとしても使用される(参考:認定NPO法人日本都市計画家協会逃げ地図研究会 https://nigechizu.jsurp.jp/

 
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