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生命医科学研究科 藤田陽さんらの論文が、Bioorganic & Medicinal Chemistryに掲載

2023.06.09
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in silico設計によるWnt/β-catenin経路阻害ペプチドの高活性化に成功!


生命医科学研究科 創薬有機化学研究室 博士前期課程2年の藤田 陽さんらの研究グループは、Wnt/β-catenin経路を標的としたPPI阻害ペプチドのin silicoデザインによる高活性化に成功し、研究成果がBioorganic & Medicinal Chemistryに掲載されました。
論文著者
生命医科学研究科 博士前期課程2年
創薬有機化学研究室所属
藤田ふじた 陽  みなみ さん

指導教員

生命医科学研究科 出水庸介客員教授

論文タイトル
In silico optimization of peptides that inhibit Wnt/ß-catenin signaling」
Wnt/β-cateninシグナル経路阻害ペプチドのin silico最適化

掲載誌
Bioorganic & Medicinal Chemistry

—今回の研究内容について藤田さんに解説していただきました。

Wnt/β-catenin経路は転写調節因子であるβ-cateninの存在レベルにより制御される経路であり、この経路の過剰な転写活性化が様々な癌に関与することが報告されています。Wnt/β-catenin経路下流に位置するβ-catenin/TCFは創薬ターゲットとして注目されている一方で、その相互作用面は広く、β-cateninにdruggableな結合ポケットが存在しないことが創薬研究におけるボトルネックとなっています。そこで我々は、広い界面で相互作用して標的タンパク質間相互作用(Protein-protein interaction; PPI)を阻害することが可能である中分子ペプチドに着目し、創薬研究を進めています。
我々は、β-cateninに対するTCFのN末端領域とLiver Receptor Homolog-1(LRH-1)の相互作用面がオーバーラップしていることに着目し、LRH-1の部分配列を用いたPPI阻害ペプチドを設計しました。その結果、Wntシグナル経路の活性化を特異的に抑制するPPI阻害ペプチドの開発に成功しています。一方で開発したペプチドは、細胞内での活性が十分ではなく、更なる高活性化を目指す必要があると考えました。そこで本研究では、LRH-1由来ペプチドのin silicoデザインを行い、リードペプチドより高い阻害活性を有するPPI阻害ペプチドの開発に成功しました。
本研究で見出されたPPI阻害ペプチドの最適化方法は、他のPPIにも応用可能であると考えており、PPI阻害剤開発における重要な知見になると考えています。

β-catenin/TCFを標的としたPPI阻害ペプチドのin silico設計

藤田 陽さんのコメント

本研究では、我々が報告したWnt/β-catenin経路阻害ペプチドをモデルとし、このペプチドを合理的に最適化することで、PPI阻害ペプチドの高活性化に成功しました。今回報告した最適化方法は他のPPIを標的とすることも可能であり、今後のPPI阻害ペプチド開発における重要な知見になると考えています。
本研究の発表に際して、出水先生をはじめ、スタッフの皆様、ペプチド合成からアッセイ方法まで丁寧にご指導いただきました先輩方に深く感謝申し上げます。今後も中分子医薬品開発の発展に貢献できるよう、研究活動に励んでいきたいと思います。

指導教員 出水 庸介 大学院客員教授のコメント

論文アクセプトおめでとうございます!
本研究は、修士1年から一緒に研究を開始した藤田さんが1年足らずで纏め上げた成果になります。藤田さんは、研究室で行なってきたPPI阻害ペプチド開発にin silicoデザインという新しいアプローチを取り入れ、ペプチド合成、標的タンパク質の発現・精製、細胞評価、論文執筆までを一人で行ったスーパーウーマンです。
今後も楽しみながら研究活動に取り組み、成長していく事を期待しています。
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