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生命医科学研究科 伊藤 貴仁さんの研究が「2023年度笹川科学研究助成」に採択

2023.05.25
  • TOPICS
  • 学生の活躍
  • 理学部

若手の研究を支援する笹川科学研究助成

生命医科学研究科 博士後期課程2年(創薬有機化学研究室所属)の伊藤 貴仁さんの研究が、公益財団法人日本科学協会が実施する「2023年度笹川科学研究助成」に採択されました。笹川科学研究助成は、課題の設定が独創性・萌芽性をもつ研究で、発想や着眼点が従来にない新規性をもつ35歳以下の若手の研究を支援するものです。
助成対象者
生命医科学研究科 博士後期課程2年
創薬有機化学研究室所属
伊藤 いとう 貴仁  たかひとさん

指導教員
生命医科学研究科 出水庸介客員教授

研究課題名 
「細胞外タンパク質を分解するペプチド型LYTACの創製」 
—今回、採択された研究内容について伊藤さんに解説していただきました。

LYTACは2022年ノーベル化学賞を受賞されたBertozzi先生のグループから報告された新規タンパク質分解誘導剤です。LYTACは細胞膜、細胞外のタンパク質を分解できるため、細胞内タンパク質に適用が限られるタンパク質分解誘導剤PROTACの補完となる分子です。LYTACはエンドサイトーシスを誘導するリガンドと標的タンパク質リガンドを連結させたキメラ分子であり、標的タンパク質を強制的にリソソームへ輸送することで分解を誘導します。既存のLYTACはポリマーや抗体を用いていることから合成が困難で、適切な分子設計の余地が残されています。採択いただいた研究提案では、立体構造と配列を制御したオリゴペプチドをテンプレートとして活用したエンドサイトーシスリガンドの開発と標的タンパク質リガンドとして低分子や中分子医薬品を利用した新規LYTAC分子の開発を目指しています。  

伊藤 貴仁さんのコメント
ヒトのゲノムの40%程度は細胞膜、細胞外タンパク質をコードしているとされ、そのようなタンパク質をLYTACで分解できるようになればPROTACでは達成できなかった疾病関連タンパク質に対する治療薬の開発が期待されます。一方で、既存のLYTACは合成が煩雑であることが課題点として残されており、そこで思いついたのが今回の研究提案になります。私は他大学出身で有機合成化学を専門にしており、これまでに培った知見や経験を基に提案した研究が評価されたことは大変嬉しく思います。まだ採択されただけで、研究のメインであるペプチド型LYTACの開発には至っていませんので、期待に沿えるような結果を出せるよう研究に励みたいと思います。最後に申請において添削指導いただきました出水先生にお礼を申し上げます。

指導教員である出水 庸介大学院客員教授のコメント
伊藤さん、研究助成採択おめでとうございます!
伊藤さんは、先行研究や最新の論文を隈なくチェックし自らの考察を基に、独創的でユニークな研究を提案してくれました。現在、独自にデザインしたペプチド型LYTAC分子創出に向けた創薬化学、ケミカルバイオロジー研究を実施しています。また伊藤さんは、有機合成化学分野の知識や経験が豊富で、後輩の分子設計や合成についても的確なアドバイスや指導を行なってくれており、非常に頼りになる学生さんです。
今回の研究助成の採択を糧にして益々の研究の発展を期待しています。
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