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理学部4年の岡村 瑚太朗さんが、日本薬学会 第143年会で学生優秀発表賞を受賞!

2023.05.11
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  • 学生の活躍
  • 理学部

難治性神経疾患であるシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)の発病メカニズムの解明に期待

理学部4年(機能構造科学研究室所属)の岡村瑚太朗さんが、2023年3月25日(土)~28日(火)に北海道大学で開催された日本薬学会 第143年会の一般学術発表(ポスター発表)にて「NMRを用いたシャルコー・マリー・トゥース病の原因遺伝子産物ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)の構造解析」について発表し、学生優秀発表賞を受賞しました。


  受賞者

   理学部4年(機能構造科学研究室所属)
   岡村        おかむら 瑚太朗  こたろうさん

  指導教員
   理学部理学科 機能構造科学研究室
   (大学院生命医科学研究科生命医科学専攻)
   坂倉正義准教授 
発表題目
NMRを用いたシャルコー・マリー・トゥース病の原因遺伝子産物ミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)の構造解析

発表内容
—今回受賞した論文の研究内容について岡村さんに解説していただきました。
シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は、手足の筋力低下などを主症状とする遺伝性の神経病です。CMTはMPZ*1と呼ばれるタンパク質を構成するアミノ酸のうちの一つが、他のアミノ酸に置き換わることによって、末梢神経*2を覆うミエリン*3が正しく形成されなくなることが原因となり発症します。MPZはミエリンにおいて膜と膜を貼り合わせる接着剤として働きますが、病気を引き起こすアミノ酸置換がMPZに対してどのような影響をおよぼすかについては、これまでほとんど明らかにされてきませんでした。
私は、CMTを発症させるD80N置換型MPZ*4について、その集合状態や膜接着機能をNMR*5、電子顕微鏡*6などの手法を用いて解析しました。その結果、D80N置換は、MPZの膜接着機能に重要な8量体*7の形成に直接的な影響を与えないが、膜接着機能を持たない多量体(おそらく2量体)を形成しやすくすることを見出しました。この正しく機能しない多量体の割合が増えることが、ミエリンの形成に悪影響を与えている可能性が考えられるため、今後本多量体の形成阻害剤を探索し、ミエリン再生を促すかどうか検証していきたいと考えています。

受賞者のコメント
この度は名誉ある賞を頂戴し、大変光栄に思います。研究や発表準備においてご指導いただいた坂倉准教授をはじめ、共同研究者の先生方、機能構造科学研究室の皆様に感謝申し上げます。本学会発表は私にとって初めての学会発表であり、多くの方との議論を通じてこれまでの研究内容を改めて考察するとともに、さまざまな知見を得ることができました。これを糧に今後もより一層研究活動に精進してきたいと思います。

指導教員:坂倉正義准教授のコメント
岡村君、日本薬学会学生優秀発表賞の受賞おめでとうございます。
今回発表した研究は、核磁気共鳴法(NMR)、電子顕微鏡、X線結晶構造解析といった複数の解析ツールを組み合わせることによって、病気を引き起こすアミノ酸置換がMPZの集合状態を変えるしくみを解明したという内容で、難治性神経疾患であるCMTの発病メカニズムの解明につながることが期待される成果です。岡村君が、様々な実験に積極的に取り組んだことが、今回の受賞につながったと思います。さらなる研究の発展を期待します。また、共同研究者の先生方、学会でポスターを見に来て下さった研究者の方々に厚く御礼申し上げます。 

用語説明
*1 MPZ:ミエリンタンパク質ゼロ。
*2 末梢神経:脳・脊髄などの中枢と手足を含む全身の組織・器官をつなぐ神経のこと。
*3 ミエリン:神経の軸索の周囲にシュワン細胞と呼ばれる細胞が巻き付くことによって形成される脂質膜の多重層構造。脂質膜は電気を通さないため、電気絶縁体として働く。ミエリンが正しく形成されないと、神経に電気が流れる速度が低下し、手足の先端部分に情報をうまく伝えられなくなる。
*4 D80N置換型MPZ:MPZを構成する約200個のアミノ酸のうち、80番目のアミノ酸が本来のアスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)へと置き換わったMPZのこと。
*5 NMR:核磁気共鳴法。D80N置換などのアミノ酸変化が、タンパク質のどこに、どのような変化をもたらすかを、原子レベルで明らかにすることができる。
*6 電子顕微鏡:電子線を用いることにより、光学顕微鏡では見ることができない、10ナノメートルほどの大きさの微粒子の形を見ることができる高分解能の顕微鏡。
*7 8量体:8個のMPZが結合した集合体のこと。

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