COVID関連研究(病態病理学)
2022.12.20
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- 研究
COVID関連研究(病態病理学)
new! 2022.12.1
Earliest histopathological changes in COVID-19 pneumonia with comprehensive gene expression analyses: A case series study
COVID-19肺炎の最初期の組織病理学的変化と遺伝子発現プロファイル
病態病理学 奥寺 康司 准教授
微生物学 梁 明秀 教授 (現:連携大学院 客員教授)
【目的】 COVID-19 肺炎の重症化を未然に防ぐためには、早期の治療介入が不可欠である。 そのためにはCOVID-19 肺炎の開始イベントを理解することが重要である。しかしながら、目下、初期段階の病変の理解は極めて限定的である。そこで、我々は、COVID-19 肺炎の最も初期の組織病理学的変化と遺伝子発現プロファイルの解明を試みた。
【方法と結果】25例のCOVID-19剖検例を精査した。毛細血管の拡張および肺胞中隔の浮腫性肥厚が、肉眼的にはほぼ正常に見える領域にも見られた。このような病変では、肺胞上皮細胞、マクロファージおよび血管内皮細胞は、組織損傷に対する重要な早期応答因子であるtissue factorに発現していた。網羅的遺伝子発現解析により、このような初期病変では、既にリソソーム経路の有意な発現誘導が起こっていることが明らかとなった。
【結論】肺胞毛細血管の拡張と浮腫性肥厚は、COVID-19 肺炎で検出される最も初期の組織病理学的変化であると考えられ、急性炎症反応に関わる分子が既に発動していることが解った。
2022.8
An autopsy case of COVID-19-like acute respiratory distress syndrome after mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccination
新型コロナウィルスワクチン接種後に瀰漫性肺胞傷害を来たした一剖検例
態病理学 奥寺 康司 准教授
法医学 井濱 容子 教授
微生物学 梁 明秀 教授
【背景】目下、新型コロナウィルスワクチンの効果が明確に現れている一方、重篤な副作用の報告もある。これらの副作用の病理学的本態は不明なところが多い。我々は、COVID-19ワクチン摂取後に肺炎を来たした永眠した症例の剖検を経験し、その病理所見について報告した。
【症例】2回目のワクチン接種数日後に、呼吸苦が出現し入院。臨床所見・画像所見は、COVID-19肺炎に酷似するが、PCRは陰性、一方、抗体価は超高度に上昇していた。ARDSの状態でステロイドパルスを行うも、呼吸状態が回復せず、入院数日後に永眠、剖検となった。両肺全体にびまん性肺傷害が認められた。
【考察】発症のタイミングと抗体価の超高度上昇からワクチン関連肺傷害が示唆された。
2020.8.13
A Japanese case of COVID-19: An autopsy report
病態病理学 奥寺 康司 准教授
A 93-year-old woman was admitted with a 10-day history of cough and prostration. Thoracic computed tomography revealed extensive ground-glass opacities in both the lungs. The polymerase chain reaction test of sputum for severe acute respiratory syndrome-coronavirus-2 (SARS-CoV-2) was positive. She was treated with antiviral agents and steroid pulse therapy. However, her oxygen saturation gradually declined, and she died 10 days after hospitalization. The most important autopsy finding was fuzzily segmented diffuse alveolar damage (DAD) that expanded from the subpleural to the medial area. No remarkable changes were observed in organs other than the lungs. Therefore, pneumocytes were suggested as the primary target for SARS-CoV-2, which might explain why coronavirus infectious disease-19 is a serious condition. Thus, early treatment is essential to prevent viral replication from reaching a level that triggers DAD.
「日本人COVID-19症例の剖検報告」
最も重要な病理所見は、時間的・空間的に断続的に拡大した瀰漫性肺胞傷害で、肺胞細胞が新型コロナウィルスの主要標的であることが解りました。ウイルスが肺胞傷害のトリガーを引く前の速やかな治療介入が必須であることを示唆しています。目下、国内からの剖検報告は、本件を含め2件のみです。海外の報告例に比較して、肺以外の臓器の変化が少ないようです。COVID-19に伴う症候の地理的差異の本質を解明する手掛かりとなるかもしれません。