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生命ナノシステム科学研究科の立川仁典教授がHPCI利用研究課題優秀成果賞を受賞

2023.01.11
  • TOPICS
  • 研究
  • 理学部

水素量子効果を持つ結晶系の第一原理シミュレーション法の開発

横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 物質システム科学専攻の立川仁典教授は、第9回「富岳」を中核とするHPCIシステム利用研究課題 成果報告会(同時開催:第5回HPCIコンソーシアムシンポジウム)においてHPCI利用研究課題優秀成果賞受賞課題(物質・材料・化学分野)を受賞しました。 本成果報告会は、一般財団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)が主催し、2022年10月27日・28日にオンラインで開催されました。
受賞者
横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科
物質システム科学専攻(量子物理化学研究室) 教授
立川 たちかわ  仁典   まさのり

研究課題
水素量子効果を持つ結晶系の第一原理シミュレーション法の開発

発表内容

—今回、受賞された研究成果について、立川仁典教授に解説いただきました。

今回のHPCI利用研究課題優秀成果賞では、従来の手法だけでは計算できない水素原子核自身の量子力学的振舞い(水素量子効果)を研究対象とするために、我々が新たに開発してきた理論手法、および複数台のコンピュータを効率的に使用できるアルゴリズム(並列化)の実装が受賞対象となりました。
具体的には、水素量子効果の精緻なシミュレーションを実現する手法としては、粒子をビーズで繋げてネックレスのように表現する手法(経路積分法)、またサイコロを振って(乱数を用いて)物質の状態をシミュレーションする手法(量子モンテカルロ法)、を開発してきました(詳しくは量子物理化学研究室のWebサイトに載っていますので、気軽に遊びに来てください!)。それにより、電子と原子核すべてを「まるごと」量子力学的な精密計算を可能とし、今まで説明できなかった実験結果の再現や反応機構を解明してきました。これらの手法の特徴は、複数台のコンピュータを効率的に使用できるアルゴリズム(並列化)を内包しているという点です。今回のHPCI戦略プロジェクトで、多数の計算機を使用した実装実験により、ほぼ100%近い並列化効率を達成することに成功し、今後のさらなる超並列計算機環境においても大きく貢献できるものと期待しています。

—立川仁典教授のコメント

この度は、「HPCI利用研究課題優秀成果賞受賞課題(物質・材料・化学分野)」という大変名誉な賞を賜り、非常に光栄に存じます。最近の「日本コンピュータ化学会学会賞」や「分子科学国際学術」に続く連続受賞、また学生の頑張りによる「日本化学会学生講演賞」を含め、研究室チーム全体としての受賞であったことを大変嬉しく思います。
私は本学にて「量子物理化学研究室」を主宰しています。生命科学・化学・物理学、そしてそれらの境界領域には、とてつもなく広大な「未開の知」が拡がっています。私の研究室では、計算機を用いたシミュレーションやデータサイエンス的手法を駆使して、様々な自然科学現象の理解、そして新しい現象の予測・発見に挑み、この「未開の知」を開拓しています。その中でも私の研究の基軸は、従来手法や既存のプログラム(アプリ)だけでは達成できないような、より精緻なシミュレーションを実現するために、新しい理論手法・計算手法・統計手法の開発とそのプログラム(アプリ)実装、そして本手法を駆使した現実系(実社会)への応用展開、にあります。今回の受賞では、このような研究の基軸が評価いただけたものと考えております。今回の受賞を励みに、本学において、当該分野の拠点形成に取組んでいく所存です。

問い合わせ先

横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp


 

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