社会福祉法人財務偏差値システムの運用を開始
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社会福祉法人財務偏差値システムの運用を開始
総合福祉研究会 社会福祉法人財務分析プロジェクトチームとの共同開発
本研究成果は、社会福祉法人財務分析プロジェクトチームとプログラム利用契約書を締結し、総合福祉研究会の会員や非会員の社会福祉法人に対して、検索を希望する社会福祉法人の財務偏差値について、本システムを利用して経営改善に向けた参考情報を提供します。
研究成果のポイント
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研究背景
研究内容
本研究グループは、社会福祉法人財務分析プロジェクトチームと2019年度から開発を進め、社会福祉法人の経営者が財務諸表等を用いる場合には、①30以上もの財務指標が開示され、情報量が多すぎること、②法人ごとの比較対象となる目標値が不明瞭であること、の2つの課題があることを整理しました。
そこで、成功を経験し,失敗を避けたいという欲求によって動機付けられるレベルのことであるアスピレーション・レベル (Weiner 1989) の理論を参考にして、研究開発を進めました。アスピレーションとは熱意や動機のことを意味します。財務業績の実績値が熱意や動機をもたらすアスピレーション・レベル(目標値)を超えていることから、経営者が財務業績の実績値に満足している、あるいは関心を持たない状態のことをアスピレーションの欠如 (lack of aspiration) と定義し (黒木ほか 2020)、社会福祉法人の経営者においてもアスピレーションの欠如が起きている可能性を検討したうえで、以下の2つを実施しました。
第1に、全社会福祉法人の財務諸表データを用いて考えうるすべての財務指標を主成分分析によってカテゴライズし、またヒアリングおよびサーベイに基づき、社会福祉法人の財務面での自律的な経営改善を促すための7つの財務指標を選定しました。第2に、法人ごとの比較対象となるアスピレーション・レベルを同一都道府県・同一福祉サービスを提供する主体として定め、7つの財務指標について偏差値を算定しました。これらをBI(business intelligence)ツールを用いて可視化することで、社会福祉法人の経営者が自法人の財務状況や財政状態を簡単に把握することができ、アスピレーション(熱意や動機)を高めることのできるシステムを開発しました。
今後の展開
本システムは社会福祉法人全体の財務偏差値ですが、今後、社会福祉法人における拠点別の財務偏差値も算定し、情報提供を開始する予定です。
研究費
本研究は、横浜市立大学第5期戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」(学長裁量事業費)の支援を受けて実施されました。
論文情報(研究開発の参考とした文献)
著者:黒木 淳, 市原 勇一, 地多 佑介, 岡田 幸彦
掲載雑誌:会計プログレス,2020年,21号
DOI: https://doi.org/10.34605/jaa.2020.21_80
用語説明
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/07.html
<一般財団法人 総合福祉研究会について>
社会福祉法人会計・簿記並びにガバナンスの知識を普及するため、「社会福祉法人経営実務検定試験」を全国で実施しています。また、多くの社会福祉法人関係諸団体主催のセミナーなどに講師を派遣するとともに、社会福祉法人の経営全般に関するコンサルティングを行っており、関連書籍も多数発刊しています。
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